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「最近ロイドって雰囲気変わったわね」
「そうか?」

お嬢は東方人街の土産を口に含んだままで、彼女にしては珍しく行儀の悪い聞き方だと思った。
俺が昨日買ってきた土産好評みたいだな、もうラス一だ。
それをつまもうかつまむまいか、悩んでいるお嬢にすすめると、女の子はカロリーを気にするのよと言われた。
そう言いつつ、なんやかんやでラスト一個はお嬢の腹に収まる。
そうしてお嬢は今晩の予定の話をし始めた。
今日は実家に戻って愛犬に会いに行くだとか、実家のメイドがドジっ子だから様子を見に行きたいだとか。実家がらみが多い。

「今晩ランディはどこか行くの?」
「カジノ、裏通りの女の子と行く約束してるからな」

お嬢は俺の顔をじーっと見てからやっぱり勘違い?なんて言う。
何の話だ。
続けてお嬢が喋り出す。

「話、戻すけど、なんか最近のロイドって、目がキラキラしてるって言うか、その、適当な言葉が見当たらないんだけど、綺麗になったわよね」

俺は綺麗という言葉を転がす。そうかもな。まあ俺は出会った当初から可愛いと思ってたけどな。
でもお嬢は綺麗という単語も妥当でないのか、綺麗って言うか・・・と独り言を
呟く。

「色っぽくなったって事か?」

話し半分にホットショットを読んでいた。綺麗で色っぽいおねえちゃんを見てい
たので、あてずっぽうにそう言った。と、お嬢の目の色が変わる。

「そう!それ!」

おお、凄まじい食い付きだな。
そんなテーブルから身を乗り出さなくても。
てかお嬢顔近いんだけど。

「やっぱりもしかしなくてもランディの影響なんじゃない!?」
「は、何、俺?」
「ロイドに一体何したのよ?」
「だーから、何の話だ」
「あれ、間違いなく恋よ!」

話が噛み合わない。
てか、出たよ、女は好きだね色恋話が。しかも他人の色恋にはとにかく興味津々
だ。
俺はロイドと付き合ってるけど隠してる。
何でかって、バレたら俺が締め上げられる気がするからだ。
だというのに、女ってやつは勘が鋭い。観察力がすごい。
ロイドのやつ、確かに最近色気が出て来ている。うなじあたりから出ている気がする。無駄に色気を振り撒いてるみたいだけど、でもなんでその原因が俺になってるんだ?

「誰か女の子紹介したの?」
「期待を裏切るようだが俺は野郎に女の子紹介したりしねえぞ」
「そう、じゃあセシルさんの言う通りなのね」

意外な人物の登場に俺は首をかしげる。

「ずばり、ロイドの恋の相手はランディ君ね!・・・ってセシルさんが」

俺は目眩がしそうだった。どこからどういう経由でそんな話になる?
どうも話を聞くには過日ロイドがセシルさんのところに行ったらしい。その時例のごとくセシルさんに付き合ってる子はいないのと問われたところ顔を赤らめて否定したと言う。
セシルさん曰く、言い出せない相手に違いないと、相手を異性ではなく同性に絞ったらしい(その思考回路もまた意味不明だが)。
そこで俺の名前が出たところ。

「ロイドったら黙ってしまったそうよ。これはもう疑いようが無いじゃない?でもあなたは女の子と遊ぶなんて相変わらずだし、違うのかなあって」

お嬢は近づけていた顔を離して、椅子に座りなおす。そして頬杖を付いた。

「へー。まあ、答えづらかったんじゃねえの。俺は間違っても野郎と付き合うなんて願い下げだね」

俺は鼻でもほじりたい気分でそう応えた。
何で女ってのは人の恋路に首を突っ込みたがるのか。
まあこれ以上の追求は無いだろうし、バレていて生暖かく見守られるよりいっそバレてるならバレてると分かっていた方が都合がいいと思う。
そう思っていると、後ろでドサっと音がした。
見るとロイドが俺を直視しながら買い物袋を取り落としたようだった。
俺が、どうしたんだ?と声をかけても反応が無い。
お嬢が慌てて駆け寄って食品の無事を確認すると同時に、ロイドに声をかける。

「ロイド?どうしたの?」
「あ、ああ・・・何でもない、ごめんちょっと考え事してて」
「そう?具合悪いのなら部屋で休んだら?」
「そうしようかな・・・。ごめんエリィ、これ、冷蔵庫に入れてくれるかな」

食品の袋を受け取ってお嬢はうなづく。
俺は直感的に様子がおかしい事が気になったので、ロイドが2階に行くのに合わせて2階へ行こうとした。
するとお嬢がそれを遮る。

「ロイドの様子見に行くの?」
「ん、ああ、」
「具合が悪いみたいだからやめておいたら?」
「いや、」
「やけに心配するのね」
「まあそりゃ、」

恋人だし。

「身内同然だし」
「お兄さんとしては弟分の具合が気になる、とか?」
「あいつが調子が悪いと皆の士気が下がるだろ」

お嬢はふふと笑って行ってらっしゃいなと言った。
何だよ、その笑みは。何か含んでやがる。
バレてるかな、まあ言わなきゃ確信にはならねえし、気にしても仕方ない。
俺は2階に上がってロイドの部屋のドアをノックする。
反応が無いのでドアをそろっと開けると、部屋はがらんとして誰もいなかった。

「あれ?」

確かに2階に行ったように見えたんだけど。
俺の部屋にいるとか?
念のため自分の部屋も開けてみたが当然誰もいなかった。
3階のティオの部屋でもないだろうし、屋上だろうか。
てくてく上がっていって様子を見たがそれでもいない。
ふと西通り方面を見るとロイドが見えた。

「あ、いた」

なんだって外に?
道順的に中央広場に向かっている。
どうして裏口から出て行ったのだろう。
ロイドの様子はえらく肩を落としている風だった。
やっぱり何かあったんだろう。
俺は慌てて中央広場に向かう事にした。


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