忍者ブログ
1234567

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

 

 


赤がね色の女性がいた。

恐らく出会った中で、誰より傷つけた。

誰より、愛しかった。

 

姉である事を知ってさえ、手の中に収めずにいられないほど。

傲慢な若さが彼女の体を舐る時のその様に、愉悦に浸っていた。

 

望月の、ふっくらとした光に縁取られて

彼女の輪郭が浮かび上がる。

快さと悲しみで窮屈になった心から

堪えられなくなった嗚咽と喘ぎと

瞳から雫が零れて、こちらを見ていた。

 

その顔が、言い様も無く、愛しかった。

 

 

彼女の顔を見なくなって数年。

甥の、彼女によく似た少年が

段々と成長するにつけ似ているものだと思う。

 

緋色の髪、紅玉の瞳。

 

 

微酔いに任せて彼の部屋を訪ねたのは新月の晩。

星に照らされた中で、互いの顔もろくに見えず

無理やり引き寄せた体の熱だけが頼り。

彼は特に抵抗するでもなく、舌が絡むに任せていた。

 

くせのある柔い髪を指で遊び

額や頬や耳朶へ口付ける。

 

腹を撫で上げると

堪えようと唇が引きつり、眉間に皺が寄る。

あの人の仕草を重ねて見て

思わず、名前が零れた。

 

「庚」

 

甥は体を引きつらせていた。

叔母の名をこの場面で口にするなど

何があったか、彼にはよく分かるはずだ。

 

怒鳴って追い出される事を期待したが

彼は口を開かなかった。

 

 

胸の奥に痛みが降りかかる。

 

代わりでいる事を厭わないのか。

この様を哀れんだのか。

あるいは、代わりでなくてはならないのか。

 

 

「ねぇ、僕の名前も呼んでくれないんですか」

 

重ねて見ているのか。

彼自身が愛しいのか。

 

一方だけであり、両方でもある。

 

ゆえに自分の真実は語れない。

彼がまた何をか思って体を開くのなら、なおのこと。

そこに、通じ合った想いは、持てない。

 

何度となく、姉の名を口にしていたら

彼が泣き出していることに気づいて

頬に唇を当てる。

 

「すいません、」

 

耳近くでそう囁く。

泣かせたことにではない。

こんな痛みを味わわせている事に。

 

 

 


 

PR
  top  
忍者ブログ [PR]