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京の夕暮れの繊細さに比べて熊野のそれは豪快で明日が見える。
君が来る時間だからかもしれない。
性格はともかく、君の容姿を繊細と表現するにはあまりによく出来た美しさで壊れそうにはとても思えかった。

筆を流す書の中にぼた、と散った意識が零れ落ちる。
紙に墨が滲んだ様子はそろそろ集中力の限界を知らせていた。諦めてそれを丸めてそこいらに放ると良い頃合で君はやってきた。

「きったねー部屋、」

夕暮れの部屋の中、丸めた紙を拾い上げて突っ立つ彼の顔は伺えない。何を考えているのだろう。いつものこの時間に来るのはどうしてだろう。
それより、汚い部屋に悪態をつきながら掃除もしてくれない。
文句を言うなら少しくらい片付けてくれても良いものだ。

「この方が落ち着くんですよ、」
「嘘ばっか、本当は片付け方がわかんないんだろ?」

部屋に差し込む茜やら橙やらの光線が彼が足荒く踏み入ってくるのに合わせて舞い上がる埃を映し出す。仙人の霞みたいに吸い込むと腹がくちないだろうかと思うが埃は埃だ。少し吸い込みすぎてむせる。
えづいているところにヒノエは手をぬっと伸ばして合わせ目を開いた。
色気や素っ気と言うものをよく理解しているくせにそんなものを僕相手に気にする風でも無い。
文の前略のように形式を省いて、けれど最低限の礼儀で前戯を行う唇の感触に身を捩った。
首に跡を残してくれるのは結構だが、翌日になると大概残っていない。こんなに強く吸われているのに早々に消えるのだからどうやっているのだか、今度教えてもらいたい。
思っていると、ヒノエは強く口を吸った。

「随分気が散ってるみたいだね」
「そうでも・・・。ああ、空が・・・、朱いな、と」

ヒノエの色は、いやヒノエ自身さえ、いつもあそこから溶け出して出てきているようだ。
錯覚に思えて、現実かもしれない。

「おれの事見てよ、」
「見てます、よ。でも、逆光で・・・」

顔に触れる。輪郭を確かに感じて目の辺りに指を走らせるとそこに窪みがあった。
羽毛のような幽かな感触で睫毛に触れる。
彼の顔が記憶の中にあったのとまったく同じかどうかなんてここにあっては分からない。感触だけで十分かもしれないが。
下腹に触れ始める手が彷徨って袴の紐を解く。絹の擦れるしゅ、しゅ、と音を聞くだけでどこを解いているか知れた。
胸板に舌のぬるさが伝って、やがて熱に触れ意図を持って動き出す。
一生懸命、その言葉が一番合う必死さで奉仕されると動きの巧拙などあまり感じない。
いつも余裕綽々で、僕に対して殺しても死にそうにないなどと悪態をつく君にはあまり似合わない、そういう差が酷く愛しい。股座に突っ込まれた頭を緩く撫でる、湿った感触に奥を探ると地肌は汗をかいていた。
自分も同じように汗ばんでいるだろうか、首筋から髪の奥に手を突っ込むとそうでもない。年齢差か、と思うと、急に可笑しくなる。

「・・・っ・・・、ぁ」
「声出しなよ、気持ち良いんだろ」

汗もかかない自分がこうして若い甥っ子に身をゆだねて喘がされているのが可笑しい。
後庭に舌がぬるりと滑り込む。間から指が差し込まれて入り口が解される。反射的にひくついている肉の感触に背筋がざわついた。早いところ繋がってしまいたい。あまり長い事愛撫されていると笑い出してしまいそうだ。こんなに丁寧に愛されて心地良くなるほど綺麗な体ではない。
むしろそれと逆のつくりになってしまった体は厭うべきだろうが。

「ヒノエ、」
「なに?」
「良いですよ、そんなに丁寧にしなくても、」

ヒノエは見えないけれど嫌そうな顔をした。見えないけれど分かる。
若いからってがっついてると思われるのが嫌だ、とか言うとは思っていないけれど、実際はそんなところだろう。がっつきたいのも事実だからなお嫌なのだ。

