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  <title>小説置き場</title>
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    <item>
    <title>流星</title>
    <description>
    <![CDATA[<br />
空を眺めていると星が一つ落ちた。<br />
群れる星の流水は帯のように流れを作って空にまたがる。天の川という星の運河だとランディが教えてくれた。<br />
東方の行事の一つとして存在する七夕。東通りに軒を連ねる店や家には笹が短冊とともに飾られ、街中は提灯の橙色で埋め尽くされて、出店の品がぼんやり浮かび上がる。<br />
エイドスの思想が強く存在する中、一種の祭りや習慣として残っている行事だが、東方系の人間以外はあまりやらない行事だという。<br />
ただ出店が増え祭りの雰囲気が強いと覗いてみたいと言う気持ちは当然あって、おれとランディはキーアを連れて祭りの見物をしている。<br />
<br />
「エリィたちも来れば良かったのにな」<br />
「まあ、お嬢たちは雑務が残ってるって言ってたしな。キー坊が行きたいって言うのをすげなくするのも出来ねえし」<br />
<br />
キーアは初めて見る出店の品物を指してはこれはなに？あれはなに？と問いかける。<br />
ランディもしまりのない顔になってその質問に逐一答えていた。微笑ましい。<br />
普段は面倒がって色々な雑務から逃げているのに、女の子に対してはマメな人間だ。<br />
ランディが屋台のりんご飴を一つ買ってキーアに渡すと大きな瞳を目一杯開いて喜び、頬張った。<br />
垂れてくる飴を舌先ですくい、甘い美味しいと噛り付いている。<br />
<br />
「落とさないようにな」<br />
「うんっ」<br />
<br />
おれが割り箸の棒を持たせ直すと、ランディは後ろで笑った。<br />
<br />
「なに？」<br />
「お袋みたいだと思っただけだ」<br />
<br />
おれは少し止まる。ランディの言うお袋、は、いわゆる一般的な母の意味だろう。<br />
ランディの母について聞いた事は無い。おれも自分の母について覚えていることはおぼろげで、ただ触れる手が優しかったことや笑顔の耐えない人だったことだけが脳裏に焼きついている。<br />
<br />
「そういや、ランディの母親って聞いた事無いけど」<br />
「はは、聞くのか？それ」<br />
<br />
ああ、ちょっと無神経な質問だったろうか。<br />
過去と決別しきっていない人間に聞くのはいけなかったかもしれない。<br />
<br />
「ごめん」<br />
「謝るなよ。&hellip;お袋ねえ。とっくに死んでるらしいから俺もよく覚えてないんだけどな。お前は？」<br />
「おれも、まあ小さい頃に死んでるから、おぼろげだよ」<br />
<br />
くすくすお互い苦笑すると、ランディは先にずんずん進んでいるキーアの腕を追いかけて手を握った。<br />
手をつないだキーアは嬉しそうにはにかみながら、視線をきょろきょろさせて次の店を探しているらしかった。<br />
<br />
「ランディッ、キーアあそこ見たい！」<br />
<br />
へいへい、と生返事を返すランディは手を引かれて風ぐるまの屋台に向かう。七夕仕様なのか七色に着飾った風ぐるまがくるくると風に乗せられて涼しげに回転する。それらを眺めながらキーアはまた目を輝かせていた。<br />
<br />
「お袋は、旅の踊り子だった」<br />
<br />
風ぐるまの選別に夢中のキーアを少し笑んだ顔で見ながら、ランディは呟く。提灯の明かりに照らされて、その横顔は一際美しい造形を作り上げていた。<br />
ぼんやりと見惚れている最中に言われたので反応出来ずにいた。<br />
ランディはこちらを向いて橙に染まった頬を上げる。<br />
<br />
「何だよ、折角の俺の語りは聞きたくねえってか？」<br />
「ああ、いや&hellip;その、聞きたいよ」<br />
<br />
ここで見惚れてたなんて言えば、ランディは茶化してさっきの話をうやむやにしてしまう気がしたので、おれは言葉を飲み込んだ。<br />
<br />
「踊り子だったんだ」<br />
「ああ、記憶はちょっとしかねえけど、綺麗だったぜ。親父が惚れ込むくらいだから頭も良かったんだろうな。抱かれた記憶が印象に残ってる。それが気持ち良くてな、俺はあの人に愛されてたんだなって思う」<br />
<br />
らしくねえか、こんな事言って、とランディは頭を掻く。<br />
旅の踊り子、聡明で妖艶な女性の姿がぼんやりと浮かび、その顔がどことなくランディとだぶった。<br />
<br />
「ランディの顔は母親似なのか？」<br />
「ん、ああ。どうだろうな、&hellip;でもそうだな、似てると思う」<br />
<br />
ランディの顔をまじまじと眺め、その顔に母であった人を見る。垂れた目は人好きするところがあるし、薄い唇は荒れもなく潤って艶めき、口角は上がっている。全体のバランスを整える鼻筋の通りも綺麗でおれは改めて文句なく美しい様相に少しため息をついた。これが女性であったならさぞ綺麗だったことだろう。<br />
おれも母親似だが、兄のガイが言ったことには、年齢よりずっと幼い雰囲気の姉のような顔立ちをした母だったと言う。それに似ているのだから童顔も仕方ないが、おれはランディみたいに大人の雰囲気を持った顔立ちに憧れがあった。<br />
<br />
「羨ましいな、こんなに綺麗な顔立ちの人が母親なんてさ」<br />
「綺麗って、俺の事か？」<br />
「そう、ランディは綺麗だよ」<br />
「何かなあ&hellip;カッコいいは嬉しいけど綺麗って&hellip;」<br />
「ふふ、おれは羨ましいけどな」<br />
<br />
キーアが風ぐるまをようやっと決めたらしく、片手にりんご飴、片手に風ぐるまを持って走り寄ってくる。と、足元の石ころにけっつまづいて、キーアが体勢をぐらりと崩した。おれが走り出す前にランディが咄嗟に走りキーアの体をしっかり腕の中で受け止める。<br />
<br />
「キー坊！」<br />
「あ&hellip;！ランディ！」<br />
<br />
受け止められた腕の中で体勢を立て直すと、キーアはみるみるうちにしょんぼりした顔をする。<br />
<br />
「大丈夫か？どこか打ったか？」<br />
「あ、ううん。あの、ごめんね&hellip;あめ、付いちゃった」<br />
<br />
ん、とランディが自分の服を見ると液体状の飴がべったりと付いている。<br />
<br />
「気にすんなよ、ただの飴だろ。洗えば落ちるし」<br />
<br />
ランディはそう言ってキーアの頭をわしゃわしゃと撫で付けていた。おれはその様子を少し離れた位置から眺め、わずかに笑う。まるで父親だ。<br />
<br />
今度は転ばないようにと、祭りの休憩スペースで一息入れる。キーアは大きなりんご飴を無心で頬張りながら、目はあちこちきょろきょろしている。<br />
その中で気づいたのか、少し目を伏せた。<br />
<br />
「みんな、おかーさんがいるんだね」<br />
<br />
子供連れの夫婦を見ながらキーアはりんご飴を食べる手を止めて、不思議そうな眼差しを送る。<br />
<br />
「寂しいのか？」<br />
<br />
ランディがそう尋ねると、キーアはぶんぶん首を振る。<br />
<br />
「キーアのおかーさんはいないけど、ロイドとランディがいるからさみしくないよ！それにエリィもティオもツァイトもかちょーもいるしダドリーだってたまに来てくれるよ、モモもリュウもアンリもいるし、それにそれに、」<br />
「ああ、オッケーオッケー。それだけいっぱいいれば寂しくないな？」<br />
<br />
ランディは爆笑しそうになるのを手で押さえながらキーアの頭を撫でる。<br />
<br />
「でもねえ、おかーさんてどんな感じなのかわからないから。ロイドにもランディにもおかーさんているんでしょ？」<br />
<br />
好奇心でいっぱいの無邪気な質問におれは少し困った。<br />
ランディも同じ様子で少し困ったように頬を掻く。<br />
<br />
「ああ、」<br />
「それは、そうだな」<br />
「今はどこにいるの？」<br />
「俺のおっかさんはあそこだ」<br />
<br />
ランディが指をつっと天に向かわす。一際輝く一等星を指して、キーアに見えるか？と尋ねる。<br />
<br />
「あの星がそうだ」<br />
<br />
亡くなった人が空にいる、星になった、とは幼い頃よく言われた文句で、空に思いを馳せたものだ。<br />
ランディは一等星の輝きを眺めて、艶やかな唇を動かしていた。<br />
<br />
「へー。&hellip;とおいね」<br />
「そう、遠くにいる」<br />
「でも、でも、すぐ会えるね！」<br />
<br />
空を見上げればそこに。そういう意味だろう。<br />
ランディは面食らった顔をして、噴き出した。<br />
<br />
「そうだな」<br />
<br />
笑みを深くして慈愛に満ちた目をキーアに向ける。<br />
もしランディの母が生きていて今の彼を見たらどう思うだろう。<br />
戦場のみで生きる事を生まれる前から義務付けられた彼の今の姿。<br />
幼い少女とまるで親子のように戯れながら、母がどこにいるのかと問われ星を指す。<br />
穏やかそのものの姿を、母ならば涙を流して喜ぶのではないだろうか。<br />
<br />
<br />
「あ、ながれぼしー！」<br />
「ん？」<br />
「本当だ」<br />
「残念、俺は見れなかった」<br />
「だいじょーぶ、ランディの分のお願い、したよ」<br />
「へえ、どんな？」<br />
「んーとね、お菓子作りが上手くなりますようにって」<br />
「あ、ははは、まあ苦手だからな」<br />
<br />
その様子を脇でくすくす笑いながら見る。ランディが困ったような顔でおれをちらりと見たので、また笑んだ。<br />
おれも願い事をした。<br />
まるで計ったようなタイミングで流れた流星はランディの母の嬉し涙に思えた。その涙に願う。<br />
<br />
<br />
帰りに皆で短冊に願い事を書いた。<br />
おれは一枚自分の願い事を書いてくくりつけ、２人に隠れてそっともう一枚書いた。<br />
<br />
彼が現在から未来へ平和で安穏な日々を送れますようにと。<br />
<br />
<br />]]>
    </description>
    <category>流星</category>
    <link>https://cherryhoney.blog.shinobi.jp/%E6%B5%81%E6%98%9F/%E6%B5%81%E6%98%9F</link>
