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男は寝ていた。

先ほどまでどちらへともなく歩き続けていたが、それまでちっとも疲れなかった足が急にだるく重くなり、足元にへたりこんだのだ。

時折耳鳴りのように聞こえる音が不快だった。

満腹のところに、無理に食事を与えられているようで。

仕様がなく、ひたすら目を固く瞑り、眠る。

なのに息苦しく迫ってくる苦痛の波。



この、しがらみは何だ。



不快な音に耳をすませると、それは自分のよく知った何かであるように思える。一度耳を傾けてしまうと、引きずられるように足が上がった。

恐らく行ってはならないと警鐘が鳴るのに、意思を無視して足が動き続けた。











「弁慶・・・」



ゆっくりと開かれた目を見て、成功したかに思えた事柄が疑わしく感じた。

目が虚ろで、意思を持っているのか分からない。



「、・・・」



屍だったそれは、何事か分からない呟きと共にゆっくり上体を起こした。

ヒノエは動き出した彼に歓喜し手を伸ばす。

触れて果たして崩れ落ちはしないかと思うが、衝動的に構わず手の中にかき抱いた。

体は微動だにしない。

熱も確かに宿り、鼓動を感じた。



「ヒノ・・・エ」



微かに、本当に息を漏らしただけのような声で名前が聞こえる。

懐かしさに泣きそうになりながら、名前を呼んだ。

弁慶、と呼ばれるたびに屍は確かな人としてそこに蘇る。

目の前の少年が何故こんなに嬉しそうに自分を抱いているのか、ぼんやり霞のかかったような頭には分からなかったが、やがて頭に流れてくるいくつもの映像から、段々と知覚する。

死んでいたことと、蘇ったことの二つが、解せないながらも受け入れざるを得ない事実らしい。
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