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俺の中の雨がやまない。
体の熱が退かない。
だからお願い、近づかないで。







雨が降る中、戦場を駆ける一騎の軽装甲車。
武装していない。おそらく補給用の部隊だ。
これならこちらの重機関銃で仕留められる。
地面に据え置いた重機関銃がガキンと音を立て、直後に爆音が鳴り響く。
装甲車の一番弱い上部を狙って、打ち続ける。
ガンッ、ガンッという音とともに装甲車に穴が開いた。
慌てるように退路を確保しようとするが、機関部に被害が出たらしい。動けないでいる。

「逃さねえよ」

一気に部隊で装甲車を取り囲む。中から手を上げてでて来たのは俺とそう変わらない年頃の少年達だった。
こんな少年兵に補給を任せなくてはならないほど相手は消耗している。
それを感じ取って、もう戦が終わりに近いことを感じた。

「死んじまいな」

ヒッと声を上げた少年に、俺はうっすら笑ってやる。恐怖におののく表情に気分が高まる。女を抱いている時以上だ。
アサルトライフルを少年の頭に突きつけ、一撃。
少年は頭を散り散りにして絶命した。脳髄と返り血が俺の服を汚し、顔にかかった。
他の二人は逃げようとしたところを仲間が撃ち殺す。

「あーあ、俺がやろうと思ってたのに」

補給線は叩き潰した。
もうこれで先の主要部隊は篭城も出来まい。
そう思っていたところ、突如後ろから爆風がくる。
敵の装甲車だ。重武装の対戦闘用。
おまけに茂みの中からはガトリング砲で狙い打ってくる。

「チィッ、補給部隊は囮か!」

一度撤退を呼びかけるが、もう既に遅い。完全に背後を取られた。
残る仲間を引き連れて茂みの中の装甲車まで走る。

(良いねえ、面白いぜ・・・)

ぺろりと、先ほどの返り血を舐めた。



安全な地域に至るまで応戦を続け、ふと一息つくと、何かが戻ってくる。
俺の中の、ある自我。
それは常に心の檻に閉じ込めてあるが雨の戦場に出たあと必ずやってくる。

『やめろ』
『もう、殺すな』

そうだ、それは正しい。
だが戦場に出るともう何も止められなくなる。
あそこにはただ殺すか殺されるかという不毛だけが待っているのに。
戦のあとの高揚感と葛藤に身を焦がすとき、体が言いようも無く熱くなる。
わけも無く叫びたくなり、この身を貫いて欲しくなる。

「ランドルフ、」

その時決まって部屋をおとなうのは、親父だった。
長い紅い髪、碧い目をした、俺の未来図。

「親父・・・」
「熱が退かないのか」
「ああ」
「そうか」

親父は無言で俺の体を押し倒す。
親子だろうと兄弟だろうと許される。戦場と言う場に身を置くのならば。
無骨な愛撫に身をゆだねて、貫かれる痛みに悦ぶ。


外の雨音が、殊更強くなった気がした。
まるで俺の喘ぎをかき消すように。







「お嬢とティオすけは?」
「本部の書類整理の手伝いだってさ」
「お前は行かなかったんだ?」
「なんか浮かない顔してるからやめろってさ、はは」

そうか、と言いながら今にもロイドを押し倒しそうな気分がせり上がってくる。
さっきこいつが部屋に来たときもどうしようかと思った。
動揺を隠すために、さっさと話を切り上げた。
雨の日は、いけない。
なのに今二人きりだ。

(ありえねえ・・・)

お嬢もティオすけも空気を読まなすぎだ。
いや逆に据え膳という意味では空気を読んでいるのだが。

(今日の調子でヤってみろ、こいつ壊れちまう)

ため息をつきたい気分で、手元の麻婆豆腐をくるくるとかき混ぜた。
雨の日は戦場の記憶とその昂ぶりで寝付けなくなる。
前は商売女を引っ掛けて、何とか凌いでいたが、こいつを・・・ロイドを恋人として認識するようになってから女に食指が動かなくなった。
別に勃起しないということはないのだが、昂ぶりが収まらなくなった。
ロイドは上の空の俺を気にするように、目の前に手をかざす。

「ランディ、どうしたんだ?」

ぼんやりする俺の様子を心配してくれる優しいロイド。
無垢な顔。きれいな肌。
思わずその手を取った。

「なに?」
「手、きれいだな」

うろたえるかと思っていたが、ロイドは少し嬉しそうに、俺の手をつかみ返す。

「おれもランディの手、好きだな」

意外な返事だった。

「・・・そりゃ光栄」
「優しい手だよ」

ふふ、とロイドは笑った。
優しいわけあるか、今にもお前を襲いそうなんだぜ。
大切にするとか言っておいて、このザマじゃ笑えない。
俺はロイドの手をパッと放し、残っていた食事をさっさと平らげる。
とにかく今日は一日部屋にでもこもっていよう。