    <pubDate>Wed, 06 Jul 2011 14:39:08 GMT</pubDate>
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  </item>
    <item>
    <title>楔２</title>
    <description>
    <![CDATA[<br />
<br />
ランディが出て行った部屋はがらんとして静かだった。<br />
ほんの少し前まで疑わずにいた、いや、疑わないようにしていたランディの気持ちを知ってしまった。<br />
思えばおれを抱きしめる事が無かったのも、口付ける回数の少なさも、ベッドだけで聞いた睦言も全部おれの体目当ての言動だったんだ。<br />
やはり決定的だったのは今日。<br />
面倒そうに慣らしたり後始末をしたりする顔は知っていたけれど、それも気にしないふりをしていた。<br />
だけれど、今日のランディは調子に乗ってというのではなく、もうおれを恋人としてではなく都合の良い体としてみている気がした。<br />
行為の最中から感じていたその疑問をぶつけるにぶつけられず、口を閉ざしていたけれど、もうどうしようもなくランディの気持ちが気になって聞いてしまった。<br />
行為の後を伝える精液が太股を伝い続ける。<br />
棒立ちしていたおれは、ベッドに戻って後ろに手を伸ばした。<br />
先程まで入っていた熱を思い出す。<br />
<br />
───男相手にマジになるとか、無いだろ<br />
<br />
痛い。心が悲鳴を上げる。<br />
後ろに指を差し込むとぐちゅ、と音がして内部に放たれた精液が零れ出てくる。<br />
内部を引っかくように、やや乱暴に、ランディの言葉を打ち消すように、おれは自分でもこれで良いのか、と言う後始末をした。ティッシュを丸めてゴミ箱に投げるとこつんと弾かれて床に落ちる。<br />
虚しさが、後から後から胸にこみ上げてくる。<br />
ランディは今頃歓楽街に向かっているだろうか。<br />
どこかで女の子を引っ掛けてしけこむつもりかもしれない。<br />
白い柔らかい肌、柔らかい胸、太股、どれも自分には無い。それでいて何でランディはおれを抱いたのだろう。<br />
<br />
「少しくらい、好きって事･･･？」<br />
<br />
嫌われてるわけじゃない。それがほんのわずか希望になる。だけれど、何か自分とランディの感覚には重大な齟齬があると思った。<br />
話し合わなければ。いや、おれがもっとランディに近づきたいんだ。話したいんだ。<br />
<br />
「行こう･･･」<br />
<br />
重い腰をさすって、服を着る。<br />
少し足取りは重いけれど、おれはランディと話したい。<br />
好きなんだ。どうしようもなく。<br />
そう思うとわけも無く涙が溢れてきた。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
夕方近い歓楽街は多くの人でにぎわっている。<br />
ミレニアムの近くで着飾った女の子がそわそわと腕時計を見たり、初老の紳士と品の良い婦人がアルカンシェルの建物に吸い込まれていく。<br />
おれはランディの行き先が恐らくカジノだろうと目的地を決めてカジノに向かう。<br />
入り口のバニーガールに擦り寄られて困りながら入店した。<br />
鼻を突く煙草の香りに香水の香り、店独特の香りが入り混じってカジノ特有の空気が渦巻く。<br />
入ってすぐ彼はいた。複数の女の子に囲まれてポーカーをしている。<br />
きゃあきゃあと黄色い悲鳴が上がる中、ランディはいつもと変わらない笑顔を振りまいている。<br />
どうしよう、入りづらい雰囲気だ。<br />
さっきまでの意志はどこかに失せて、今はただ帰りたい気分になってくる。<br />
それはランディが余りに普通に過ごしているからだ。<br />
おれの事なんか何でもなかったみたいに。<br />
一つ溜め息をこぼす。<br />
<br />
「ねえねえロイド君？どしたの？」<br />
<br />
視線を右にやる。受付のチェリーが突っ立っているおれを見て声をかけたのだと気づく。<br />
<br />
「その、ランディを呼びに来たんだけど、ちょっと入りづらくて、さ」<br />
「またランディさんお仕事サボり？」<br />
「いや、違うんだ、･･･まあ、皆楽しんでるみたいだし･･･」<br />
<br />
チェリーはふうんと言って、にっこり笑った。<br />
<br />
「ランディさん、あと一時間くらいすると一人でいつもふらっといなくなるの。だからその頃また来てみたら？」<br />
「あ、そうなのか？じゃあそのくらいにまた来てみる。ありがとう」<br />
<br />
思わぬ情報をもらった。<br />
夜中までどこで過ごしているのか、深く聞いた事がないから知らなかったけれど、いつもカジノに入り浸っているわけではないんだ。<br />
おれはきびすを返してカジノを出ようとした。<br />
その時。<br />
<br />
「あれ、ロイド？」<br />
<br />
丁度入店してきた人物に少し驚く。<br />
彼は腰に手を当て、いつもの微笑でおれを見ていた。<br />
<br />
「ワジ、ここは未成年が来て良いところじゃないだろ」<br />
「あはは、ご挨拶だねえ」<br />
<br />
ワジはおれの注意なんて聞く気もない様子でホールの中に入っていく。<br />
<br />
「あ、ワジ！」<br />
<br />
おれは反射的にワジの腕を掴んだ。<br />
おっと、と言いながらワジは振り向く。<br />
おれが再度注意しようと口を開く前にワジが先に口を開いた。<br />
<br />
「珍しいね、ロイドがカジノにいるなんてさ」<br />
「･･･ちょっと用があって。まあそれは良いだろ。とにかく･･･」<br />
「ふうん、今女の子に囲まれてるあの彼と関係あるの？」<br />
<br />
言われてすぐ表情が硬くなるのが分かった。<br />
さすがに、目敏い。<br />
<br />
「ワジには関係ないだろ」<br />
「関係大有りだよ」<br />
<br />
ワジは大げさに腕を開く。<br />
<br />
「僕はロイドの事好きだからさ」<br />
「あのな･･･、ワジの冗談に付き合ってる暇はないんだ」<br />
「ふふ、本当なのに。余程彼が気になるんだね」<br />
<br />
図星を突かれておれは言葉を失う。一瞬のよどみの後、今度はワジがおれの腕を掴んでくる。<br />
ワジは真剣な表情に変わって、おれを見据えてくる。その眼差しに体が縫いとめられた。ワジは何か言いたいことでもあるみたいにおれにゆっくり近づいてきて至近距離で囁く。<br />
<br />
「彼とどういう関係？」<br />
<br />
ワジの目が猫のように細まる。笑っているが笑っていない。<br />
関係･･･と問われ、ビク、と身が竦んだ。またさっきのランディの言葉が繰り返る。<br />
<br />
「キスした？」<br />
<br />
顎を取られる。<br />
<br />
「それともセックスした？」<br />
<br />
腰に腕が絡む。<br />
受付のチェリーがこっちを見て、おれ達の有様に驚いている。<br />
おれはワジの行動に目を白黒させて、何も出来ずにいた。<br />
視界の向こうのランディは振り向く気配もない。おれがいる事に気づいてはいないらしい。<br />
ワジは唇を形作って、次の言葉のために息を吸い込む。<br />
<br />
「それとも、───･･･ふられちゃった？」<br />
<br />
くすくす笑いながらワジはおれの体を抱きすくめる。<br />
ふられた･･･、その言葉に気が動転して抵抗できなかった。<br />
周りの目を何も気にしない風で、そのままおれにワジの唇が寄って来た。<br />
唇に息の湿りを感じたところでおれは我に帰る。<br />
<br />
「何するんだよ！？」<br />
<br />
さすがに驚いてワジの体を突き飛ばした。<br />
少しよろめいておれから離れるとワジは舌なめずりをする。<br />
周りを見ると、しかし、皆それぞれの楽しみに興じているらしくおれ達を見ていたのは受付のチェリーくらいだった。<br />
<br />
「残念」<br />
<br />
ワジはにこりといつもの笑顔でおれに応える。<br />
<br />
「ねえ、彼に用ならあと1時間は待つんでしょう？」<br />
<br />
何でワジが知っているんだろう。<br />
いぶかしんだ眼差しを向けると、簡単に回答が帰ってきた。<br />
<br />
「よくここで彼とも遊ぶんだ。ロイド、知らなかった？」<br />
<br />
知らない。おれはランディの交友関係に関心がなかったわけじゃないけれど、聞きすぎてはいけないと思っていた。<br />
ランディがそれで離れていく気がしていたからだ。<br />
思えばそんな事くらいで壊れてしまう脆い関係だったのだ。<br />
<br />
「最近彼、上機嫌でさ。イイ遊び相手が見つかったんだって？」<br />
「････な、･･･っ」<br />
<br />
それは、誰のことだろう。<br />
考えたくない。<br />
<br />
「ふふ、体の具合から反応から、凄くイイって自慢していたよ」<br />
<br />
ただね、とワジは言う。<br />
<br />
「遊ぶには重たいって」<br />
<br />
またワジは笑った。<br />
ランディの背中が視界に入る。<br />
嘘だろ。ランディがそんなことを触れて回ってたなんて。<br />
それ以前に、遊び？じゃああの晩から、ずっとそのつもりで？<br />
<br />
おれはたまらず駆け出す。ワジの制止を振り切って女の子の群れの中のランディに詰め寄った。<br />
<br />
「ランディッ」<br />
<br />
ランディは掴まれた腕に驚いておれの方を向く。<br />
表情はいつもどおりへらりと笑っていた。<br />
<br />
「何だよ、緊急の要請でも入ったか？」<br />
<br />
さっきの事などまるで無かったかのように俺にそう問う。<br />
変わらない素振りが胸を刺した。<br />
<br />
「聞きたい事があるんだ」<br />
「お前なあ･･･今良いところなんだけど･･･急ぎじゃねえなら後にしてくれ」<br />
<br />
ランディは面倒くさそうに頭を掻く。<br />
椅子から立ち上がって、おれを見下ろすランディは少し不機嫌な顔で見ていた。<br />
周囲の女の子達が何事かとざわつく。<br />
<br />
「ロイド、それ以上聞くなら場所変えた方が良いんじゃない？」<br />
<br />
いつの間にか後ろに立っていたワジが言う。<br />
それを見てランディがあからさまに嫌そうな顔をした。<br />
大体の事情を察したのか、また頭を掻いた。<br />
