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夏の名残がようやく消え行った頃になると空は高く澄んでにわかに肌寒いような涼しい風が吹き抜ける。
「さて、と」
比叡のお山の荒法師などと巷で騒がれたのもいつのことかと言う風体で、薄黄金の髪を袈裟に巻く。
赤や黄色の葉がこれから行く道道で目に入り、やがて懐かしい匂いを伴ってあの場所へ着く。
記憶の風景は、早いもので既に五年前のものになる。いずこかの地より神子が招かれ、京を鎮めてからそんなに経ったのか。
「年も、取るはずだ」
脚半の紐を縛り、一言ごちる。
寺の中ならば若いと言われることもあるだろうに、年寄り臭くそんな事を言ってしまって、笑われるだろうと思った。
立ち上がり、傘をかぶって杖を持つ。
「あの子は、どうしてるかな」
思わず頭に描いた笑う彼のの姿に、久しく会っていないための恋しさを抱く。
もうあの子などと言う年齢では無いのに、記憶に深いのは少年の姿。夏の日差しを真っ向に受けて駆け出す小さな背中を思い出す。
「・・・会いたいな、」
心が穏やかになるほど、かつての記憶が今以上に濃く映えていく。
手の中にあるものを失うまいとするのは年を重ねた証かもしれない。
一度祈るように錫杖を付く。
澄んだ高い音色が、秋の空に響いて染み透っていった。
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