忍者ブログ
12345678910

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

禊は禍を祓い、汚れを落とす。

白い装束は死人が蘇らぬよう、清め、この世の記憶を消す意味を持つ。



白装束を身に纏う度、自身が生まれ変わるように思う。





弁慶が熊野へ帰ってくる。一報が入ったあと、始終心が圧迫された。

滝の水に打たれながら、清浄とした空気に身を浸す。

喜ばずにいられない自分が、どこか憎たらしい。

勝手に帰ってきて、勝手に出ていく。そんな男に感情を奪われるのが悔しい。







「こっちにいたんですか」

旅装束もそのままに、今しがた考えていた相手が、にこりと笑った。



「君が禊するなんて、余程の汚れにでも当たったんでしょうか」



さくさくと湿った岩を登って滝壺に近付いてくる。

見計らって、ざぶ、と音を立て、滝から離れた。

張り付いた白い布は空気に触れると寒々と体温を奪う。



「今回は、何の用だ?」

「君は聡いところが良いけれど、少し可愛くしておく方が年頃らしいですよ」



弁慶はふふ、と喉の奥で笑って、表情を改める。



「君にも今回は言えません」


なぜ、と問おうとして弁慶の視線に圧迫された。

途端柔和な表情に戻る。



「今回は口止めされています。それに、君にはこの熊野でやって貰わなくてはならない事もある」



一通書面を取り出すと、それを手渡す。

次いで今だ水の滴る前髪を一房手に入れ、絞っては、すく。



「君がやることと、僕への口止めです。兄直々の書面ですよ」



言って、紙を指で撫でた。つられるようにそれを開けようとすると、弁慶の手が阻む。



「これは後のお楽しみ。それよりそんな格好でずっといると風邪を引きます。着替えてから来てください」

水で張り付く着物が薄い肩を一層華奢に見せる。

労るように一度だけ撫でると、来たときと同じようにさくさくと戻っていく。



聞こえるように一回舌打ちをすると、彼が振り向いて苦笑した。

PR
  top  
忍者ブログ [PR]