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雨が、ひたすらにおれ達を打った。

こんなことは初めてだった。
打ち付ける肉の音、滴る体液、時折漏れてくるランディの喘ぎとひっきりなしに漏れる自分の喘ぎが交じり合ってそこだけ温度が高い気がする。
冷えていくのに体の芯は熱を内包しておかしくなりそうだった。



その日の支援要請を終えて帰路に着こうというところで、雨が降り出した。
天気予報では一日晴れと言う事だったのに梅雨の時期の予報は当てにならない。
アルモリカ古道の脇の木の下で雨をしのぎながらランディと空を見上げる。
雨はいっかな止む気配がない。
斜めに打ち付けてくる雨が体を濡らし、体温を奪っていく。
梅雨とは言え寒くなってくる。
息を漏らすとほのかに白くなったそれに溜め息が出た。
隣に立っているランディは、何を思ったのかおれの前に立って体ごとこちらを向いた。

「寒いだろ」
「このくらいなら、別に」
「強がるなよ、唇青くなってるぜ」

そういうランディは血色の良い顔をしている。
このくらい何でもないかのようだ。

「そういう風に気を使うのは女の子の前だけにすれば良いだろ」

自分でも随分棘のある言い方だったと思う。
何でだったのだろう。
たぶん、ランディが誰に対してもこうだから、と思ってしまったからかもしれない。
おれだけが特別こういう扱いを受けているわけではないのだ、と言うのが気に入らなくてそういう言葉が出た。

「何だよ、冷てぇな。冷えるのは体だけで十分だろ」
「あ、その、ごめん・・・」
「ま、男相手にこんな気遣いいらねえか」

ランディはおれにも矜持があるとでも思ったのか、軽い口調でそう言うとおれの隣にまた戻る。
嘘だ。本当は嬉しかった。そう言うタイミングも失ってただ黙るしかなかった。
彼がいなくなった事で風と雨がもろに顔や体に吹き付けてきた。
顔の水分を拭うが、それも間に合わないほど雨は叩きつけてくる。
髪は雨でぐしょぐしょになって、ぺたりと頬に張り付いている。
ランディを横目で見やるとそれは彼も同じようで、水滴の滴る髪をかき上げている。
いつもきちんとセットされている髪が崩れて頬や首筋に張り付いていた。
知らず知らずその首筋に目を奪われる。白い咽喉元を見ながら咽喉が鳴った。
自分からつけた跡がわずかに覗いていたからだ。
おれは慌てて目をそらす。
こんな状況で何を考えているのだろう。
元々、所有印なんて自分から付ける方ではなかったのに、この間睦んだ時に何故か付けてしまった。
ランディはなんだよ、珍しいななんてそれを嬉しそうに受け取っていたが。
そう言えばその時も叩きつけるような雨だった。
違いがあるとすればその時は屋内で、今は屋外と言う事だけだ。

「ロイド」

急に名前を呼ばれて、反応できなかった。

「な、なに?」

慌てて返事をすると、ランディはおれを労わるように見ていた。
ランディは大概している時おれを労わるように見る。
視線がそれと同じで、ぶるっと身を震わせる。
所有印を付けた事を思い出してしまう。そんな目で見ないで欲しい。

「大丈夫か?」

頬に濡れた手が触れる。
顔の水分を拭うように何度も撫でられて、それだけで身が余計に震える。
あの雨の日の情事を思い出してしまう。
ランディを独占しようとしたあの一瞬を思い出してしまう。
違う、あれはいつもの自分じゃなかった。

「あ、の・・・」

おれの狼狽など知らない風で、ランディはおれの腕を掴んだ。手首を親指の腹で撫でる。

「かじかんでるぞ」

確かにおれは腕が震えていた。寒さと、ランディに今触れられる緊張だった。
ろくな返事が出来ず、ろれつも回らなくなっていると思われたのか、ランディはおれの体を自分のジャケットの中に無理やり引き込んでしまう。
そして木の根元に座り込んで、ランディは雨に背を向け、おれとぴったり抱き合う。
布越しの体温は徐々におれの冷えた体を温める。
遮られた風雨はランディの背中に容赦なく降り注ぐ。
ランディの胸に顔を当てた。ランディの心音が耳にうるさい。いや、これは自分の鼓動か。
この鼓動が伝わっているかもしれないと思うと気恥ずかしくて、顔を上げると目線が自然とランディの首筋にいく。
かあっと頭に血が上った気がした。
なんだってこんな場面であの日が思い出されるんだろう。
おれは無意識にランディの背中に腕を回していた。
独占欲で満たされたあの日を思い出して。
ジャケットの内側から忍ばせた腕を払うでもなく、ランディは余計におれの事を抱きしめてくる。

