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赤い髪の少年は自分に対してよく言ったものだ。

何故お前は口数が少ないのかと。

彼のせいだと言ってしまうのは申し訳ない。

申し訳ないのだが、彼のせいだ。

























「・・・そんで、ヒノエがぎゃーぎゃー泣いて出てったって事で良いんだな」

「はい、」



湛快が彼の息子と同じような紅い髪をぐしゃぐしゃかき回しながら口をへの字に曲げる。

どうしようもない、と言うように。

それはもちろん敦盛に対してと言うより、どうしようもない自分の息子に対してだ。



「ったくあいつもどうしようもねぇな」



案の定口から零れ出る。



「いえ、でも、」

「ああ、お前が気にするようなこっちゃねえさ」



温いとか生っちょろいとか自分の子供に対して言いたい放題言いながら

やはり心配は心配なのか周りの人間に声をかけた。



「お前はここで待ってな」

「いえ、私も一緒に」

「お前まで迷子になられたら、困るんだ。いないと分かったらヒノエがまた泣いて飛び出す。また迷う。二度手間だろう?」





それは想像に難くなくて、苦笑して見送るしかなかった。









ヒノエが泣き喚いて本宮を飛び出し、夜になってもまだ帰ってこない。

捜索にかかった者達の列に加わる事もなく、当事者の敦盛は部屋で一人佇んでいるしか出来ない。

御簾越しの月明かりは煌煌と面を上げているのに、気分は落ち込むばかりだ。

肘掛をずらしたりしながら、居心地の悪さに溜め息を吐く。



「私のせいか・・・」





そもそもの発端は、ヒノエがなんでお前はそんなに口数が少ないんだと質問したところにある。

敦盛は余分な事を言わないのが美徳だと思っていたから、素直にそう零した。

するとヒノエが、すました顔で腹の中は別のことを考えてるのかと言い出して、そうではない、いやそうだ、の口喧嘩が始まった。

堪忍袋の緒が切れたのは意外なことに敦盛の方で、思慮もなく最後に言った言葉がえらく彼を傷つけたらしい。



「本気で言ったわけじゃない、」



平家の屋敷に行っても、こちらへ来ても、本当にしょっちゅう泣いている。

十にもなって情けないと思うのに、どうにもならなくなるとすぐに涙が出てしまう。

大人がそれをたしなめる事は少なかったが、ヒノエは真っ向からそうとは言わなくても、別のことで気を紛らわせようとしてくれる。その度に涙を忘れた。

言外に容易く泣くなと言っているのが分かるのに、決して傷つく事は無かった。



今、その彼はいない。



「ヒノエ・・・」



いないから、笑うことも出来ない。

いないから、簡単に泣いてしまう。

無事を祈りながら止まない涙を拭う。

ぎゅっと袖を握り締めて、冴え冴えとした月を臨むと

ふと、ヒノエが言っていた事を思い出した。



『やなことがあったら、救いがあるもんだろ』



真ん丸く天に昇る月がある事に感謝する。

細長く心もとない三日月でも

月明かりの無い朔の晩でもなく

明るい望月の夜。

どこかで未だ彷徨っている彼の足元を

この月明かりが照らしてくれるだろうと思った。





しかしやがて月が中天に達しようと言う頃にもなると、段々眠りが濃くなってきてしまう。

寝てはいけないと思いながら肘掛にもたれてしまった。
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