忍者ブログ
123

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

「で・・・?聞かせてもらおうか」

ランディは、冷静な声だが怒っているみたいだった。
当たり前だよな。
おれの勝手な思い込みであんなことして。
ランディのでかい手がおれの肌をまさぐる。
丁寧に跡がないかどうかなんかを検分しているらしい。
上だけだったと主張しても聞いてもらえず、身包みはがされて全身くまなく見られる。
首筋に付けられた跡は速攻で見つかったので、すぐさま上塗りされた。

「それよりランディ、よくおれの居場所分かったな」
「ん、まあカンだ」

どうも西通りを歩いているおれを見つけて慌てておれを追ってきたらしい。
歓楽街にいるなんて良く分かったものだ。おれの行きそうな場所でもないのに。
周辺で人に話を聞いたところおれらしい人物が緑色の髪の少年と一緒にミレニアムに入ったと聞いたらしい。
そこで連れがワジだと察して青くなったとか。
警察手帳を見せて乗り込んできたと言うのだから職権乱用も甚だしい。

おれは中央広場から裏通りを抜けてワジに出会った話をする。
そこでそのままミレニアムに入ったのだと言った。
そうするとランディは重要なのはそこじゃねえだろ、と言う。
まあ確かに重要なのは、何で事ここに至ったのかだろう。

「一応言っておくけど、ランディも悪いんだからな」

責任転嫁かな、と思ったけれど言ってしまう。
そもそも不安にさせなければこんなことにだって。
いや、違うかな。
それは屁理屈だな。
ランディはそれを聞いておれの顔を見る。
肌をまさぐるのをやめて、おれの横に寝そべった。

「ってゆーと、何だ?」
「やっぱり訂正。ランディは悪くないかも・・・」
「かもって何だよ、はっきりしねえな。事の顛末聞かせろ」
「そもそもを話すと恥ずかしいんだよ」
「良いから、聞かせろ」

有無を言わせない碧い目がおれを刺す。
もごもご口の中で言葉を出すか出すまいか迷っていると、ランディは焦れたようにおれの首筋に噛み付いてきた。

「いっ・・・」
「早く言え、でないと襲うぞ」

下腹部の茂みに手を伸ばされて、慌ててそれを止める。
息を吸い込んだ。

「・・・ランディ、おれの事好きって言ったことある?」
「あるだろ、何度も」
「ベッド以外で聞いてない」
「え」

ランディはしまったと言うような顔をする。

「それに、今日、間違っても男と付き合うなんてないって」
「あー・・・。なに、お前が沈んでた原因ってそれ?」

ランディはちょっと困ったような顔で頬を掻いた。
なんて事ない理由と言われたような気がして、おれはむっとする。

「十分、大事」
「意外と・・・、お前不安になりやすいんだな」

ランディ曰く、もう付き合って日も経つし、俺の気持ちやら何やらは分かってるだろうと思ってたとのこと。
自分でも伝えた気でいたし、と言う。

「まあ、そりゃ何て言うか犯人のない事件みたいなもんだな」
「誰も悪くないってこと?」
「そう。逆に皆悪いとも言えるけどな。でも言い出したらきりがねえし」
「そう・・・」

そう言われると、もう何も責められなくなる。
ランディはワジとのことも責めるつもりはないらしいし。

「だけど、・・・俺が悪かった」
「え?」
「好きだぜ」
「あ、・・・え」
「あと、今日言った言葉はお嬢達への目くらましだ」
「そう・・・」

唐突な告白にろくに返事も出来なかった。ただ顔を赤くする。
ワジに抱かれそうになっていた時の剣幕を見ればランディの気持ちなんてすぐ分かった。
おれを追いかけてわざわざ来てくれた事も。
それだというのに、おれはやってはいけない事をしてしまった。

「おれ、最低なんだ」
「ん、何がだ」
「ワジに抱かれたら、ランディはどんな反応するかなって、思ってた」
「まあ・・・ご覧の通りだったけど、な」

確かにランディの勢いは凄かった。
裏通りのチンピラと言っても過言ではない。
でもそれならなんで。

「おれのこと、責めないの」
「責められたいのか」

どうなんだろう。責められたら少し気が楽になるというのはあるかもしれない。
それに責められればおれだって言いたい事が言える。自分だけが罪悪感にさいなまれずに済む気がする。
おれを好きだという割にはあまりにあっさりとし過ぎている気がするし。

「正直はらわたが煮えくり返ってる。ワジを殴って良いんなら、そうしてたろうし、お前のことだってそんなに信頼無かったかなって失望したってのもある」
「そうだろ・・・なら何でそんなに冷静なんだよ・・・」
「俺がお前を責めないのは、その方がお前にとって痛いだろうと思うからだ。大体、起こっちまったもんは仕方ねえし、仮にワジにあのままされてたからって俺の気持ちは変わらないだろうし。ワジの方が良いって言われたってそのまま身を引けるほどお前に執着してないわけでもない」

ランディはおれの頬を包んで、口付ける。
舌を絡めると、ああそうだこの感触が欲しかったと思う。
つうと伸びて行く銀糸を眺めていると、ぎゅうっと抱きしめられた。
それに、と耳元でランディが囁く。

「一方通行でも良いんだ、俺はお前が好きなんだ」

おれはそれを聞いて、おれと同じなんだ、と思う。
好きな人の前では必死で、みっともなくもなって、でもそれが酷く愛しい。

「不思議だな、恋愛って一方通行なものかな」
「一方通行が同じ方向を向くと恋人になるんだろ」
「そう、か」
「で、お前さんの答えは?」

そんなの、決まっている。

「好きだよ。ランディの気持ちが素直に聞けなくて怖くなるくらい」
「今度からは素直にぶつかってきてくれよ、頼むから」

あんな事二度とごめんだ、とランディは言った。

「分かったよ、ごめんね」
「分かればよろしい」

ふふ、とおれが笑うと、ランディは何かストッパーが外れたみたいにおれの体に手を伸ばしてくる。

「時間も無い事だし、そろそろ、な?」
「するの・・・?今日は夜出かけるんじゃなかった?」
「おれがふらふらしてるのなんて、しょっちゅうだ。気にされねえよ」
「そう・・・?」

ランディはそう言っておれの胸に口付けてくる。
求めていた感触に身を委ねて、暮れなずむ空の色に目をやって、おれはゆっくり目を閉じた。



毎日君に恋してる。
だからこれからは、馬鹿みたいに毎日愛し合おう。

PR
  top  
忍者ブログ [PR]