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折角の非番だし、今日はカジノでもと思って部屋を出たところにロイドとばったり出くわした。
ロイドは、あ、おはようなんて言いながら、俺の顔を見るなり首元が隠れているか確認したみたいだった。
昨日の跡を今朝に持ち込むのは恥ずかしいらしい。

「おはようさん、今日もご苦労様だな」

俺はニヤニヤ笑っていたと思う。
ロイドがそういう照れを見せるのが嬉しい。
秘密の関係の快感ってやつ?まあもう皆にバレてそうだけどな。
へらへら笑っているとロイドはあれ、言わなかったけ?と俺に聞き返してきた。

「おれも今日非番だけど」

急速反転。俺は今日のカジノを手放すことにした。
こいつと一日過ごしたい。
俺が何か用事があるのかと問うと、何もないという返事。
女神のお導きだって。これ絶対。
ロイドはそんなこと考えてもいない様子なので1階の気配が動かないことを確認して、ぎゅうっとロイドを抱きしめた。

「いいことしようぜ」

頭をはたかれた。
朝からなに盛ってるんだよと言われる。その顔は照れているのか耳まで赤い。
俺はひよこのようなほわほわした髪に鼻を寄せる。
まだ昨日のシャンプーの香りが残っている。それはロイドの香りと交じり合ってすごく落ち着く。
腕の中でもがく体をいったん放して、俺はロイドの肩に手を置いた。

「でもちょっと嬉しいだろ?」

今日の支援要請次第ではお嬢とティオすけは丸一日いないことになる。
これを逃す手はない。
だが、ロイドはにべもなかった。

「おれ、昼間っからそういうことする気はないからな」

いつもなら気持ちいいことが実は大好きなこいつのことだから、流されるだろうと思っていたのに。俺は少し口をぽかんと開ける。

「それにいつ緊急の要請が入るか分からないだろ」

いや、ごもっともなんですけどね。
でもいいことは別にしても俺と二人きりの時間を楽しみにしてくれたって良いじゃねえか。
俺は恨みがましい視線を投げるが無視された。
しおれたようになって先に降りてるからというロイドの背中を見送った。
ぶつぶつ文句を口の先で言いながら後を追うと階段の途中でロイドは急に立ち止まる。

「ただ・・・」

ん、なんだ?

「一緒に部屋でだらだらするくらいなら・・・したいな」

上目遣いに少し朱に染まった頬と言うのは女の子の特権だと思っていたのだが、例外は何事にも存在するらしい。
続けてロイドは言う。

「ランディと一緒のオフが嬉しくないわけじゃないよ。さっきはごめん」

ぱん、と両手を合わせて上目遣いのままロイドは謝るポーズをとる。その表情は微笑んでいた。
やっぱこいつの破壊力ってこういうところなんだろうな。
簡単に人を喜ばせちまうって言うか。
俺は嬉しくなってスキップでも踏み出しそうな気分だった。
はぁとため息をついて頭をぼりぼり掻く。
ロイドの頭をくしゃくしゃにして気にしてねえよと言ってやった。
それは自分でも分かりやすい照れ隠し。
ロイドはふふ、と笑った。

「なに笑ってんだよ」
「いや、別に」

笑みを濃くして、ロイドは今日の朝食は何かなと言う。
匂いからしてトーストとハムエッグのサラダだ。
俺はロイドの手をとる。もう数段で1階だ。

「一緒に昼寝でもするか」

ロイドは少し困ったような、でもまんざらでもない顔でこくりとうなづく。

お嬢の声が間近に聞こえる。
ティオすけが皿を運んでいる。

俺たちはその音を背景に、そっと口付けた。

きっと今日の昼に待っている心地よいまどろみを想像して。

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