<br />
「ワジ･･･お前、こいつに何か吹き込んだな」<br />
「嫌だなあ、僕はありのままを伝えただけだよ」<br />
「チッ、しゃーねえな。場所代はお前が持てよ」<br />
「分かってるって」<br />
<br />
ワジはにこにこ笑ってランディと会話していた。<br />
おれだけがそれについていけない。<br />
話すならミレニアムで良いだろ。ランディはそう言って、周囲の女の子達に謝罪していた。<br />
<br />
<br />
おれだけかもしれないが空気が重たい。<br />
どういうわけかワジも一緒になってミレニアムに来ると言う。<br />
なぜかワジはおれとランディの間に入っている。間を保つように、間を裂くように。<br />
おれはランディのことが気になって何度も顔を見たが目が合うことは無かった。合ったとしても言葉は恐らく出てこないだろうけど。<br />
ミレニアムのカウンターでワジが支払いを済ませている間、おれはランディに何か言わなければと思った。けれど、言葉は色々浮かんできては消える。<br />
ランディとの間に流れる沈黙がこんなに苦しいのは今まで無かった。<br />
沈黙も会話も心地良かったのに。この人の空気を感じるだけで幸せだったのに、今はこの存在が苦しい。なのに求めている。<br />
無意識に身を寄せそうになる。縋ろうとする。<br />
視界の端に映った手を取ろうとしたところで、ワジがこちらに向かってきた。<br />
<br />
「2階の右手の部屋だって。行こう」<br />
<br />
ワジはおれに手を差し伸べる。<br />
手を取るなんて出来なかったのでおれはただうなづいた。ワジは苦笑して手を下げた。<br />
階段を上る音だけが響く。誰も喋らない。<br />
続く沈黙もある程度続くともう慣れていく。<br />
いつもなら軽口をたたくランディも、ワジも、何も喋らない。<br />
様子を見れば、ランディは面倒そうに、ワジは思案顔で、何をか考えているみたいだった。<br />
<br />
<br />
部屋に着くとランディは入り口を背に立ったまま、おれはワジに手を引かれて一緒にベッドに腰掛けた。<br />
<br />
「さて&hellip;、とりあえず何から話そうか？」<br />
<br />
ワジが口火を切る。沈黙が長かったせいか、喋り始める前に少し咳払いをしていた。<br />
ランディは足をカツカツと鳴らして落ち着かないようだ。苛々しているようにも見える。<br />
<br />
「お前が仕切るもんでもねーし、正直俺から話す事なんかないんだけどな」<br />
「でもロイドは納得してないみたいだよ？」<br />
<br />
ねえ？と振られて、おれは反射的にうなづく。<br />
<br />
「納得って&hellip;、いこうがいくまいが俺にはどうにも出来ねえ話だろ」<br />
「どうして？」<br />
<br />
と尋ねたのはワジ。<br />
ランディはワジの問いには答えずおれに向かって顔を向ける。<br />
ああ、好きな人の顔が見れる。と、安堵した。<br />
<br />
「あのなあロイド、さっきも言ったけどな男相手にマジになるなよ。お互いちょっと気持ち良い思い出来て、充分だろ？」<br />
「納得いかないんだ････」<br />
「･･･じゃあどうすれば良い？お前が本気だって言って諦められなくても俺は応えてやれねえしな」<br />
「そうじゃない、何で騙したんだ」<br />
「ああ･･･そこか」<br />
<br />
ランディはくすくす笑う。<br />
<br />
「だってお前俺のことそういう目で見てたろ？」<br />
「気づいてたのか･･･？」<br />
「すげなくするにゃちっと惜しかったんでね」<br />
「惜しかった？ただそれだけ？」<br />
「ま、平たく言えば」<br />
<br />
軽くウィンクをして見せる。<br />
胸に手を当てて、ランディはおれを笑う。<br />
<br />
「俺を責めるならいくらでも責めれば良い。お前にはその権利があるさ。<br />
でも、だからって何かが変わるわけじゃない。俺はお前に対して体以上の関係は持たない」<br />
<br />
ランディとの間にある齟齬は恋愛感情の有無だ。<br />
それは幾重にも絡み合って解きようが無いようにも見えるし、平行線でいつまでも交わらないようにも感じる。<br />
復讐しようとか、ランディが嫌いだとか言えないおれは、もうランディの言に従うしかないのだろうか。<br />
それでも良いのかもしれない。好きな人に抱いてもらえるなら、それだけで。<br />
ランディが俺をそういう目でしか見ていなくても、おれが好きでいればそれで良い。<br />
<br />
「･･･良いよ、それでも」<br />
<br />
へえ、とランディは意外そうな顔をした。<br />
おれが納得するとは思っていなかったらしい。<br />
おれだって完全に納得したわけじゃない。けれど、離れることも出来ないのなら選択肢は一つしかない。<br />
<br />
「そうかい。ま、俺としてはありがたいけどな。折角の&quot;遊び相手&quot;が逃げちゃつまらねえし」<br />
<br />
そう言ってランディは早々に部屋を出て行こうとする。<br />
<br />
「･･･話はまとまったみたいだね」<br />
<br />
黙って聞いていたワジが声を発する。<br />
ワジはランディを睨む。<br />
<br />
「ロイドの事は本当にそれで良いの？」<br />
「良いって、何が？」<br />
「例えば僕がロイドと付き合ったりとか」<br />
<br />
え、とおれが言葉にする前にランディが早口でまくし立て始める。<br />
<br />
「かまわねえよ、好きにしろ。他の男とヤッたからって減るもんでもねえし。あでも病気だけは勘弁」<br />
<br />
じゃあな、と言ってランディは部屋を出て行く。<br />
後にはおれとワジだけが残されて、部屋にはランディの残り香もない。<br />
ランディの最後の言葉にまた胸が痛む。腹から内容物がせり上がって来るような感触に口を押さえた。まるで物のような扱いだ。<br />
おれは性的な部分で、ランディに人間として見られていない。<br />
<br />
「ねえ、あそこまで言われてロイドはそれでも彼と関係を持つの？」<br />
<br />
おれはぎゅうっとズボンをにぎりしめる。<br />
良いわけない。<br />
<br />
「でも、それ以外に選択肢なんかないだろ」<br />
「なくもないよ&hellip;」<br />
<br />
ワジはそう言うと、おれの体を抱きしめる。抱きつくと言った方が正しい衝撃によろめいてそのままベッドに沈んだ。<br />
ワジはおれの胸の上に顔を乗せて服の上から体をさする。なにするんだ、とおれが問えば、ワジはらしくもなく切なげに眉を寄せておれを見る。<br />
おれが身を起こそうとするのを体重をかけて押しとどめてくる。<br />
おれは頭の片隅でランディのことばかり考えていて、ワジに抱きしめられていることが夢のようで、だから何の抵抗もしなかった。<br />
抵抗のないおれに、ワジの顔はますます辛そうに歪む。<br />
<br />
「僕はロイドをそんな顔にしたりしないよ」<br />
<br />
そんな曇った顔になんて。と、ワジは言う。<br />
今自分がどういう顔をしているかなんて考えてもみなかった。<br />
言われてみれば、ずいぶんと頬の筋肉が下がっている気がする。<br />
けれど辛そうなのはワジも同じじゃないのか。<br />
<br />
「顔が曇ってるのはワジの方だろ&hellip;どうしたんだ」<br />
「こんな時でも人の心配？と言うか鈍感なだけ？」<br />
「何言ってるんだ」<br />
「さっきも言ったよね。僕はロイドのことが好きだって」<br />
<br />
あれ、真剣なつもりだったんだけど。<br />
ワジの言葉に何の動揺も出てこない。おれはランディが好きで、だから心なんか揺すぶられることもない。<br />
<br />
「僕が、変えてあげる」<br />
「何を」<br />
「彼との事。全部、僕と会うためだったって思うくらいのことはする」<br />
「&hellip;出来るの」<br />
<br />
出来っこない。<br />
<br />
「ロイド、僕を見て」<br />
<br />
金色の猫のような瞳がよじ登ってきて、おれを真上から見下ろす。<br />
端正な、女性のような顔。女性&hellip;ランディは今頃どこかで女の子と遊びに興じているだろうか。<br />
<br />
「僕の事だけ考えて」<br />
<br />
ランディなら言わない言葉だ。<br />
彼なら、何と言うだろう。何も言わないかもしれない。好きだ、愛してる以外の睦言なんか聞いたことがない。ああいった類の言葉なんてものは言われた分重みを無くしていく。<br />
それに気づくのは遅すぎたけれど。<br />
<br />
「無理だよ&hellip;」<br />
<br />
ランディのことを考えないなんて出来ない。<br />
<br />
「そんな泣きそうな顔、しないでよ」<br />
<br />
ワジは困ったように見つめてくる。<br />
それからおれの上着のチャックに手をかけた。<br />
するする降りて行くそれを見ながら、これから行われる行為を悟った。<br />
ワジもおれの体を求めるのか。何が良いんだ。おれの。<br />
体だけ求められることになら慣れてしまったかもしれない。<br />
あの一瞬の快楽は、確かにいつまででも貪っていたくなる。<br />
<br />
「ワジも、おれのこと簡単に体を明け渡すやつだって思ってるの」<br />
「まさか」<br />
「じゃあ何で服脱がすんだよ」<br />
「僕はロイドのことが好きだよ。だから欲しい。心も体もってやつ」<br />
「だったら、おれの了解無しに何でするんだ？」<br />
<br />
ワジは金色の眼を眇めて、脱がそうとしていた手を止める。<br />
<br />
「服を脱いだからってする事は一つじゃない」<br />
<br />
それを教えてあげる。<br />
<br />
ワジの声色はひどく優しい。らしくなく熱が篭っていて、疑心暗鬼になっているおれの心をわずかにだけれど溶かした。<br />
<br />
「今ロイドはね、ここに火傷してるんだよ。それも随分重症な」<br />
<br />
ここ、と言って胸に手を当てる。<br />
火傷と言ったそこをまるで慰撫するように優しい手付きが撫でた。<br />
仮初めの優しさでも良い、偽りの愛撫で良い。その手が欲しかった。<br />
もう頑張るなと言って欲しい。<br />
おれは自分でもわけが分からないまま目の前がぼやけ始めるのを感じる。<br />
<br />
「う&hellip;、ふ&hellip;ぅ」<br />
<br />
目の端から下へ、涙があふれて行く。<br />
