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触れた途端

彼方に沈んだ記憶を沸かせ

それは洪水のように流れていく。

立っているのかどうかさえ分からなくなるほど

時間も空間も忘れた。













「弁慶・・・、」



夏の陽が弾ける、むせる暑さの中

黒い外套の中に見えた人は歩み寄ってきた。

彼は立ち尽くす身体に手を伸ばして顔を探す。

穏やかな微笑も声も変わらぬまま

ぺたぺたと頬を探り

また声もなく笑っていた。



「君は・・・随分大きくなってしまったようだ。顔が僕より上にある」



ふふ、と咽喉の奥から声が響く。

彼の目が見えていない事に気づいて

頬に触れる手を握り締めた。



今までどこで何をしていた。

目はどうしたのだ。

そもそもここへはどうやって。



聞きたい事も怒鳴りたい事も

ざらざらとうるさく頭の中に落ちてくる。

それらを一つにまとめる事も出来ず

唇を一度噛み締めて、拳を握った。







「おかえり・・・なさい」



一つ頷いた彼の黒い外套を、頭から取る。

薄黄金が陽光に煌いて現れ

ゆるゆると風に揺れた。



肩口に顔を埋めて

頭を撫でるその人の手を受け止め

最後に会った時よりずっと前に

自分の時間が遡る。



「小さい子みたいな事をして、笑われますよ」



この人の前では

培ってきた大人の顔を何一つ見せられない。

何一つ纏わぬままの顔になってしまう。

再会して早々に懐かしい泣き顔を晒すだなんて、みっともない。



「情けないと思ってるだろ、十年ぶりでこんなんじゃ」



悔しさも、悲しさも、嬉しさも、喜びも

この人に支配される。

全て彼から与えられた感情のように。



この胸に迫る慕わしささえ

例外ではない。





「いいえ・・・、

十年以上の歳月を取り戻したような気がします」



盲目の人は嬉しそうにそう囁く。

もう見る事が出来ない代わりに

彼はしきりに背や頭を撫でては

ふくよかに笑んでいた。



「ただいま、・・・ヒノエ」































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あれやこれやとあって

最後に27歳のヒノエと35歳の弁慶が再会して終わるってのが

べんひので漠然と考えてる最終形態。



ヒノエは子供も嫁さんもいるんですが

女性を愛する事とは全然違ったところで

弁慶と言う人を欲していると言うか。

生涯に渡って愛しあうと言うイメージはべんひのにはありませんな。



必要だから必要。

それは魂や生命が引きずられて引き合うようなものです。
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