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「あれは以前から気が弱いものですから・・・。知盛殿の事は敬っていましたよ」
「違うさ、」
「いえ、本当に、」
「嬉しそうじゃなかったのは、俺が言った事のせいだろう、」

話の流れで会話の食い違いに気づく。
黙って先を促すと彼は視線を寄こす。戦を前にした時の様に鮮烈に目が光った。

「『お前の兄上はお前が心配で戻ってくるかな』と、」

風が急に出てきたように感じるのは、背が薄ら寒くなったからだ。
声を荒げそうになって押し留めるが、知盛の目は変わらずこちらの目を捕らえたまま意気揚々と輝いている。

敦盛の笛の音が遠く響く。
それ以上視線を合わせる事も出来ずに俯くと知盛は高らかに笑った。

「弟とよく似ているな。そういう姿は、」
「知盛殿、もしや」
「問うか?それを。聡い経正殿にはお分かりのはずだろう?」

彼は猪口にまた酒を注ぐ。
ぐっと膝頭に拳を添えて、言葉を探した。
彼は何も言わない。ただ丸く太った月を仰いでいる。

結局、現世へ死者を引きずり出すのはこの世に対する未練が大きい。
何度も何度も、様々な声が呼んだ。父も、母も、叔父も、多くの声が呼んだ。
その中に、彼の声もあった。
けれど、それでも、理を曲げてまで戻るつもりは無かった。

「あの弟の姿は、さすがに心配だったと見える、」

暗い淵を覗き込んで、弟が呼んでいた。
確かに死んだはずの弟の姿は、生きていた頃よりも儚くなってそこにあった。
何が起こっているのか、疑問が湧いた。死者が蘇ってそこにある事があまりに心配でならなくなった。

「あれは、敦盛が『寄せた』のですか」
「さてな、・・・まあ、感謝しているさ・・・、」
「答えて下さらないつもりで」
「俺は経正殿ともう一度酒が飲める方が重要でね、」
「・・・・。貴方と言う人は、」

一陣風が吹く。今度は薄ら寒さは無かったので、事実吹いた。
ふと聞こえていなかった笛の音が聞こえる。
敦盛の音と少し違う事に気づいて目をやると、奏者が変わっていた。

「俺の声は、聞こえたか・・・」
「・・・え?」

敦盛は知盛の言で恐らくは呼んだのだろうと思うが、どうこの男が言い含めたのだろう。
言葉の選び方は妙であったりするが、相手を不安に投げ落とすのは上手い。
そう考えていると、何事か呟かれていた事に気づいた。

「聞こえたか?」
「え、・・・いいえ、」
「・・・そうか」
「知盛殿?」

興が失せたように立ち上がる彼を見遣る。
聞いていなかった言葉は何だったのだろうか。どうも大事な事を聞き逃したようだったが、聞いても答えて貰えないだろう。
どこか納得がいかないような面持ちで、酒をそっくり持ち上げて去っていく後姿をぼんやり眺めた。

「悪いことをしたような・・・、」

ふと、いつもそうだった、と思い出す。
怒っていたり、悲しんでいたりすると、彼は決まって酒をそっくり持ち去っていく。

「貴方の声は、いつだって肝心なところが聞こえない、」

手にあった猪口の感触をじわりと思い出して、もう少し欲しくなる。
宴の席まで行こうかと、先ほどまでの感傷なぞどこかで放り出していた。
明らかに知盛の効用だ。彼はどうも自分の感情を平素に戻す。

この世へ呼んだのは弟かもしれなかったが、その後ろで手薬煉を引いた彼の声が、実のところ本当は、『寄せられた』のではないだろうかと、ふと思う。


「途切れ途切れで・・・、聞こえなかったものですから、」



あの世で呼んだ声が全て聞こえていたら、酒を酌み交わした夕べを思い出してあの手を取っていたかもしれない───。



















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経正と知盛。×はまだ入らないか、なー。でもホモいよなー多分。

内容は分からないままにしておく方が賢明です。私も分からない^^(いつもの事)

なんかコレ書いてる間中頭がいろいろなところに飛びまくっておかゆのようになりました。

ツネチモラバーの某M毛さんに捧げま・・・!
こんなんですいませ・・・センセー!(T□T)
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