それに合わせてワジが抱きしめてくる感触は強くなる。<br />
<br />
「ロイド&hellip;」<br />
<br />
ワジの声が耳元を優しく打つ。<br />
決してランディを忘れられるわけじゃない。<br />
でも、今はこの優しい手に縋っても良いだろうか。<br />
こんな中途半端な気持ちでワジに悪い、と思ったけれど、もう自分でもどうにもしようがなかった。<br />
縋りつくものがなければ不安で、ただひたすらに押し潰されてしまう。<br />
こんなに自分は不安定だったろうか。<br />
ワジの背中に腕を回す。その背中は華奢で、いつも抱きしめていたあの虎のように獰猛で分厚い筋肉とは違う、しなやかな猫のようだった。<br />
こうして比較してしまう事さえいけないと分かっているのに。<br />
<br />
「う、く&hellip;ワジ&hellip;、」<br />
「なに&hellip;？」<br />
「&hellip;ふ、ぅ、忘れ、させて、くれる&hellip;？」<br />
「君が望むなら、手伝ってあげる」<br />
<br />
涙で掠れる声をちゃんと拾ってワジはおれの涙を吸い上げる。<br />
<br />
「はぁ&hellip;」<br />
<br />
ずっと鼻をすすり上げる。<br />
<br />
「ランディ、と、ワジを、比較してる、よ、おれ」<br />
「&hellip;まあそう簡単にシフトチェンジできるなら、恋愛で悩むやつなんていないよね。<br />
それに、ロイドは僕が思ってるより、&hellip;繊細だから」<br />
<br />
髪を一房すくい上げてワジは口付ける。<br />
涙が止まらない。いつになれば止まるのだろう。<br />
<br />
「ロイド、脱がして良い？」<br />
<br />
おれは無言でうなづく。もう抱かれても良い。むしろその方が良い、とさえ思える。<br />
おれは自分でも卑しいくらい誘うように身を寄せた。<br />
<br />
「言っておくけど、抱かないからね」<br />
<br />
察したのか、ワジは先ほど自分が言ったことを撤回するつもりはないらしくおれの上着を脱がしながらそう言う。<br />
なんで、とおれが問う前に、ワジは強い眼差しを見せた。<br />
それに言葉を失うとワジはくすくす笑っていつものような顔をする。<br />
<br />
「まず第一段階から、だよ。ロイドは何個も飛ばして最後に行っちゃったようなものだから」<br />
<br />
ワジはズボン越しにおれの下腹部に触れる。<br />
<br />
「あ････」<br />
<br />
もう勃ちあがりかけているなんて。恥ずかしくなって目をそらすが、ワジは何でもないことのようにおれのそれを軽く扱く。<br />
おれが軽く呻くとワジは少し複雑そうな顔をする。<br />
その表情は、まるでおれの体が感じやすい事を安易に喜べないようで。<br />
<br />
「抱かれることに慣れちゃってるんだね･･･」<br />
「ふ･･･、く、そう、かな」<br />
「彼に慣らされたのかと思うと･･･少し、複雑、かな」<br />
「たぶん、もともとだよ･･･ランディは最初からおれの体質に喜んでたし」<br />
「そうなの･･･？まあ、彼の話はやめておこうか」<br />
<br />
もっともだった。<br />
今は、忘れたい。彼のことも、自分の想いも。<br />
ワジに先を促すとするすると服を脱がし始め、なまめかしい手付きでおれの体のいたるところを触る。<br />
インナーの下に入り込んだ手は胸の突起を掠め、そうかと思うとへその辺りを撫でる。<br />
リズミカルに繰り返されるもろもろの愛撫がもどかしさに満ちていて、おれは体をよじった。<br />
流れ出てくる涙は、いつの間にか情欲から来るものに変化していた。<br />
<br />
「ワジ･･･あんまり、そういうのは･･･」<br />
「ふふ、嫌い？こういうの」<br />
「嫌いって言うか･･･」<br />
「性急なのは損だよ」<br />
<br />
笑ってワジはおれのインナーも脱がすと、伸ばしたわきの下をべろっと舐める。<br />
くすぐったさと妙な感覚に身を震わせると、ワジは気を良くしたのかさらに舐め続ける。<br />
ぺちゃぺちゃと唾液のぬめる音が響き渡る。こんなところは攻められた事がないだけに、おれはその言いようのない感覚をどう処理しようかと困惑した。<br />
<br />
「ワジ、･･･こういう事はしないんじゃなかったのか･･･？」<br />
「服を脱いだからってする事は一つじゃないって言ったでしょう？」<br />
「でも、これじゃあ、」<br />
「感じる？」<br />
「･･･うん･･･」<br />
「良いよ、好きなように感じて？」<br />
<br />
ワジはそう言うとおれのズボンのベルトに手を伸ばした。<br />
<br />
「あ･･･、」<br />
<br />
かちゃかちゃベルトを外す音が聞こえ、するするとそれは下がっていく。下着にかかった手を一瞬止めようか逡巡している間にあっさり取り払われてしまった。<br />
おれはいつものペンダント以外何も身につけていない状態になる。羞恥心は不思議と湧いてこなかった。ワジも自分の服を脱ぎ始めたからかもしれない。<br />
ランディはそう言えばズボンを脱ぐだけの方が多かったから体を見る機会なんてあまり無かった。<br />
ワジは服を全部脱ぎ捨てるとおれの横に寝転がってきた。その体躯は思っていたより筋肉が張り付いていて、肩や胸板などは華奢な印象もあるが、あの身体能力を見せるだけのことはある。<br />
体格的にはおれとそう変わらないかな、などと思った。<br />
横に寝そべっていたワジがおれの頬に指を伸ばす。涙の筋を拭きながらそっと顔を近づけてきて、触れるだけの口付けをする。それを頬に額に首筋に、労わるように優しく繰り返す。やがて唇に戻ってくると今度は息を吸い込むように深く口付けてきたが、舌は入ってこない。ランディはキスの時は大抵舌をねっとり絡ませてきていたからこういうのは初めてだった。<br />
そもそもランディとキスをした回数なんて数える程度だったけれど。<br />
ワジはぼんやりそんなことを考えるおれの乳首をきゅっとつねった。軽く鳴くとワジはおれの顔をじっと見る。<br />
<br />
「また、考えてる？」<br />
<br />
ほのかな嫉妬とも取れるような口調で言う。<br />
おれはその様子が何か可愛くて、笑ってしまった。<br />
<br />
「はは&hellip;、うん、考えてた&hellip;」<br />
<br />
謝ろうかと思ったがそれも違う気がして、おれが胸のうちを素直にさらけ出すとワジは笑いながらまた目元にキスをした。<br />
それは素直に話してくれてありがとうと言うことだったかもしれない。<br />
簡単にシフトチェンジできたら恋愛で悩む奴なんかいないとワジは言ったのだ。それなら、自分に無理をさせないでいた方がワジにとっても良いのじゃないかと思った。<br />
ワジを前にすると、不思議とそのままの自分でいて良いような空気が流れる。ランディの前では背伸びをしていた分それはホッとする。<br />
<br />
「彼のことをすごく想ってるんだね」<br />
「･･･うん。気持ちはランディのところにいるまま、かな」<br />
「でも僕といるの、嫌じゃないでしょう」<br />
<br />
ワジは何故か自信あり気にそう言った。間違っては無いのでうなづいた。<br />
<br />
「ロイドの空気がね、さっきよりずっと安定してる気がする」<br />
「そう？」<br />
「気づいてない？もう泣いてないんだよ」<br />
<br />
気づかなかった。いつの間に止まっていたんだろう。<br />
ワジは嬉しそうに目を瞑っておれを引き寄せる。抱き寄せられた体には甘い香りがほのかに香る。<br />
上質な果実酒の香りだったかもしれない。トリニティの香りだ。<br />
<br />
「ねえ、ロイド、君は忘れたいと思ってるかもしれないけど忘れるなんてしなくて良いんだよ。<br />
人間ていつかは思い出しても笑えるように出来るんだから･･･僕はその手伝いが出来ると思う」<br />
<br />
甘い囁きだった。おれはランディから離れることなんか絶対出来ないししないだろう、だからワジにいくら好きと囁かれても傾かないし、ましてそんな状態で付き合うなんてワジに悪いと思っていたけれど、ワジはそれでも良いのだと言う。<br />
ワジはランディとは違う意味で心に潜り込んでくる。<br />
心の硬くこっていた部分を優しくほぐされていく。<br />
<br />
「おれ、自分の気持ちが、分からないんだ･･･」<br />
「どういうこと？」<br />
<br />
ワジはおれの髪を撫でる。<br />
<br />
「ランディのことは忘れられないのに、ワジを欲しがってる」<br />
<br />
上手く伝わったか分からないが、ワジはそうっと口付けてきた。おれを求めるように。<br />
<br />
「ふふ、教えてあげようか」<br />
<br />
ワジの含み笑いにおれは疑問符を並べる。<br />
<br />
「ロイドはね、欲を表に出そうとしてないんだよ」<br />
<br />
またおれが疑問を浮かべると、ワジは嬉しそうにおれの背中を撫で回す。<br />
肩甲骨の溝をなぞられてぞわぞわとしたものが背筋を這い登る。つめ先で掠められる動きに反応して口からはかすかに声が漏れた。<br />
<br />
「忘れられない彼がいて、甘やかして優しくしてくれる僕がいて、その両方を欲しがってる」<br />
「そんなこと･･･」<br />
「責めてるわけじゃないよ？人間なんてそんなものだから」<br />
「でも、おれは選ばなきゃいけないんだろう？」<br />
「欲を張れば？僕も彼も欲しいってそう言えば良い」<br />
「ワジはそれで良いのか･･･？おれがランディを想っていても気にならないのか？」<br />
「まったく、と言ったら嘘になるけど、まあ、僕はロイドが自由でいてくれる方が良い」<br />
「自由･･･」<br />
「そう、何でも人間てある枠組みや倫理観やこだわりに支配されるけど、そういうものに縛られない心の自由って言うの？そんな中で生活できたら、例えば辛いことでも楽しいんじゃないかな」<br />
<br />
ワジの言わんとすることは何となく分からないわけじゃないが少し難しい。<br />
ランディを好きでいながら、ワジも求める。許されないだろうと理性は訴えるが、ワジの囁きに負けそうになる。心がこんなに弱っている時にそれは反則だろうと思った。<br />
<br />
「求めて良いのかな･･･」<br />
「良いんだよ。僕はロイドの心が安定するなら何だって良い」<br />
「ワジはどうしてそこまでおれに、その、尽くそうとするんだ？」<br />
「言ったでしょう？好きだって」<br />
「好きだったら、独占したいんじゃないのか？」<br />
<br />
