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お前がその気なら俺はいつでも、そうは言ったがあくまであの時は真実をぼかした冗談のつもりだった。
それが今どうだろう。
俺の冗談を真実と見抜いたこいつは俺に好きだと言ってきた。
押し倒されても抵抗しない俺の動きを肯定と取って、抱いた。
それがもう3度続いている。



イく瞬間、快感は激しい耳鳴りをもたらす。
快楽が波のようにどおっと押し寄せて、むせび泣きは徐々に増し、ロイドの背中に立てた爪が食い込んでいく。
俺は自分でも信じられないことに嬉し涙を流しながらイッた。
ロイドに抱かれる時、嬉しいと思うのは今回が初めてではない。
最初は言葉にならない感情だった。抱かれるたび感情が膨らんで行くので、それを何かとして表現しなくては心に整理が付かなくなった。
だが、俺が泣くなんておかしいだろ?そう思って笑って問うと
本人には嬉しいなんて言ってないが、こいつは無意識に言った。

「だって嬉しいんじゃないのか?」

ランディはイくとき泣きながら少し笑って俺の事を見るだろう?
好きだって言われているみたいで、嬉しい。
ロイドはそう言った。
その観察力は、さすが捜査官。

ロイドはイッた後も俺の中に入ったままいつもの冷静さを欠いて、らしくもなく熱くなっている。
俺の頭を掻き抱いて熱のこもった声で好きだ、と繰り返して言う。
その様子が可愛いと思う。愛しいと思う。
ありえない感情だった。
戦場ではただ火照る熱をもてあまして貫かれる痛みにさえ悦びを見出して、けれど心は冷え切っていたのだから。
ロイドはやがて俺からずるりと出て行くと、体は大丈夫?と問いながら満足気な顔を見せて頬にキスした。
何で口じゃねえんだよ。
ロイドの頭を捉まえて唇を舐った。
察したのか、深く口付けてくる。
くちくち音を立てて舌が絡む。
ロイドの舌使いは当然ながら上手くない。
俺が唾液を送り込んでも上手く飲みきれずにこぼすし、歯がぶつかることもしょっちゅうだ。
だがそんな初々しいのがたまらない、と思う。
抱かれているのは俺のはずだが、まるで抱いているような錯覚を起こす。
年かさの売春婦にでもなったような気分だ。
ロイドは常に一生懸命に俺に愛撫を施す。その動きの一つ一つは拙いが慈悲に満ちている。
俺がいた世界の中でこんな眩い存在を俺は知らない。
人を抱くことに思いやりを持たれたり、戦の後に火照る以外の体の熱なんか。

俺は煙たがられるのを承知で煙草に火をつけて、紫煙を吐き出す。

「今日もお盛んだったな」

抜かずに3度もやるんだから若いよなー。
俺も構わずそれに付き合うだけの体力は当然あるわけだが。
笑ってロイドの頭をくしゃくしゃにすると、ロイドは心地良さそうにそれを受け入れる。

「ランディって感じやすいから、無茶させてないか心配なんだけど」

獣じみた嬌声を上げる俺を知ってから、抱いた後によく言われる台詞。
俺の過去を振り返れば、上等な抱かれ方してると思うけどな。

「してる時のランディって、その、色っぽいからおれも夢中になっちゃうし」

ロイドは顔を赤くしてそう言う。可愛いねえ。
ああ、そういや猟兵時代にもそんなこと言われたな。
こいつには言わないけど。
猟兵時代は色んな奴の相手をした。
俺に最初熱の収め方を教えてくれた男がいた。
そいつが死んでからと言うもの、俺は今日はこいつ、明日はこいつと相手を変えた。我ながらただれた生活だったと思うが、幼い頃に刷り込まれた抱かれる感覚は戦の昂ぶった熱を抑えるには打ってつけで、抱かれることに違和感などなかった。
ロイドは寝煙草をする俺の煙草を取って、危ないからと自分の口に咥えた。
吸い込むとむせるだとかでふかすだけだが、俺といることですっかり悪影響されている。

「ランディは、その、おれが初めてじゃないんだよな」

ロイドは煙草を灰皿に押し付けて尋ねてくる。
その言葉にチリ、と胸が焼ける。確かにただれてたよ。
無邪気な言葉が胸を刺した。
新しく点けた煙草の煙を苛立ちまぎれに顔にかけるとロイドはえほえほむせながら何するんだと言う。

「くだらねーこと聞くな」
「え、ごめん・・・」
「今はお前だけだ」
「これからは?」

これから?
考えたこともない。
抱かれると言う行為自体刹那的なものだと思っていた。
ずっと、これから先こいつに抱かれる?
こいつはずっと俺といることを望むんだろうか。
変なやつ。

「・・・さあな」

笑わずに言うと、ロイドはしゅんと子犬のようにうなだれる。
俺はそうなる事を確信していた。可愛い姿だ。

「まあ、しばらくはお前といるさ。その間に俺をモノにしろよ」

煙草を吸いながら目を伏せた。
駆け引きというやつを知らないロイド。
嘘と騙しあいと戦場の中にいた俺。
正直俺には不釣合いな真っ当さを持っているのだから、火遊びにしておけば良いのに、と思う。
こいつは俺にとって真っ直ぐすぎる。
遊び相手には出来ない。
かと言ってずっと傍にいてやれる自信もない。

「ランディはおれのこと好きじゃないのか?」
「それは俺よりお前さんのほうがよく知ってるんじゃねえの」
「それって、好きって事?」

肝心な言葉は簡単に口には出来ない。
愛しいし可愛いと思う。
ただ、好きなのかどうか自分の心に決着は付かない。
だいいち傍にいてやれる自信もないのにぬか喜びさせたくはなかった。
でも

「お前の頑張り次第でお兄さんもメロメロになるかもな」

真実に嘘はつけない。
俺は、ほんの一瞬、どこまでも続く道の可能性を考えてしまった。

この眩い存在なら、俺の過去を全て照らし出して埋葬してくれるのではないか、何もかも塗り替えてくれるのではないだろうかと思ってしまった。

ベッドの端に座っていたロイドが立ち上がりかけたのを見て思わず抱きしめる。
ロイドはしっかりと俺を抱き返してどうしたんだ?と問う。
傍にいて欲しい。
こいつに依存してしまいそうになる心を押さえつけ、その問いには答えなかった。
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