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光線の激しさに耐えかねて、ぞんざいに上着を放り投げる。
後ろからついて来ていた経正はそれを受け取めて、特にその行動を咎める風でもない。
「背中の開いた服が好きなんですね」
「・・・?」
「ほら、この間も着ていたから、」
「ああ、・・・」
それに気付かれた事を嬉しいと言って良いのか戸惑う。
───背の開いた服は翼を遮らない。
そのためだと言ったら、この男はどう言うだろう。
およそ可愛げの無い女の、気色悪い夢言葉を笑うだろうか。
「羽・・・、」
「羽?」
「いや、・・・いい」
振り向いて口をつぐんだ。こんな事を言う自分は自分でだって気色悪い。
───だと言うのに。
「あまり・・・、遠くには行かないで下さい。・・・ああ、意味が違ったらすいません」
少し指先が冷えたような気がして、ぎゅっと手を握る。
彼はしかし、謝った割には的を外していると思っていないらしい。
不安を絵に描いたように、うっすら情けなく笑っている。その顔が、自分を自由にさせてくれると言っているクセに、未練がましくて安心する。
暑いから脱いだ上着は再び掛けられた。払う気には、ならなかった。
彼の精一杯の我が侭だからだ。
「違わない。・・・心配、か?」
「飛んで行く姿は見せて欲しいですが、」
また曖昧に微笑む。
こいつが自分の欲求を抑えるから、迷わず首根っこにしがみついてやった。
唐突な衝撃に備えていなかったのか、自分を抱えた体が少しあとずさる。
「・・・センセ、」
「とも・・・、」
「先生、」
この体を支えてくれても、行き場無く投げ出された触れない手。
焦れて伸び上がる猫のように自分の額から唇から顎に擦り付ける。耳を軽く食むとグロスが付いてしまって、てらりと光った。
最初は肩を掴んで遠ざけようとする手。
なおしがみついていると、やがておずおずと抱き込んでくる手。
汗ばんだ手の平が背中に触れ、羽根をなぞる指の感触に、ぞくりとした。
羽はない。
飛びもしない。
ここにいる。
やがて許しを請うように殊更ゆっくり近づいてきた顔を両手で包み込む。
さっきより少し穏やかに笑んだ顔が嬉しくて、息を、命を吸い上げるように、噛み付くようなキスをした。
あまりにこの人は自分を大切にし過ぎる。引き掴まれるように求められた事がない。
だから、強請るよりもっと強く、奪うようにしか、自分はこの人を愛せない。
それが時折切ないような、悲しいような、言いようもない寂しさになる。
「───・・・、暑い・・・」
「今日、三十度越しているそうですよ・・・学校の花壇は大丈夫でしょうか」
「見に行く、か?」
「いえ、明日にでも」
「そう、か?」
当ても無くぶらりぶらりと住宅街を歩く。
汗ばんだ手を繋いで陽炎の揺らめくアスファルトを歩いていると、木の上の方からは油蝉がじゅわじゅわと空を炒める音がする。
鼻をひくつかせると、むっと湿気を込めたわずかに生臭い空気が流れ込む。擦った肌はチリチリと少し痛いくらいに陽を受けて熱くなっていた。
どこもかしこも感じるだけ熱い。けれど何より手が熱くて仕方ない。
この手はいつどこで離れるだろう。
そういえば、もうすぐ大通りが見えてくる。
このまま行ったら店にでも入るだろうか。
手は、放されるだろうか。
「行くか・・・、」
ぎゅっと握りなおして進路を変える。
今来た道を戻る方向で歩き始めると経正が少し間の抜けた声を出した。
「え、」
「水遣りくらい、手伝ってやる、」
「え?ええ、」
「なんだ?その顔は」
「いえ、」
「意外、か?」
「雨が降りそうなくらいには」
同じように手を握りなおして、彼は笑った。
酷く幸せそうな笑顔が、光線の下でひらめく。
(・・・ああ、)
ようやく、羽が付いたような浮かぶ心地良さを感じた。
やっと、ようやっと。
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つねちもその二は女体化でした。経正先生とちもこさん。
ちもこさんはギャルの女子高生です。ともって呼ばれてます。
経正先生は経済担当の先生です。休日だけメガネです。お弁当は毎日手作りの独身貴族です。
二人は付き合ってるらしいですがみんなには内緒です。
でも実はみんな知ってます。
知らないのは二人だけです。二人とも天然。
ヘタレ優しい×不器用で素直 な感じかもしれません。