おれは少なくとも同時に何人ともと付き合う恋人なんて考えられない。<br />
ワジは苦笑して、おれの頭を撫でた。<br />
<br />
「まあね」<br />
<br />
短く本音を漏らす姿に胸が痛んだ。<br />
<br />
「でもさ･･･、ロイドが消化不良のまま僕と付き合っても楽しめないから」<br />
「ランディとの事が片付くまで待つつもり？」<br />
「予言してあげようか。必ずロイドは僕のところに来るよ」<br />
「そう、かな」<br />
<br />
そう出来たら、良いな、と思う。自分を想ってくれる人の方が良いに決まっている。<br />
けれど人の心は理屈ではない。<br />
そうして無限にループして行く感情の中で、おれは一つ決めた。<br />
<br />
「ワジ、図々しいお願い、しても良いかな」<br />
「ロイドのお願いなら、何でも」<br />
「───･･･抱いてくれないか」<br />
「抱いてるけど？」<br />
<br />
冗談めかして言う。<br />
<br />
「ワジは嫌？」<br />
「そうだね･･･、でもロイドがしたいなら、する」<br />
「･･･ありがとう」<br />
<br />
その言葉が最後だった。<br />
ワジの手は明確に、意思を持って動き出す。<br />
抱いて欲しいといったのは、ランディを忘れたいからじゃなかった。ワジを好きになれる気がしたからだ。<br />
体の繋がりは恐ろしい。抱かれるほど心の距離は明確に近づき、そして壊れて行く。ワジとはどうなのだろう。壊れることの無い体の繋がりはあるのだろうか。それも知りたかった。<br />
<br />
ワジの指はおれの背中をなぞる。背筋を中指でなぞり、首筋に口付けを落とし、体を密着させてくる。<br />
おれはワジの首や背中に腕を回した。しなやかな筋肉のついた体は官能的に美しい稜線を描いている。背中にわずか傷跡を感じた。彼もランディと同じ、傷を持つ人間なのだろうか。ワジの過去は良く分からない。話してはもらえないだろうから尋ねる気にはならないけれど。<br />
背中を撫で回す手は段々下に下がり腰のラインをなぞりながら茂みの中にたどり着いて屹立していたおれのものをまさぐる。ワジは頭をかがめて胸に唇を寄せていた。<br />
優しくねぶる舌の感触に身を震わせ、下肢を愛撫する指の動きに身をくねらせる。ワジの動きの一つ一つが丁寧で壊れ物を扱うようにそうっとしていて、おれは自分でも知らないうちにまた泣き出していた。<br />
<br />
「どうして泣いてるの？」<br />
<br />
ワジは問う間も熱を扱き続ける。おれは口からだらしなくよだれを垂らし、ワジの頭を抱えながら身をくねらせ喘ぐしか出来なかった。<br />
扱かれる熱から段々とぬめりを帯びた体液があふれ出て、粘りがワジの手を濡らした。息が上がる。吐精が近い気がする。<br />
<br />
「ね、何で泣いてるの？嫌？」<br />
<br />
ワジは労わるように上目遣いにおれを見た。<br />
嫌じゃないんだ。でも自分でも処理しきれない感情があふれ出してきて何と言葉にすれば良いのか分からない。<br />
<br />
「言葉にならないんだ&hellip;」<br />
<br />
また涙が目の端に伝って枕を濡らす。<br />
おれはワジの頭をいっそう強く抱きしめた。苦しいよ、と声が聞こえたので腕を緩めると彼は猫のようにゆっくり伸び上がっておれと視線の位置を合わせる。<br />
ワジはおれの腰に腕を絡め、深く深く口付ける。先ほどは入ってこなかった舌がぬるりと進入して、舌を絡め取る。無い言葉の在り処を探るように、それは歯列をなぞり上顎をたどり、また舌の絡み合いに戻ってくる。<br />
唇の間で響く粘る水音がやけに耳につく。ざらついた舌の感触が腰の奥からぐっと熱を呼び起こして耳からも口からも侵されていく。おれは堪らずにワジの首に腕を回してすがりついた。<br />
ワジも熱っぽくおれの体を手の平で背中や胸を大胆に撫で回した。<br />
ワジのはぁ、という呼吸が聞こえる。湿った声は快楽を求める声に違いなかった。<br />
<br />
「ロイドのその言葉にならない言葉、僕が引き出してあげる」<br />
<br />
ワジはおれの出ない言葉の答えを知っているのだろうか。横向きに向かい合っていた体勢からおれは仰向けにされる。同時にワジが上に覆いかぶさってきて互いの状態をよく確認できた。<br />
ワジのものに目を向けるとはっきりと勃ちあがっていてそれに少しホッとする。<br />
<br />
「僕のこれ、勃ってて良かったとか思ったでしょ」<br />
<br />
おれは苦笑してうなづく。<br />
ふふ、と笑ってワジはゆっくりおれの首筋に吸い付き跡を残しながら喋る。<br />
<br />
「ロイドのあんな可愛い姿見て何もならないわけないじゃない？」<br />
<br />
そのまま胸に唇を滑らせて筋肉の筋や骨の形を確かめるように舐めては吸いついてを繰り返す。<br />
いつの間にか胸はワジに付けられた跡でいっぱいになっていた。跡を残すのは動物のオスがマーキングするような、独占欲の証なのじゃないだろうか。乳首に這う舌を眺めながらぼんやりそんな風に思う。<br />
ワジは、おれが思っているよりずっとおれを求めているのかもしれない。自惚れだろうか。<br />
おれの髪に指を差し込んでかき回しながら、愛撫は続く。胸から腹にかけてをくまなく舌でなぞり、その間片手は熱を扱く。<br />
<br />
「････っ、ワジ･･･」<br />
<br />
限界を感じて呻くと、ワジの舌が下腹部に移った。ねとりとまとわりつく舌の感触に身震いする。先端を甘く噛まれ、そのまま熱全体を口に含まれる。自分でもびくびくと脈打つのが分かるくらい感じて、ワジの髪を掴んだ。力無く髪を握る手をワジは一度撫でてくれた。<br />
<br />
「イく･･･っ、あっ、ん･･･っ」<br />
<br />
ぐっと腰をワジの口に押し付け、押し殺した声で喘ぎながらおれはワジの口内に吐精する。どろりと溢れ出たものをワジは全て飲み込み、顔を上げて舌なめずりする。<br />
<br />
「ご馳走様」<br />
<br />
くすくす笑う。そうして、おれの内股の付け根のあたりにまた跡を残した。<br />
<br />
「際どいところに付けるんだな･･･」<br />
「下まで触りましたって事、残しておいたらロイドが一人でする時も僕のこと思い出すかなって」<br />
<br />
ワジはそう言って今度はおれの尻を持ち上げる。膝が胸に付くくらい持ち上げられたところで、ワジは舌を伸ばす。<br />
<br />
「ワ、ワジ･･･、」<br />
<br />
抗議の声のつもりではなく羞恥のためだった。ランディとする時はいつもローションを使っていたし、ランディがそこを舐めるなんて事は無かったから余計だ。しかも自分の姿がしっかりと目視できる位置で蕾に触れられて胸がぎゅうっと押し潰されそうな快感がくる。ぐにっと押し込まれてくる舌の感触はぬるく柔らかく少しざらついていて官能を呼び起こすには十分だった。<br />
何度も舌が出入りし、その隙間から指が入り込んでくる。ぢゅ、と水音が段々と聞こえ始める。流れ出る唾液が尻の割れ目から背中へと次々伝っていく。<br />
入り込んできた指の一本がくるくると中をかき回す。細く華奢な指の感触。それが内奥の一点を突く。<br />
<br />
「あっ･･･あぅっ･･･！」<br />
<br />
さっき出したばかりの熱はまた膨らみ始め、新たな快楽を待ちわびる。蕾には二本目がきつそうに入り込んできて、先ほど突かれた場所と同じ箇所を突付かれ、何度も体を痙攣させる。口からこぼれてくる唾液を舐め取るが追いつかない。<br />
段々と後ろにばかり意識が集中していき、唾液もこぼれてくる涙もどうでも良くなる。ワジの指が出入りするのを見つめ、上がる息の中おれはむせび泣きながら懇願していた。<br />
<br />
「ほしい･･･よ、ぉ」<br />
<br />
涙がまたぼろぼろ零れた。<br />
<br />
「ロイド･･･」<br />
<br />
ワジは中から指を引き抜いておれを楽な体勢に戻す。<br />
おれの上に重なって深く口付けて唇を離した。右の手に指を絡めて握られたので、それを握り返すとワジは嬉しそうに目を細める。<br />
<br />
「僕の名前、呼んで？」<br />
「ワジ･･････」<br />
「もっと」<br />
「ワジ、」<br />
「ロイド･･･好きだよ」<br />
<br />
心臓が跳ねる。おれは、言葉を失う。言ってしまったら良いのだろうか。<br />
逡巡していたつもりが、言葉は心より先に飛び出した。<br />
<br />
「すき･･･」<br />
「僕も、好き」<br />
<br />
何度もその言葉の応酬は続く。自分が分からない。記憶の中のランディの姿が霞む。<br />
金色の目があの碧い瞳と重なり、二重になって、段々と消えうせて行く。<br />
ワジの目の色だけがおれの瞳に残る。<br />
それが何を意味しているのか、理性では分からない。感情はとっくに理解しているのに。<br />
体で示すようにおれはワジの肩を引き寄せてワジの熱に触れる。先端からは先走りが溢れてぬめっていた。<br />
<br />
「っ･･･ロイド･･･」<br />
<br />
ワジは体を起こして、あぐらをかく。合わせて起き上がったおれを向かい合わせに抱き寄せて膝立ちにさせた。つうっと指が蕾に伸びて人差し指と中指が入り口が開く。<br />
意図を察して腰を落とすと、ワジの熱の先端に蕾が当たる。何度か空回る挿入を繰り返しておれの蕾は貪欲にワジを食らった。<br />
<br />
「ん、ふ･･･あああ･･･っ！」<br />
<br />
おれは目を瞑り甲高く嬌声を上げ、ワジの体にしがみつく。内部を圧迫する熱がビクビクと動いている。<br />
熱を受け止めた衝撃が和らいで、目を開けると、ワジは苦しそうに眉をひそめていた。<br />
<br />
「ワジ、痛い･･･？」<br />
「違う、よ」<br />
<br />
声は明らかに苦しそうなのに、ワジは否定して、我慢できないようにすぐ腰を揺すぶり始めた。<br />
<br />
「あっ！まだ･･･んっ･･･！」<br />
<br />
内部が熱の感触に慣れるまで待って欲しいと思ったけれど、ワジの余裕の無い顔を見ておれはそんなことどうでも良くなった。ワジを食らっている愉悦が駆け巡る。<br />
抜けていく感触に体が熱を帯びて、快楽が渦巻き、入ってくる感触に総身を戦慄かせる。<br />
咽喉を反らすとそこにワジが軽く歯を立て噛み付いた。噛み千切られる痛みが快感の中にない交ぜになって体中を駆け巡る。体が全て性感帯になったような感覚を覚えるほど、何もかもが感じる。<br />
汗が額や胸元から溢れ落ち、密着したワジの汗と混ざって互いの肌をぬめらせる。<br />
意識が快楽だけにさらわれていきそうな中、ワジは何度も耳元でおれの名前を呼び、それが唯一おれをワジのところに繋ぎ止める。<br />
