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それは、祈り。
誓願にも似た強い祈りだ。
借りたばかりのアカシア荘の一室に入るなり抱き上げられて、ランディはおれをベッドに降ろした。
整った顔立ちが余裕をなくしておれに近づいてくる。それが結構好きだったりする。
服を一枚ずつ丁寧に脱がされて、ランディも脱いで、お互い熱くなった体で抱き合った。
ランディの手は優しくおれを慰撫するように撫でる。
もう少し乱暴でも良いんだけどな・・・と思いつつ、それは心地良い。
髪をかき回し、キスをしながら、胸に触れる。
くちゅ、くちゅ、と口の間で水音を響かせながらおれ達は溶け合う。
胸に何かが満ちてくる。
「ふっ・・・う」
涙が目の端に溜まってきた。
息苦しいのと胸がいっぱいなのとで涙が止まらない。
ランディはおれの涙を口で吸い上げて舐め取る。
ロイドは泣き虫だな、と言われた。
その通りだが泣きたくて泣いてるわけじゃない。
この涙の意味をランディは知ってるか?
「ランディとする時って、何か胸がいっぱいになって・・・」
ふふ、とランディは笑う。
そしていつものごとく、消えた所有印をもう一度つけなおす。
「俺のもの、なんだよな」
突起を強く吸われて、体が震えた。
ランディは何を言っているんだろう。
「当たり前じゃないか、それに」
わき腹を撫でられてまた震える。顔を少しのけぞらせた。
「ランディだっておれのものだ。違う?」
ランディはそうだな、と言って、ふと手を止めた。
「目に見えねえものって、お前は簡単に信じられんの?」
思いつめたような声を出すから一瞬言葉を失う。
ランディは信じられないのだろうか。
今まで散々おれが証明してきて、それでも信じられない?
おれの知らない時間に作り上げられてきたランディは簡単に人を信用できないようになってしまったんだろうか。
だとしたら、それはすごく悲しい。
信じて、と言うのは簡単だけれど。
でもね、それは今は言わない。
ぬめる舌がおれのモノをくわえる。
細く嬌声を上げて、いやいやをするようにランディの頭を抑えた。
「あっ、あっ・・・」
「可愛い声」
ちゅる、と先走りを舐め取って、そのまますっぽりとおれのモノをくわえこんだ。
口でしごかれて、じくじくと股間に熱が集中して行く。
「はぁっ・・・・ランディ・・・人を信じるのは恐いと思うよ」
ランディは顔を上げる。
息が上がりつつあるおれを見て、意外そうな顔をした。
恐いなんて一言も言われていないけれど、ランディばかり見てきたのだ。
あの言葉の意味は恐れだと分かった。
「目に見えなくても、信じられる絆って数少ないと思う」
「だけどね」
「ランディが今恐がってることを取り払ってあげることは出来ると思うんだ」
思案顔になってからランディは悪い、とこぼした。
「何で謝るの?」
ランディはおれの体をよじ登って、唇にたどり着く。
軽くキスしてから口を開いた。
「またお前のこと疑っちまった」
「ふふ、ランディは何がそんなに恐いの?」
ランディはおれを抱きしめて言う。
「お前がこの先傍にいるのか見えなくなるんだ。道が、見えない」
やっぱりそうか、と思う。
以前にもそんな事を言っていた。
もしかしたらこの先特務支援課が無くなるかもしれない。
なかなか会えないほど遠くに行くかもしれない。
そうだとしてもおれは。
静かに瞑目する。
「ねえランディ、砂漠って見たことある?」
「ああ、あるけど」
猟兵時代に何度も通った、と言う。
そのときは見ている余裕なんかなかっただろうな。
「砂漠の生き物はさ、雨が降ってくるのをひたすら待つんだ。女神を信じて」
ランディは疑問を浮かべる。
おれが何を言おうとしているか分からないみたいだった。
砂漠の生き物は裏切られることなど考えていない。
必ず女神が雨を降らすと信じている。
おれも、それと同じ。
「おれは裏切らない。どれだけ疑われても信じてもらえるまで待ってるよ」
睦みあう時、そこにはランディとおれしかいない。
ある一瞬だけは恐らくランディは満たされている。おれを抱くことで、俺の時間を支配することで信じようと思うだろう。
でも上手くは言えないけれど、その一瞬と言うのは永遠のものだ。
一瞬を永遠に凝結する思いが抱かれる時おれの中に弾けるんだ。
「傍にいる。離れていても、おれはランディの傍にいるから」
そうか、と呟くように言った。
信じる、というただ一点のみで恋人達は繋がり合う。
大丈夫、目に見えなくてもおれ達の道は確かに続いている。
これまで歩んできた絆はいつでも胸の内にある。
おれはそう信じている。
信じられる。
「ランディが思うほど、おれ達の間の絆は脆くないよ」
そう言って抱きしめ返すと、香水の香りがふんわり漂う。
ランディがよく付けている沈丁花の香り。東方の花の香りだ。
ランディは何を考えていたのか分からないけれど、ふっと笑った。
「不思議だな、お前の言葉一つで心が軽くなる」
ははっと笑って、おれを見る。さっきよりずっと生気が満ちている。
「病める時も・・・」
「うん?」
「死ぬ時も、俺はお前のことを愛してるだろうよ」
「ランディ、それってプロポーズ?」
「そうだな」
「・・・ふふ、」
おれが嬉しくなって笑うと、ランディは困ったように髪をかき上げた。
「俺は、俺だけが愛してる自信はあるんだ。でも、お前の気持ちは疑っちまう」
知っている。複雑な、でも簡単なその心を。
「待ってるよ」
「ありがと、な・・・」
口づける。
そうしてランディに深く愛されて悦びながら、おれは思う。
これまでも、これからも、この人から離れることなんて出来ない。
砂漠の生き物のように、待っている。
ランディの中に慈雨が降ることを。
おれの愛情が届くようにと。
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