「早く欲しいんですよ、」
「痛く・・・ねえの」
「痛い・・・」

痛いのが良いなんて言ったら怒るだろう。口を閉ざして一瞬考える。
ヒノエの熱に指を絡めるとすっかり立ち上がって疼いているように思えた。

「深く考えなくて良いですよ、ほら」

腰を押し付けると、堪りかねてぎゅっと身を寄せられる。内部に押し入ってくる熱に背筋が粟立った。苦しそうに息を吐いているのがどちらなのか分からないくらい互いの息は荒い。空気を求めるように唇を求めて先を強請ると、腰が緩く動き出す。
急に押し入られた内部は肉が裂けて血が溢れ、滑りが良くなっていく。体がおかしい。もう快楽を感じる部分は麻痺している。
痛みを感じないと快楽にならない。君を感じない。

「っあ・・・、あぁっ、っぅ」
「・・・っは、ぁ、あんたさ、・・・いつから・・・、」

言いよどんでヒノエは耳を噛んだ。流れ出した血を啜る音が聞こえる。
揺すぶられて段々生理的な涙が溢れてくる。痛みで流しているのかもしれないがどうでも良い。
もう何も感じない。今以上の快楽が見えなくて苦しい。
痛みを越えたところの快楽は死しか見えない気がした。
求めて伸ばした手に絡んだ指が強く握り締める。
手はぬくもりを伝えるのに、僕は君の熱を感じられない。
どうしてだろう。痛みを感じても熱が確かにここにあっても、感じたいのに何一つ無い。

「あ、あぁっ・・・い、・・・ぁ」

早く。・・・早く。

「ヒノエ・・・っ」

堪えられずに肩に噛み付いても君は痛がらない。
互いに精を吐き出して腹と腹の間は饐えた空気を抱いた。
抜け落ちる熱の後には血が止まらずに流れ落ちる。
その血のどくどく流れていくまま、僕は意識を手放していた。

目覚めるまでの間、君は僕の髪を悪戯に梳きながら、必要な事を言って囁いて必死に訴えて僕から帰っていく。
それは決まって同じ事で、何でそんな事を言うのか、僕には分からない。


「いつからおれと会ってないか覚えてる?」


一生を七日に分けるなら一日目が出生で、二日目から六日目は延々と死ぬまで長く伸び続けていく。七日目は、死者にとって命日だろうが、生きている者には七日目は常に今日の事だ。
君の七日目は僕とずっと続いているのに、そんな事を言う。
そんな事を言うから僕は何一つ感じられなくなるのかもしれない。

 

起きた後、もうすっかり日が落ちた空の下、君は少し遠く佇んでいた。
声をかけると振り返って手を振る。ああまだ仕事があるのか。


先ほどの夕暮れを君に重ねて想う。
血の色に近い赤黄金。明日のその時間を神聖めいた思いで待つ事にして、埃っぽい部屋の戸を引いた。




























































珍しくヒノ弁。弁ヒノ厨ですが同時に朱雀厨なのでどっちでも。
タイトルは「たそがれどき」と読んで下さい。

ヒノエが死んだら弁慶は気が狂うだろうなーって
弁ヒノツガイ説を提唱するヅケさんはまっこと勝手にそう思っています^^^^^^^
で、出来た話。

ヒノエが死んでいるのに、あ、死んでるんです。
分かんない方がいたらあたしの文章力不足なので温い目で見てください。

で、死んでるのにヒノエがいる事にして
普通の日常として過ごしちゃってる弁慶がいてえ話です。スイマセン。
やっちゃってるシーンは弁の妄想なのか
ヒノエのオバケちゃんなのかそこら辺は読んだ方に委ねます。(←考えてなry)


弁ヒノの弁慶って病的な部分あんまり感じないので
ヒノ弁にさしてもらいました。えっらく書き易くてビビリました。
実は弁ヒノって書くのムズイって思いました。発見!!
あ、あたしが病んでるのかも!(えー!)


弁慶はまあ。。。元々あまり気が確かとも言い難いとか思ってるんだけど(うわ・・・)

てか大概の事態には動じなそうなんですけど
こういう事に関しては気が違ってしまう人だと愛しいなあと思う。(あたしが)

例えばこれで九郎が相手だとしても同じような病み方するだろうなーって。ほら。

弁慶って痛めつけたい衝動にかられるんですけど何ででしょうね。

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