「美味かった、ごっそさん」
「あ、ランディもう良いのか?おかわりあるけど」
「夜中に腹が減ったらつまませてもらう」
「夜中まで何するんだ?」

おっと、そうくるとは思わなかった。
苦笑しながら、俺はニヤニヤと笑った。笑えていたはずだ。

「お前がこの間してたこと」

ひそっと耳打ちする。
照れて怒るだろうと思っていたのだが、とんでもない事を言われた。

「なんだ、じゃあ今晩ランディの部屋に行くよ」
「ハァ?!」

なに、なんでそんなちょっと行ってくるみたいなノリなわけ?

「おれも、正直したいって言うか」

ロイドは顔を赤らめもせずに言う。
俺は慌てて目の前で手を振った。

「い、いやちょっとした言葉のあやだ、うそうそ、冗談」
「ランディはしたくないのか?」
「うぐ、そうじゃねえけど・・・その、明日とかじゃ駄目か?」
「今日がいいな・・・」

日付指定まで。嘘だろ。

「この間の夜は結局おれが寝ちゃったじゃないか」

それと、とロイドは言いよどむ。
考えるような顔をして、すっと顔を上げた。

「雨の日は、何かあるのか?」

雨の日の『何か』を言い当てられて俺は少しうなだれる。
俺を、俺の魂を真っ直ぐ捕らえる栗色の瞳。
適わない、と思う。
こいつにだって辛い過去があるはずなのに、何故そう真っ直ぐなんだろう。
言いたくなければ聞かないけど、と付け加えられたが、また俺はこいつに依存してしまう。
きっと引かないだろうと。
俺の何を知ろうと、傍にいてくれる。

「じゃあ・・・今夜、俺の部屋で・・・教えてやるよ・・・」

俺は負ける。

「分かった」

こいつは勝つ。

熱が体の内を貫いていくのが分かった。
暗い情念のような火が、心に灯る。
抱くのか、よりによって、今日。
俺はキッチンに消えて行くロイドを見ながら深くため息をついた。
また迷う。近づいてきて欲しい、けれど駄目だと。
脳内の警鐘はやまず、だが戦場の高揚感にも似た感覚があった。






雨脚は鈍くなるどころか加速する。
部屋にロイドが入ってきてからの俺の心情を表しているようだ。
窓際に立つロイドは、俺に何も聞かず、ただじっと外を眺めている。
窓にばしばし叩きつけてくる雨。雨。雨。
戦場の記憶が蘇る。

「ロイド、今日やっぱり帰ってくれねえか・・・」

心臓がどくんどくんと脈打つ。
今にもベッドになだれ込み、あの腰を押さえつけて抱きたい。
俺の頭の中で繰り返される行為は抱くなんて生易しくないかもしれない。陵辱だ。
俺が膝の上で手を組み祈るような格好をしていると、そこに新しい脈が加わる。
ロイドは椅子に座っている俺を上から抱きしめた。
とくん、とくん、とこいつの鼓動も少しばかり早い。

「そんな顔してるランディ置いていけないよ」

俺の肩口に顔をうずめて、ややくぐもった声が耳に届く。

「どんな顔してる・・・?」
「泣きそうな顔」

頬に指が滑った。
指はまるで俺が泣いていないか確かめるように下まぶたの辺りで止まる。

「雨の日に何があったのか、聞かないのか?」
「聞きたいけど・・・ランディは話すのが辛いんだろう?」

正直さに苦笑する。

「雨の日は、戦場の記憶が蘇ってくるんだ・・・」

ぽつんと、独り言のように声が出た。

「そうか・・・」
「眠れねえし、体が熱い、お前のことも滅茶苦茶にすると思う」

ロイドは一つ、ため息をつく。熱がこもっていた。
その吐息に体が震える。
体が、その心、魂さえ欲しい。

「良いよ・・・、ランディのこと知りたいから」

それが皮切りだった。
もう俺に自我なんて無かったかもしれない。
ロイドをベッドに転がして、乱暴に服を剥ぎ取る。
ズボンを下着ごと引き摺り下ろして、首に噛み付く。

「いっ・・・」

ロイドが声を抑えながらも呻く。
熱い。体が、熱い。
もっと痛がれよ。
声を聞かせろ。

「い、痛・・・あ、ぁ」

次々体に噛み付いて血の滲む跡を残す。
ロイドの下腹部に目をやると、それでもしっかり主張する熱がある。

「痛いのに、イイのか?」
「・・・うん」

素直に頷く。
俺は舌打ちする。

「嫌がれよ。俺のこと、突き放せば良いじゃねえか」
「ランディを知りたいって言ったのはおれだよ、良いから、続けて・・・」

体の昂ぶりが一層増す。
無抵抗なロイドの足を開いて、机の上に置いておいた小瓶を取った。
ぐにゅっと、瓶の口をロイドの蕾に押し当て、中身を注ぎ込む。

「う、ぅ・・・あ」

ロイドは目をつぶらず、俺をしっかり見ている。
交わる視線さえ自分自身の熱に響く。
ロイドは入ってくる液体の冷たさに顔をしかめているようだったが、それでも確かに感じている。前がひくひくと熱を主張し、イきたがっていた。
小瓶を床に放り投げて、内部に指を差し入れる。