嬉しかった。<br />
<br />
「ワジ･･･あ、っ、気持ち、いい？」<br />
「良いよ、すごく。一度抱いたら、忘れられない、くらい」<br />
<br />
ワジは少し息を切らして、抜き差しを繰り返す。おれも無意識に自分から腰を振っていた。肉の弾む音が段々と早くなっていく。<br />
<br />
「ああっ、もう、だめ、だめぇっ、出ちゃ･･･ぅ」<br />
「ロイド･･･っ、僕も･･･」<br />
<br />
ワジはそう言って中から熱を引き抜こうとする。<br />
<br />
「まっ･･･何で？」<br />
「何でって･･･中で、出したら、ロイドが、大変でしょ･･･」<br />
「いい、いいから･･･中で、出して･･･っ」<br />
<br />
おれは抜けかかっていたそれに体重をかけてまた飲み込む。<br />
<br />
「うぁ･･･っ、んっ、ふっ･･･あ」<br />
<br />
ワジは少し戸惑った顔で腰を揺らしだす。互いに頬がほんのり赤くなって息が弾んだ。<br />
再び繰り返される抜き差しに快楽が極まる。おれの目は見開いて宙を仰ぎ、指がすがりつく物を探してワジの背中に爪を立てる。痛みをこらえるような声とおれを呼ぶ声が交互に聞こえ、耳を打つ。<br />
<br />
「ロイド･･･！」<br />
<br />
ワジが一際強くおれを抱きしめ、内奥の一点を深く刺して、止めを打つ。<br />
目の前に火の花が散る。閃光色に染まる視界、内部に放たれた熱、吐精する自分自身。何もかもが快楽の前に融解し消えて行く。<br />
<br />
「････っ───！」<br />
<br />
声も出ない激しい絶頂に体だけが痙攣を起こし、胸が熱くなる。もう涙腺が崩壊したように涙が止まらなくなっていた。<br />
肉体のみならず精神が満たされていく感覚は今までに覚えが無い。ランディとしていた時と、一体何が違うんだろうか。<br />
おれは余韻でひくつく体をワジの体をに預けた。<br />
<br />
「･･･、ロイド･･･」<br />
<br />
ワジは愛しげな手つきでおれを抱きしめ、腕の中にしっかりと閉じ込める。<br />
優しい、腕だった。<br />
おれは気づいていなかったが、もうこの時ランディのことはすっかり頭から抜け落ちていた。<br />
ただおれを抱くワジの体温だけが真実おれを満たした。求めていたものを与えられた気がした。<br />
<br />
「好きだよ」<br />
<br />
ワジの囁きは、甘く耳朶に残った。<br />
<br />
<br />]]>
    </description>
    <category>楔</category>
    <link>https://cherryhoney.blog.shinobi.jp/%E6%A5%94/%E6%A5%94%EF%BC%92</link>
    <pubDate>Fri, 01 Jul 2011 04:52:56 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">cherryhoney.blog.shinobi.jp://entry/132</guid>
  </item>
    <item>
    <title>楔１</title>
    <description>
    <![CDATA[<br />
良い遊び相手が出来たと思った。<br />
俺を気にしてる素振りに気づいてから、最初はどうあしらったものかと思っていたが、すげなくするには少しもったいない相手だと思った。<br />
最初は可愛いなと単純に思っていたのだけれど、抱いてみたら感度は良いし、俺に対して奉仕する姿が一生懸命なところも良かった。<br />
男なんて尻まで毛だるまだったりすね毛なんかがあったりで萎えるものだが、一緒にシャワーを浴びて体毛が薄いのは確認しておいた。<br />
まだ未発達な部分のあるしなやかな手足。女のように傷一つない滑らかそうな白い肌。シャワーの熱で上気してうっすら赤くなっている関節や頬が情欲をそそった。勃起しないように抑えるのが結構しんどかった。<br />
これなら十分に抜けるな、と思って一度自分の部屋でロイドのことを考えて抜いてみた。特に問題もなさそうだったので、後は実行だけだ。<br />
<br />
酒の力を借りるのが手っ取り早いと、俺の部屋で口当たりは良いがきつめの酒を飲ませまくった。<br />
酔っ払ってあまり思考の回っていないロイドをベッドに誘い込むのはたやすかった。<br />
後はちょっと囁いてやれば良いだけだ。<br />
<br />
『愛してる』<br />
<br />
ロイドは何も分からない顔で、けれどその言葉の意味を何とか理解したらしかった。<br />
<br />
『お前が欲しいんだ』<br />
<br />
その言葉に戸惑いを見せたが、酔っているせいか流されるまま、ロイドは俺の口付けを受け取った。<br />
乾いた唇を舌でなぞり、てらりと光ってぬめりを持った唇を割る。抵抗も何もしない舌を絡めて吸い上げると、それだけでロイドの体が戦慄く。<br />
鼻にかかった声が何度も聞こえた。感じやすいな、と思った。<br />
<br />
『ランディ･･･おれも、好きだけど、その、こういうのは、まだ･･･』<br />
<br />
酔ってるくせに抵抗するのかと思った。<br />
ちょいと面倒そうなのが玉に瑕だが、睦言を囁いてやれば何の事はないだろう。<br />
<br />
『ロイド、お前が好きなんだ』<br />
<br />
正確にはその体、だけどな。<br />
俺の演技はロイドの躊躇いを打ち破った。<br />
ランディ、と俺の名前を呼んで首に腕を回してくる。<br />
俺はその有様に軽く舌なめずりをして上着を脱いだ。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
「最近ロイドって雰囲気変わったわね」<br />
「そうか？」<br />
<br />
お嬢は東方人街の土産を口に含んだままで、彼女にしては珍しく行儀の悪い聞き方だと思った。<br />
俺が昨日買ってきた土産好評みたいだな、もうラス一だ。<br />
それをつまもうかつまむまいか、悩んでいるお嬢にすすめると、女の子はカロリーを気にするのよと言われた。<br />
そう言いつつ、なんやかんやでラスト一個はお嬢の腹に収まる。<br />
そうしてお嬢は今晩の予定の話をし始めた。<br />
今日は実家に戻って愛犬に会いに行くだとか、実家のメイドがドジっ子だから様子を見に行きたいだとか。実家がらみが多い。<br />
<br />
「今晩ランディはどこか行くの？」<br />
「カジノ、裏通りの女の子と行く約束してるからな」<br />
<br />
お嬢は俺の顔をじーっと見てからやっぱり勘違い？なんて言う。<br />
何の話だ。<br />
続けてお嬢が喋り出す。<br />
<br />
「話、戻すけど、なんか最近のロイドって、目がキラキラしてるって言うか、その、適当な言葉が見当たらないんだけど、綺麗になったわよね」<br />
<br />
俺は綺麗という言葉を転がす。そうかもな。まあ俺は出会った当初から可愛いと思ってたけどな。<br />
でもお嬢は綺麗という単語も妥当でないのか、綺麗って言うか･･･と独り言を<br />
呟く。<br />
<br />
「色っぽくなったって事か？」<br />
<br />
話し半分にホットショットを読んでいた。綺麗で色っぽいおねえちゃんを見てい<br />
たので、あてずっぽうにそう言った。と、お嬢の目の色が変わる。<br />
<br />
「そう！それ！」<br />
<br />
おお、凄まじい食い付きだな。<br />
そんなテーブルから身を乗り出さなくても。<br />
てかお嬢顔近いんだけど。<br />
<br />
「やっぱりもしかしなくてもランディの影響なんじゃない！？」<br />
「は、何、俺？」<br />
「ロイドに一体何したのよ？」<br />
「だーから、何の話だ」<br />
「あれ、間違いなく恋よ！」<br />
<br />
話が噛み合わない。<br />
てか、出たよ、女は好きだね色恋話が。しかも他人の色恋にはとにかく興味津々だ。<br />
俺がロイドと付き合ってる？体だけな。<br />
あいつは本気みたいだけど、俺の知った事じゃない。<br />
ロイドのやつが色気ね。<br />
まあ確かに抱く度に艶っぽさが増してる気がするけどな。<br />
毎日のようにヤッてるけど、何でも俺の言う事聞くんだもんな。<br />
昨日の晩だって俺が後ろからが良いって言ったらおずおず尻を出すんだから、たまらねえよな。恥ずかしいとかまどろっこしい事言って興をそがないってのもポイントが高いな。<br />
それに中の具合もなかなか。ケツなんて入り口以外はがらんどうなもんかと思ってたんだけどな。中でうねるような感触もあるんだな。すげえよ、アレは。<br />
あれだけ生真面目でエロい事なんか興味無さそうなのに、スキモノな体してると思う。<br />
やべ、思い出したら勃ちそう。<br />
<br />
「誰か女の子紹介したの？」<br />
<br />
俺が黙り込んで一人昨日の回想をしているのをいぶかしげに思ったのか、お嬢は見当違いの事を聞いてくる。<br />
<br />
「期待を裏切るようだが俺は野郎に女の子紹介したりしねえぞ」<br />
「そう、じゃあセシルさんの言う通りなのね」<br />
<br />
意外な人物の登場に俺は首をかしげる。<br />
<br />
「ずばり、ロイドの恋の相手はランディ君ね！･･･ってセシルさんが」<br />
<br />
俺は目眩がしそうだった。どこからどういう経由でそんな話になる？<br />
どうも話を聞くには過日ロイドがセシルさんのところに行ったらしい。その時例のごとくセシルさんに付き合ってる子はいないのと問われたところ顔を赤らめて否定したと言う。<br />
セシルさん曰く、言い出せない相手に違いないと、相手を異性ではなく同性に絞ったらしい（その思考回路もまた意味不明だが）。<br />
そこで俺の名前が出たところ。<br />
<br />
「ロイドったら黙ってしまったそうよ。これはもう疑いようが無いじゃない？でもあなたは女の子と遊ぶなんて相変わらずだし、違うのかなあって」<br />
<br />
お嬢は近づけていた顔を離して、椅子に座りなおす。そして頬杖を付いた。<br />
違うも何も遊んでるだけだし。<br />
<br />
「へー。まあ、答えづらかったんじゃねえの。俺は間違っても野郎と付き合うなんて願い下げだね」<br />
<br />
俺は鼻でもほじりたい気分でそう応えた。<br />
何で女ってのは人の話に首を突っ込みたがるのか。<br />
だいいちロイドが本気でも俺は遊びだしなあ。セシルさんと付き合えるならロイドと付き合ってやっても良いけど。体の相性は良いし。<br />
そう思っていると、後ろでドサっと音がした。<br />
見るとロイドが俺を直視しながら買い物袋を取り落としたようだった。<br />