「何でかな、」

ランディはふと呟く。

「雨の中のお前ってさらわれそうで、見てられなかった」

俺の中に閉じ込めておきたくなる。

ランディはおれの肩口に顔を埋めて囁く。
そう言われて、余計に顔に熱が上る。
耳元の低音に身を竦めた。

「ランディのそれって独占欲なのか?」
「さあ?」

疑問を浮かべているようで、真実は知っている。そんな感じだった。
濡れた髪や唇に口付けが降ってくる。
ランディの唇も雨で濡れて唇が触れ合うたび微かな水音がする。
うっとりしながらそれに身を任せていると、ランディは何か迷った顔をしておれに聞いてくる。

「これ、お前初めて付けたよな」

首筋を露にして、ランディは跡を見せる。
見ていたことに気づかれていただろうか。

「何か、あった?」
「・・・分からないんだ」
「なにが?」

ランディはあくまで優しく聞いてくる。

「独占欲が自分でも信じられないくらい湧き上がってくる」
「はは、嬉しいねえ」
「違う、その、そんな自分が嫌なんだ・・・でもランディは誰にでも優しいし・・・だから」
「そんなことねえぞ」

言葉を続ける前に間髪入れずに否定されて、鼻をきゅっとつままれる。

「女の子に優しいのは男としての礼儀だし、それ以上じゃねえよ。お前と恋人になってから女の子との間に一線は引いてるし」
「でも遊びに行くのはやめないだろ」

ああ、こんな自分、嫌だ。

「遊びに行く姿を見るたびに、おれの知らないランディがいるのが嫌になる」
「じゃあ、今度から一緒に行くか?そんで俺の恋人ですって紹介しようか?」
「い、いやそれは・・・」
「そこで躊躇する程度なら、お前の気持ちも大した事無いのな」
「なっ・・・!」

そんなこと言われるとは思っていなかった。
おれは自分でも珍しく感情的になる。

「だって普通の関係じゃないだろ!」
「普通って何だよ、そんな枠組みの中でしかお前は俺のこと見てないのか」
「そうじゃないけど・・・」
「そうだろ」

普通の関係じゃないと言われてランディは怒っている。
そんな簡単に人に紹介できる間柄ならこんなにも悩まないのに、ランディは何だってそんなに超然としていられるのか、おれにとってはそっちの方が不思議だ。
突然、ランディは俺の服のジッパーに手を伸ばした。

「どうせ人も来ねえだろ、思い知れよ」
「ランディ・・・?」

ランディはおれを立たせて林の奥に向かって背を押した。




林の中に無理に連れて行かれて適当な木に体を押しやられた。

「いや・・・こんなところで・・・っ」

服の裾を捲り上げられ、先日つけられた跡も乾かないうちに跡を残される。
雨が肌を打ち、寒いのに中心は熱を持つ。
服の上から熱をまさぐられ攻められる。
濡れた唇の狭間から淫猥な水音が響く。
いつもより少し乱暴なそれに酷く感じる。
ランディの独占欲にまみれながら、悦んでいる。
こんな自分は自分じゃない。

「愛し合うときに場所も何も関係ねえだろ、特にお前みたいな淫乱には」
「酷い事、言うね・・・」
「思い知れって言ったろ。お前は俺の独占欲を欲しがって発情してんだよ」

ランディはおれに合わせるようにジャケットとベストを脱ぎ捨てる。
雨に打たれてシャツはすぐに透けて、筋肉の隆起が見える。
しなやかで、分厚いそれに抱かれるのだと思うと身震いする。
たまらず、おれはランディの体を求めた。
震えながら胸に手を伸ばす。
ランディは満足気にその手を取った。

「俺は好きだぜ、そうやって発情してるお前見るの」

この間俺に跡を付けたときも、発情した目をしてたな、と言う。

「んっ・・・や・・・」

胸の突起を指で摘まれて背がしなる。
背筋を撫で上げられ目を眇めながら声が漏れた。
ランディは雨に濡れた髪をかき上げておれのズボンのベルトをはずす。
下着ごとずらして熱を取り出して有様をしげしげ眺める。

