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山の峰の白々と霞む様子に目をすがめた。
隣の温もりはとうに失せている。
サラサラ布団を撫でてもいなくなった人の感触はおぼろ気だった。
思い出して顔を赤くするような間柄でもないからか。
新月の晩に必ずおとがう人がいる。
僅かに高い背と、薄い色素。香る伽羅の匂い。
微酔いした風に戯れてくる。
同じようなくせの髪が入り混じっていく。
幼いころのように、近く、幼いころと違い、熱をはらんで。
腹をさする指の動きにたまらず声を漏らすと、彼は決まって笑った。
「可愛い方だ」
誰を見ている。
誰を抱いている。
月の無い夜に、見えない彼の人を抱きに来る。
「庚、」
姉の名を、何度も囁いては髪をすく。
「ねぇ、僕の名前も呼んでくれないんですか」
胸が千切れていく。
恋しがる人を思って問いかける声を聞くたびに、涙を流しては、それを吸う唇に錯覚を起こす。
「すいません、」
自分に囁かれた言葉はただのひとつも無いのに、痛みをまぎらわせようと、勘違いしていく。
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