俺が、どうしたんだ？と声をかけても反応が無い。<br />
お嬢が慌てて駆け寄って食品の無事を確認すると同時に、ロイドに声をかける。<br />
<br />
「ロイド？どうしたの？」<br />
「あ、ああ･･･何でもない、ごめんちょっと考え事してて」<br />
「そう？具合悪いのなら部屋で休んだら？」<br />
「そうしようかな･･･。ごめんエリィ、これ、冷蔵庫に入れてくれるかな」<br />
<br />
食品の袋を受け取ってお嬢はうなづく。<br />
何だ、様子が変だな。<br />
俺は直感的にそれを感じて、2階にふらふら歩いていくロイドの後を追う。<br />
バタンと扉が閉まった音がした。<br />
ドアのノックなんかもういらねえよな。<br />
俺は構わずドアを開ける。<br />
ロイドがベッドに突っ伏して寝ていた。<br />
<br />
「よお、ロイド、何かあったか？」<br />
「･･････何でも、ないよ」<br />
<br />
声は明らかに涙を含んでいる。<br />
おいおい、男がそんな簡単に泣いてんじゃねえよ。<br />
面倒くせえな。<br />
<br />
「お兄さんが聞いてやるから、何があった？」<br />
<br />
ベッドに腰掛けぽんぽんと頭を撫でると、ロイドはぐすっと鼻をすすり上げる。<br />
<br />
「ランディ･･･抱いてよ」<br />
<br />
ぼそっとロイドはそう呟く。<br />
へー、随分積極的になったもんだな。<br />
悲しい事があったから抱いて欲しいってか？<br />
あるよなー、そういう人恋しい時って。<br />
しかも理由も話さず、なんて良いんじゃねえ。<br />
黙って俺に抱かれてればそれで満足、満たされるってか。<br />
相当、こいつは入れ込んでるな。<br />
<br />
「今からかよ？何でまた」<br />
「どうせ今日は全員オフだろ？」<br />
「お嬢達がいるんだぜ？」<br />
「構わないから」<br />
<br />
俺は構うんだけど。<br />
男とヤッてる上に、相手がロイドじゃこの先誰とも遊べなくなる。お嬢やティオすけが小姑のごとく突付いてきてそのままこいつと恋人同士？願い下げだ。<br />
<br />
「そういうのは夜のお楽しみだろ？」<br />
「今が良いんだ」<br />
<br />
何だよ、今日はやけに頑固だな。<br />
いつもの従順さはどこにいったんだよ。<br />
まあ、そうまで言うなら。<br />
俺は部屋を見回して、部屋にかかっていたフェイスタオルを手に取る。<br />
タオルをロイドの口に押し込んだ。<br />
<br />
「んぐ･･･？」<br />
「声、漏らさないように。あと自分で準備してみせろよ」<br />
<br />
慣らすのも結構面倒くせえし。慣らさないと俺が痛ぇし。<br />
でもこいつ自分で出来るのかな。<br />
そう思っているとロイドは頬を朱に染めて自分のズボンを脱ぎ始める。<br />
俺に背を向けていたので、尻だけがあらわになる。<br />
あー、早く後ろから突き上げてやりてえ。<br />
<br />
「こっち向けよ」<br />
<br />
言うとロイドは膝立ちのままこちらを向いた。<br />
何だよ、もう勃ってやがる。ホント、好きものだな。<br />
まあそんな体嫌いじゃねえけど。<br />
ロイドは机の引き出しに手を伸ばして中を漁っていた。<br />
目当てのものを掴み出す。それはプラスチックのボトルに入った液体だった。<br />
ローションなんていつ買ったんだか。てゆーかそれ封開いてるよな。使ったって事か？いつの間に。<br />
<br />
「お前、後ろ自分でしてんの？」<br />
<br />
ロイドは顔を赤くしたままこくりとうなづいた。<br />
何だ、じゃあ話が早いじゃねえか。<br />
心配して損した。<br />
<br />
「ふーん、仰向け？それとも四つんばいで？俺に見せろよ」<br />
<br />
ロイドが喋れないのを良いことにそう聞いてみる。<br />
するとロイドは素直に四つんばいになって、俺に尻を向けた。素直が何より。<br />
赤く熟れた蕾がひくついていやらしい。<br />
ローションをどうするのかと思っていると、ロイドはローションの口を穴にそのまま押し込んで傾ける。<br />
<br />
「ん･･･んん･･･っ」<br />
<br />
感触が冷たいのだろうぶるりと身を震わせた。<br />
透明なボトルの中身がどぷどぷ中に吸い込まれていく。<br />
ある程度注ぎ込んだ辺りで、ロイドはボトルを引き抜いてベッドの脇に転がす。穴からはつうっとねっとりした液体が伸びて行く。<br />
ロイドが少し身じろぐと、腹に力が入って穴がぱくりと口を開ける。そこからローションがとぷ、と伝い落ちて太ももを濡らした。<br />
震える指を持ち上げてロイドは後ろに指を伸ばす。簡単に中指一本が吸い込まれていく。鼻にかかった声を漏らしながら、すぐ二本目が挿入される。<br />
指は入り口を広げながら内部をこねくり回す。毎晩のようにヤッてた甲斐あってか解れは早い。<br />
その様子に俺は咽喉を鳴らす。<br />
自分のものも勃起している。<br />
<br />
「ロイド、やっぱ変更。俺の、舐めてくれよ」<br />
<br />
ロイドが指を引き抜いてこちらを向く。<br />
俺が前をくつろげて出すと、ロイドは何のためらいも無く口に咥えていたタオルを引き抜いて俺のものに舌を差し出す。<br />
温かい口腔の中に含まれて俺は下半身を震わせた。<br />
そうして、ロイドは自分の後孔に指を伸ばす。ローションでぬめった中に簡単に指は吸い込まれていったらしい。ロイドが総身を揺らした。<br />
鼻にかかった声を出しながら俺のものに必死で奉仕する。<br />
テクはないけど、この必死さがたまらねえんだよな。<br />
俺はロイドの頭を抑えて少し腰を揺らす。<br />
<br />
「んむ･･･っ」<br />
<br />
咽喉の奥に当たったらしく、ロイドは少しむせた。<br />
でもこの咽喉に当たる感触が良いんだ。<br />
俺は欲に任せてロイドの咽喉を突く。<br />
<br />
「ぐっ･･･う」<br />
<br />
ロイドは何とかむせないように上手く咽喉を蠢かす。<br />
<br />
「そうそう、飲み込み早いじゃねえか。流石だな」<br />
<br />
俺はそう言ってロイドの頭を撫でる。ロイドは上目遣いに俺を見て目を細めた。<br />
やっぱこいつ可愛い顔してるよな。上目遣いは女の子の専売特許だと思ってたけど、結構クる。<br />
そのまましばらくロイドの口でしごかれながら、俺は息を荒くしていった。<br />
もうそろそろかと言う頃合になってロイドは俺のものから口を離そうとした。<br />
頭を抑えているので離せずにいて、開いた口の隙間から溜まった唾液がこぼれていった。<br />
<br />
「ん、なんだ？」<br />
<br />
俺はロイドの頭を離す。<br />
すると、ロイドは口からものを引き抜いて口元を拭った。<br />
<br />
「出来たよ･･･準備･･･」<br />
<br />
ロイドは、はぁ、と息を吐く。<br />
フェラに夢中で忘れてたけど、そういやこいつずっと弄ってたんだな。<br />
<br />
「入れてくれる･･･？」<br />
<br />
あくまで下から聞いてくるんだから、健気だねえ。<br />
<br />
「ああ、」<br />
<br />
俺はベッドに乗ってロイドの尻を掴む。<br />
きゅっと引き締まった感触。滑らかな触り心地。女とは違うが欲を満たすには十分すぎる。何より中の感触は病み付きだ。<br />
<br />
「ランディ、･･････好き」<br />
<br />
そうかよ。<br />
ロイドが俺を見ていないのを良いことに俺は冷笑する。<br />
<br />
「俺も好きだぜ、ロイド」<br />
<br />
耳元でそう囁く。<br />
本気って思わせてやるのも親切だろ。<br />
首筋に軽くキスするとロイドは小さく鳴いてよがった。<br />
中に入ったらすぐにでも出そうなものを入り口にあてがう。<br />
ぢゅ、と音がする。一気に腰を進めた。<br />
<br />
「あああっ･･･！」<br />
<br />
俺はロイドの悲鳴に冷や汗をかく。<br />
慌てて放っていたタオルをロイドの口に咥えさせた。<br />
ロイドは少し嫌がる素振りを見せたが、構わず口にタオルを詰め込む。<br />
<br />
「んー････っ」<br />
<br />
ロイドの内部は入ってきったものをぐねぐねと締め付ける。<br />
やっぱ、ヤバいくらい気持ち良い。<br />
ロイドは腕ががくがく震えて辛いのか、上半身だけうつ伏せて、尻を高く突き出す。<br />
腰を支えて内部を抉るとロイドは鼻息を荒くする。<br />
ケツは出て行くときが気持ち良いらしい。まあ排泄器官だから当然か。<br />
内部を突いて、勢い良く引き出してゆっくり沈める。<br />
ロイドがうめきながら、腰を揺らした。<br />
入り口近いところでカリを引っ掛けるとたまらなく気持ち良いんだけど、そればっかだとロイドがイかないからそれなりに感じさせてはやる。<br />
内部の一番感じるところを的確に突くとそれだけでロイドは自分から腰を動かし始める。<br />
<br />
「気持ち良いか？」<br />
<br />
ロイドはこくこく頷きながら腰の動きは止めない。俺がそれに気を良くしてなお攻めると、背筋をびくびくしならせながら射精する。<br />
相変わらず早いな。俺イッてねえのに。まだ動かすぞ。<br />
<br />
「堪え性がねえなぁ」<br />
「ん･･･ふぅ」<br />
<br />
俺に謝罪するように俺の方を見たロイドの顔は涙の筋でいっぱいだった。<br />
まだ泣いているらしい。感じすぎて泣くってすげえな。<br />
俺はイッたばかりで弛緩する体を揺さぶる。イッたあとだからか内部の締め付けは緩く、わずかに痙攣している。<br />
<br />
「もっと締めてくれねぇとイけないだろ」<br />
「ん、」<br />
<br />
ロイドの尻を軽く叩くと、必死になって俺のものを締め付ける。<br />
そうそう、良い具合じゃねえか。<br />
ロイドをイかせたので、俺の好きなように動く。ロイドからは空気の漏れる音と呻きだけが聞こえた。タオルが苦しいんだろうけど、取らずに頑張ってる姿は良いよな。<br />
<br />
「あー･･･やべ、イきそう･･･」<br />
<br />
ロイドはうなづく。<br />
中出しすると後の始末が面倒くさい。でも中に出したい。<br />
ロイドに始末させればいっか。また準備の時みたいに自分で掻き出してみろって言えばやるだろ。<br />
そう思って俺はロイドの中に躊躇なく吐精した。感触にぶるっと身を震わせるロイドを見ながら。<br />