「いつもより感じてるんじゃねえの」

おれのものはひくひくと震えて、先走りをこぼしていた。
嬉しいんだ。どうしようもなく。
こうして場所を選ばずに抱かれる事に興奮してしまう。
誰かにはしないであろう事をされる事に体が悦ぶ。
ランディはおれのものを口に含むと、口中で扱き始める。
裏筋をたどり、先端との境目を強く扱かれ吸い上げられた。

「あっ・・・そこ・・・はっ」
「ここが良いんだろ?」
「ふ・・・ぅ」

ランディの口の中でおれのものはびくびくと脈打つ。
それを楽しむように巧みに動かされる舌の感触に意識が集中してどんどん背筋から変な感触が沸きあがってくる。
寒いはずなのに脇や膝の裏が汗をかき始める。
ランディは箸休めでもするように、時折先端の柔らかい部分にぬたぬたと舌を這わせていた。
それに焦れて腰を揺らすと尻を叩かれる。
我慢しろ、そう言われていた。
それでももう立っているのが限界だ。太ももからふくらはぎにかけてがくがくと震えている。
崩れ落ちそうになるのを何とかランディの肩に手を置いてやり過ごしている。

「はぁ・・・お願い・・・もう」
「おねだり出来たら、出してやる」
「・・・・っ」

もう十分ねだっていると思うのに。
おれが逡巡している間にも、ランディの口はのんびりと熱を吸い上げる。
感じる部分を避けて、でも時々そこを掠めて、イかないぎりぎりのラインを攻めてくる。
おれは自分でも知らないうちに唾液がこぼれ始めているのに気づいた。
苦しい。

「い、イかせて・・・」
「了解」

ランディは思いのほかあっさりと了承するとおれを木の幹に向けて尻を突き出せ、と言った。

「な、」
「イかせて欲しいんだろ?」
「ち、違、そうじゃなくて」
「何だよ、こういう意味じゃねえの?」

ランディはにやにや笑いながら、おれのズボンをさらに下げる。
尻があらわになって、風が冷たく感じた。

「言っておくけどお前だけ気持ち良くしようとか思ってねえから」

一緒に善くなるのがセックスだろ?くすくす耳元で囁かれた。
ランディは尻の感触を確かめるようにそこを撫でて、太ももの付け根辺りをさする。
そして腰に腕を絡めてぐいっと引っ張られた。
おれは木の幹に手を当てて、体勢を維持する。
立ったまま尻だけを突き出すような格好を取らされて、おれは思わず抗議の声を上げた。

「やだ、こんな格好・・・っ」

おれはそう主張するが、ランディは構わずにおれの熱を握りこんで軽く扱く。
そうしておれの後ろに指をあてがった。唾液で濡らされた指が雨に打たれて濡れた蕾を滑る。
雨脚は先程よりずっと強くなっていて、もう互いにぐしょぐしょだった。
雨で冷えた指が、一本ナカに入り込んでくる。
温度差に身がびくりと震えた。

「あ・・・っああっ・・・」

おれは目を瞑る。しかし目を瞑るとそこにばかり意識が集中して、ランディの指が殊更ゆっくり入ってくる感触に涙が出てくる。
ランディの指は中でイイところを探しながら、蠢く。
入り口を広げるような動きに感じる。
一本だけでは切なくて早くもう一本をねだるように腰を揺らすと、あっさり二本目が入ってくる。
二本の指が中でばらばらの動きをする。ぬちぬちと雨の音と入り混じりながら聞こえてくる卑猥な音。それを歯を食いしばってこらえる。

「我慢するなよ、声出せ」
「だ・・・って、人が通るかも・・・」
「こんな雨の中でヤってる奴がいるなんて誰も思わねえよ」
「あっ・・・あっ・・・」

ぐっと内奥を突かれる。
ランディの長い指はちょうど先端がおれのイイところに触れる。
これも体の相性の良さなのだろうと思うと嬉しくなる。
そうしておれが悦んで体を明け渡しつつあると、ランディの熱がぐっとあてがわれる。
反射的に衝撃に備えようとしたが、それは入り口で軽い抜き差しを繰り返すだけで、中に入ってこようとしない。

「な、なんで・・・」
「おねだり」
「ま、また・・・?」
「俺の事欲しいんだろ、そう言ってみろよ」
「・・・入れて、よ」
「どこに」

そこまで言わせる気か。
おれは少し腹が立ったので、もういいよ、と言ってランディのものを後ろ手で掴んだ。
そして自らナカに導いていく。
ランディは少し驚いているようだったがおれの動きに任せる。