「ひぅ・・・っ」

途端、びくりと体がしなる。
初めて指を入れた時は痛がっていたのに、今日はそうでもない。
感情に任せて指を動かすと、簡単にロイドは鳴いた。
ぐちぐちと入り口を広げながら、指を二本に増やす。

「力抜け」

我ながら、手短で気遣いも何もない、冷たい声色だった。
でもロイドは気にしない。
頷いて、俺を見る。

「う・・・ん、あっ、だ、だめ・・・あっ」

体が弛緩したところに奥を突くと、ぶるぶる身を震わせて感じる。
刺激が強すぎるはずなのに、ロイドの体はそれに付いてくる。

(痛いと感じるのか・・・?)

強めに抜き差ししてやると、ロイドも自然と腰を動かし始めた。

「ああっ、あっ、あっ・・・ん!」
「ククッ・・・お前腰、動いてんぞ」

こんな愛撫に感じるなんて

「お前の体、どうかしてるんじゃねえの」
「あ・・ひっ」

どうかしてるのは俺のほうだ。
自己嫌悪と欲望がない交ぜになって胸を上ってくる。
けれど体の昂ぶりがやまない、すぐにでもこいつの中に入りたい。
それをギリギリのところでセーブしながら、最低限のことはしてやりたかった。

「ラ、ランディ・・・あっ・・・も、入れてくれよ」

だがそれをぶち破って、ロイドは俺を求めてくる。
まだ早いだろ・・・そう思ったが口は勝手に喋る。

「俺が欲しいのか?」

ぎらついた目をしていたと思うが、そんなものロイドは一蹴した。

「ふふ、・・・なんかランディ、凶悪な色気が漂ってるな」
「余裕だな・・・」
「・・・ランディのこと知りたいって言った時から、覚悟はあったから」
「なら、望みどおりにしてやる」
「うん・・・」

嫌がれよ。
何で俺を受け入れようとするんだよ。
苛立ちながら俺はロイドを四つんばいにさせて、まだ少しきつい後ろにあてがう。
ロイドの両腕を後ろに回させて、馬の手綱を取るように引っ張った。
そして

「・・・――――っう、あ・・・あああ!!」

一気に貫いた。
そうして間髪入れずに腰をガンガン揺さぶる。
これなら音を上げるか、と言わんばかりに激しくする。

「どうだ?」
「ひっ・・・ぃ、ああっ、そこ、だめっ」
「駄目な割には、吸い付いてきやがるな」
「ああ・・・ん、んっ、くう」

どうやら体の相性が良いらしい。俺のものが奥までいくと、ロイドのイイところを擦っているみたいだった。
ロイドの乱れた吐息と、時折聞こえてくる俺の名前が耳についた。
ロイドはまだ音をあげそうも無い。
握っていた腕を放して、ぐじゅ、と音のする入り口を見る。
俺はひくつくそこに親指を差し込んでさらに広げた。

「く、ひっ?!」
「俺のモノ一本じゃ足りねえだろ?この変態な体じゃ」
「やぁ、あっ・・・んっ」
「気持ち良いのかよ、どうしようもねえな」

前を握りこんでやると、背中がしなる。

「どろどろ・・・後ろだけでイけるんじゃねえの?」

耳の傍でそう言ってやる。
ロイドは快感に捕らわれながらも、こくこくと頷いていた。

「初めてのくせに後ろだけでイくのか?」
「あ・・・はぁっ、だって、気持ちい・・・」
「淫乱」
「んっ・・・ううっ」

ロイドに思う様嘲りを投げつけてやる。
それでもこいつは受け入れる。
腰の動きを早めると、ロイドもそれに付いてくる。
俺たちは一気に高みを目指した。

「あ、ランディッ・・・・――――っあああ!!」

ロイドがイくのを追うように、俺も固く目をつぶって、ロイドの中にぶちまける。

「・・・っく」


その後も、俺たちは貪り続けた。
快楽と混沌の中で、ロイドは何度も俺を好きだとそう零した。
その度に、体の昂ぶりは暗い情念から熱い炎に変わる。
段々と俺自身も気づかぬ間に、ロイドを抱く手つきが優しくなっていった。
それは何も知らないこいつに抱き方を教わっているようで少々癪だった。



 
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