「ん、んんっ」

自分で挿入すると言う事はあまりした事がない。
だから、最初は滑って上手く行かない。
先端が入っては抜けてを繰り返す。何度かそれを繰り返しているとランディの手がおれの足をもう少し開かせると、太ももを撫で上げながら入り口にたどり着く。入り口を親指でぐっと広げられた。
これで挿入しやすくなっただろ、と言われたが、ランディのものは何度も空回る。
おれの腕は早く欲しくなって震えていった。
そのせいで余計に入らない。

「ん・・・ふっ・・・もう、も・・・入れてよ・・・お願いだから・・・」

自分でも呆れるくらい懇願していた。
でも冷静さなんかどこかに売り飛ばした。
早く貫いて欲しいとしか思えない。
おれは入り口を開いていたランディの手を払って、自らそこを広げる。

「ここ、ここに・・・入れてぇ」

ランディにはどう映っているんだろう。
自分で広げて、ねだって。きっと酷く淫乱な光景に映っているのじゃないだろうか。
そう思うと体の高ぶりが増した。
ランディは後ろでくすくす笑っている。

「上出来だ」

そう言うと、おれの腰を抱えてゆっくり内部に入り込んでくる。
雨に打たれながら中心がどんどん熱を帯びていく。
腰の辺りに鈍い快感が走りぬける。

「おねだりっていいもんだな、特にお前みたいな奴が言うと」
「はぁっ、あっ!」

求めていたものがナカに入ってきたことで、おれの口からは甲高く嬌声が上がる。
雨の音にもかき消されないほどそれは林の中に響いた。
ランディは誰か違う人にもねだられた事があるような口ぶりだった。
それに内心ざわつく。
おれだけ見ててくれないか。
おれの前ではせめてそういう素振りは見せないでいてくれないか?
腰を揺すぶられながら、首だけ後ろを向く。
するとランディはおれを凄く労わるように顔を覗き込んでくる。
おれの不安を覗き込むように。
それが心を突き刺す。
俺の心の痛みを上塗りするように、ランディのものが内壁を抉った。

「ああぅ・・・っ、っ、おれだけじゃない、のなら、そう言ってくれ・・・」
「何の事だ?」

ランディは動きを止めると、おれを見る。

「おれ以外にこういう事するのか?」
「するわけねえだろ」
「特にお前みたいな奴が言うと・・・って言ったじゃないか・・・それって他の誰かも知ってるって事だろ?」

ランディは迂闊な事を言ったと思ったのか、あー・・・と声を漏らす。

「昔の事だ、」
「でも昔そういう事があったんだろ、比較されてるみたいで、嫌だ」
「すまん・・・」
「誠意がない」
「悪かった」
「謝罪してるつもり?」
「はあ、どうすれば良いんだよ」

それはおれにも分からない。
ランディがおれだけを見てくれれば良いのに。という独占欲は、きっと際限がない。一瞬はあったとしても、いつまでも満たされる事はないだろう。
おれの迷いを見透かしてランディは急におれの前を握りこんだ。

「とにかく、これ、どうにかしたいだろ?」
「・・・・っ」

その低音を耳元で喋るのはずるい。

「話は後で」

耳に軽く口付けてランディはまた動き出す。
互いの吐息や喘ぎが雨に濡らされて溶け消えていく。
内部で暴ずる感触に身震いしながらおれは木に白い体液を飛ばした。






「まったく、こんなにずぶ濡れになって・・・」

エリィが呆れ顔でおれ達の服を引っぺがす。
支援課の入り口でびしょびしょの上着達はティオがツァイトと一緒になってランドリーに持っていった。
上半身裸にさせられて、渡されたタオルで頭を拭く。
さすがに冷えすぎたのか、腹に手を当てると手が恐ろしく冷たかった。
全身濡れ鼠になったもので、もう良いか、とアルモリカ古道から走って帰ってきたのだが女性陣からの反応は冷ややかだった。
課長に至ってはランディに鼻を寄せて、ふん、と言った後に「お盛んだな」と呟いていた。
何の匂いがしたのか知らないが課長にはどうやら何もかもばれているらしい。

「さ、ズボンも脱いじゃって」
「えっと、さすがにそれは・・・、遠慮しとくよ」
「じゃあとっととシャワーを浴びに行きなさいな。ランディは後で良いわよね」
「ああ、こいつのが冷え切ってるからな」

体の露出が激しかったからと暗に言う。
おれは見えないようにランディの背中をつねった。

シャワーを浴びながらさっきのランディとの話の続きを考えた。
古道から帰ってくる時は走って急いでいたからそんな事聞く余裕もなかった。
独占欲にまみれて、ランディを怒らせたり呆れさせたりしただろう。
情けなくなって俯いて壁に手をつく。熱いシャワーが体を温めるのに任せていると、突然扉が開いた。

「誰?」

おれしか入っていないのに、誰が来るかなんて分かりきっている。

「お前シャワーなげーんだもん。冷えたから一緒で良いだろもう」

そう投げやりに言って入ってくると、おれを脇にどかして頭からシャワーを浴びた。
おれが呆然としていると、シャンプーを手に取り無造作に洗い始める。バーベナの香りがシャワー室の中に広がった。
それを洗い流して、ランディはおれを見る。

「なんだ、変な顔して」
「あ、いや・・・さっきは、何かごめん」
「何に対して謝ってるんだ?」
「おれ、別にランディの行動を制限しようとかそういうつもりじゃなくて・・・」
「でもお前だけ見てて欲しいんだろ」

そうとは言っていないのに、見透かされている。

「うん・・・」

シャワーがざあざあ流れていく。
水がもったいないな、と頭のどこかで思った。
ランディの顔をまともに見れず、俯いたままでいると顎を取られた。
真っ直ぐおれを見つめてくる碧い瞳は、深い水底のようだ。吸い込まれそうになる。
シャワーの湯がランディとおれの体を打つ。
さっきとは違って体がどんどんぬくまっていく。
ランディの頬を伝う一筋の雫を目で追うと豊かに隆起した肌を滑り落ちて、下半身の茂みの辺りでどこかへ失せた。
水滴は留まらずおれ達の肌を滑り続ける。
おれを壁に押し付けたランディの濡れた唇が触れてくるまでそんなにかからなかった。背中が冷たいのを気にしてかランディはおれの背中に手を回して壁との間に隙間を作る。

「古道でも言ったけどな、そういうお前、俺は好きだぜ。発情してるみたいでな」
「・・・、その表現どうにかならないのか・・・」
「間違ってはねえだろ」

それに対して否定の言葉が出なかった。
古道の林の中でランディを求めたおれは確かに発情していたように思う。

「・・・まあ・・・、古道では言えなかったけど、おれはランディに対してそう感じてる」
「そうって?」
「発情してるよ」

おれは顎を取られているので顔をそらせなかったが、何とか視線だけは別の方向に逃す。

「それが独占欲の大元なわけだ。お前の場合。呆れるくらい抱いたら収まりがつくかね」
「知らないよ・・・、そんなの」

おれが顔を赤くして、ランディの手を顎から払うとランディはにやにや笑った。

「クク、まあそれは冗談にしても。良いんだぜ、好きなように俺のこと求めれば。いくらでも応えてやる」
「おれは・・・ランディの行動とかそういうの、制限したくないんだ・・・」
「それはお前さんの理由であって俺の理由じゃない」
「でも・・・」
「ここまで言ってもわからねえのか?」
「何が・・・?」
「俺もお前と同じ、ずっと発情してる。お前の行動を制限できるならずっと腕の中に閉じ込めておきたい」

ランディはそう言っておれの耳をべろっと舐めた。

「ひゃ・・・っ」

高い声を上げて、思わずランディの顔を押しやった。
ランディはその手を掴んでくすくす笑う。

「嬉しかったぜ、独占欲の塊みたいな俺と、真逆っぽいお前が同じ方を向いてるなんてな」

おれはその言葉を聞いて何だか腰が抜けてしまう。
安心したのか、呆然としたのか、はたまたこのまま二人で深みにはまっていくのではないかと言う恐怖なのか、その全てなのか。
ずるずるとその場に崩れる。ランディはおれに合わせてしゃがみこんで、深く口付けてきた。
濡れた髪、濡れる肌、熱くなる舌。
おれは水分を多量に含んだ髪が垂れる首に腕を回す。
痺れるほど口付けて口を離すと、ランディがおれを抱く。

「独占欲なんて際限の無いものに振り回されるのも、お前となら悪くないんじゃないかって、思うな」

それはおれも同じだと、頭の片隅で反論の声を上げる理性を無視してうなづいた。
ランディの声が段々耳元に近づいてくる。
シャワーの音より確かに耳を打つ。

『愛してる』

束縛の色の濃いその言葉がおれの胸を安堵させた。

おれも愛してる。
何より、重く、深く。

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