<br />
<br />
<br />
行為の余韻に浸りながら、後ろから耳元に自分で始末してみろ、と言ったらロイドはえ、と言う。<br />
さすがにもうタオルは口から抜いた。<br />
<br />
「始末してるところ見たいから、駄目か？」<br />
「で、でも、今までランディがやってくれてたから分からないし･･･」<br />
「見ててやるから、やってみ？」<br />
<br />
ロイドは顔をだらりと下げて沈黙した。<br />
なに、その沈黙。<br />
<br />
「ランディはさ･･･おれの事、どう思ってるんだ･･･？」<br />
<br />
は？今ここで聞くわけ？<br />
<br />
「好きに決まってるだろ」<br />
「じゃあ、何で皆にバレないようにこそこそシたりするんだ？今まで準備も後始末もしてくれてたのに･･･面倒なわけ？<br />
おれの体を楽しんでるようにしか見えないよ･･･」<br />
<br />
俺は瞑目する。<br />
あーあ、そろそろ潮時かな。<br />
こういうこと言われるようになるとマジで面倒くせぇ。<br />
何て言おう。やっぱここはばっさり行くのが良いか。<br />
<br />
「･･･はっ、お前、男相手にマジになるとか、無いだろ」<br />
「･･･っ！？」<br />
<br />
ロイドが息を飲む。<br />
俺はそれを見越していたので特に驚きもしなかった。<br />
まるで処女みたいな反応なんだよなあ。まあそこが良かったんだけど。<br />
<br />
「悪ぃけど、面倒くさいのは勘弁。ま、お前も楽しかったろ？ここらでお開きにしようや」<br />
<br />
俺はロイドの中からずるりと抜けて、自分の後始末だけする。<br />
空気が重てぇな。早く出よう。そんで女の子でも引っ掛けてこよ。<br />
あー、でも勿体ねえ。タダで気持ち良くて俺の言う事素直に聞く子なんてそういねぇし。<br />
いつの間にか本気になる奴ばっかなんだもんなあ。<br />
<br />
「ランディッ！」<br />
<br />
怒声に近い声だった。<br />
ロイドはよろめきながら俺に近づいてくる。尻の穴から俺の出した精液がだら、と伝う。<br />
何だよ、やっぱ納得しねえってか？<br />
<br />
「何だ？」<br />
<br />
俺は面倒くさいを顔に書いていたと思う。<br />
<br />
「････おれ、ランディのことが好きだ･･･」<br />
「知ってるさ。気持ちは嬉しい」<br />
「知ってて･･･どうして･･･」<br />
「あのなあ、お前も男なら分かるだろ。据え膳喰わぬは男の恥。心と体は別の生き物なんだ」<br />
「･･････。分からないよ」<br />
「お前さんが俺が好きで、抱かれた。俺はお前を可愛いと思って抱いた。好きの温度差こそあれ、成立したセックスしてたと思うけどな」<br />
「ランディの気持ちは、誰かのところにあるのか･･･？」<br />
「どこにも。俺は誰も好きになっちゃいねえよ。<br />
あと、俺にお前に対してマジになれって言うのは無理な話だけど、抱いてくれってんならいくらでも良いぜ。お誘い待ってるからな。<br />
でも、お前がそういう目で俺のこと見てるなんて思うと少し笑っちまいそうだけどな」<br />
「･･････っ」<br />
<br />
ロイドは堪え切れなかったみたいに一粒涙を流した。<br />
俺を真っ直ぐ見る瞳は純粋そのもので、それが重っ苦しい。<br />
<br />
「じゃ、俺出かけるから。お嬢達には夜中に帰るって言っといてくれ」<br />
<br />
あの体は少し勿体無かったな、なんて思いつつ、俺はロイドの部屋の戸を閉めた。<br />
一方的な別れの時ってのはどうしてだか気持ちが昂ぶる。<br />
俺は歓楽街に向かって足を向けた。<br />
<br />]]>
    </description>
    <category>楔</category>
    <link>https://cherryhoney.blog.shinobi.jp/%E6%A5%94/%E6%A5%94%EF%BC%91</link>
    <pubDate>Fri, 01 Jul 2011 04:44:20 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">cherryhoney.blog.shinobi.jp://entry/131</guid>
  </item>
    <item>
    <title>君の香り</title>
    <description>
    <![CDATA[「暑ぃ～&hellip;」<br />
<br />
ランディはなんとも気力のない声を出して入り口のソファーでだらけて、自分の顔をうちわでパタパタと扇いでいる。端末をいじっていたティオは後ろを向いて、ランディをじっと見る。<br />
<br />
「ランディさん、暑い暑いというから余計暑く感じるそうです。逆に涼しいと考えればいいかと」<br />
<br />
そういうティオも、額に汗をかいている。本日のクロスベルの気温は、真夏に近い気温だった。これから本場にも関わらず、温度計を見ると30℃もあった。こうも暑くてはランディでなくても気力がなくなってしまう。おれだって仕事に集中できないし、エリィも自分の手でぱたぱたと風を送っていた。エリィ、ティオ、ランディは髪が長いせいもあり、余計暑く感じたのか、おだんごにしたり、いつもより高い位置で結んだりしている。おれは髪が短いから、そんなことしないで済んでいるけど、帽子も被っていないのに蒸れている感じがする。<br />
<br />
「でも、さすがに暑いわね&hellip;まだ夏でもないのに、こんなに暑いと集中できないわね&hellip;」<br />
「なんだか今年の夏は暑くなりそうだよな&hellip;」<br />
<br />
みんなして、いつもの格好ではなく、すこしでも涼をとろうと、涼しげな格好になっている。ほとんどは半袖を着ているがランディだけ半袖ではなくシャツという、開放感がありすぎる格好だった。普段は厚着のくせに、何でこういう時はそんなに薄着なんだよ。エリィもおれと同じことを思っていたのかランディに注意をしていた。<br />
<br />
「ランディ、お願いだから半袖くらい着て頂戴。薄着すぎるのはよくないわ」<br />
「いや、半袖着たら余計暑いだろ&hellip;。このほうが涼しいし、動きやすいぜ？本当ならズボンも脱ぎたいけど」<br />
「ランディさん、見苦しいものを見せないでください&hellip;」<br />
「いやいや見せてないし！？ティオすけひどくね！？」<br />
<br />
ティオが目を伏せて、あえてランディを見ないようにする。おれはそんな二人の様子に苦笑いしつつ、自分の服の襟元を掴んでぱたぱたと風を体に送る。汗で張り付いてしまっていた服が離れ、風が入ると、少しだけ心地よく感じる。エリィはため息をついて、席を立ちあがった。<br />
<br />
「&hellip;だめだわ、このままだと集中できないわね。ちょっとシャワーを浴びて、さっぱりしてこようかしら&hellip;ティオちゃんもどう？」<br />
「賛成です&hellip;。暑くてベタベタで気持ち悪いです&hellip;。少し席を外します。」<br />
「あぁ、構わないよ」<br />
<br />
許可を取ったエリィとティオは、早々に自分の部屋から着替えを持ってきて、風呂場へ行く。　<br />
するとランディがここぞとばかりに近寄ってきた。<br />
理由は皆まで言わなくても分かる。この数日のご無沙汰だ。<br />
少しでも時間を見ては何とかそういう事に及べないかとランディは苦心していたようだったから。<br />
おれもまあ、それが嫌ではない。ただランディほどその行為に執着していないだけだ。<br />
<br />
「ロイドォ、」<br />
<br />
ランディが情けない声でおれを呼ぶ。暑さも手伝って何だか情けなさに拍車がかかっているように見える。<br />
<br />
「俺の部屋行こうぜ。今なら課長もいねえし、お嬢もティオすけもシャワーだし･･･」<br />
<br />
しかしこの性欲はどこから来るものか。いくら相手がおれだからって、このあからさまなヤりたい光線はどうかと思う。<br />
おれは報告書やその他書類を丁寧に分別してファイルに差し込む。<br />
<br />
「もっと丁寧に誘えないのか？」<br />
「へ？」<br />
「暑さでゆだってるのも分かるけど、猿でももっとマシな言い回しするだろ」<br />
「さ、猿？」<br />
<br />
おれも暑さでだいぶ苛ついているんだろう。普段なら言わない一言が思わず漏れた。<br />
しまったと思ったのも束の間ランディは椅子を立つ。<br />
<br />
「ラ、ランディ、その、ごめ･･･」<br />
「俺、着替えてくるわ」<br />
<br />
椅子を立ち上がって、ランディはおれに背を向ける。明らかに少し怒っていたが、ランディなりに反省があったのかおれを責めようとはしなかった。<br />
<br />
<br />
着替えてくる、と言ったのに５分経っても１０分経ってもランディは戻ってこない。<br />
まさかさっきの言葉がそんなにショックだったんだろうか。おれはランディの様子を伺いに行くことにする。<br />
２階へ上ると、シャワールームからエリィとティオが仲良く湯船に使っているらしい音が聞こえる。女性の風呂は長いから、これならまだ出てこないだろう。<br />
お詫びついでに、ランディとそういう事に至っても良い、と言う事を言わなくては。<br />
あのままへそを曲げられていては明日からの業務がギクシャクして仕方ないのを経験上知っているから、余計だった。<br />
ドアをノックしても返事は無い。おれは入るよ、と一言告げて中へ入った。ランディはベッドに横たわって憮然としている。ように見えたが、すぐに寝ているのだと気づく。<br />
<br />
「まだ業務時間だって言うのに･･･」<br />
<br />
おれはそろそろ近づいてランディの寝顔をしげしげ眺める。<br />
長いまつげ、整った薄い唇、通った鼻筋。均整が取れた顔は本当にこうしてみると綺麗だ。<br />
黙って目を瞑っていればこんなに綺麗なのに、口を開けばすぐにでもヤりたがるし、内面は案外情けないし。色男金と力は無かりけり、いや天は二物を与えずか。<br />
そうして云々考えていると、不意に腕を掴まれて、バランスを崩しランディの胸の上に落下する。<br />
<br />
「うわっ･･･」<br />
「お兄さんのところに夜這いか？」<br />
「まだ昼間、それに業務時間内だぞ」<br />
「ククッ、分かってる。それより何か言いたい事でもあるんだろ？」<br />
<br />
ランディはおれの考えなどお見通しのようで、そう言った。<br />
着ている服が汗でだいぶ湿っているランディの胸に顔をつけて、しばらく沈黙した。<br />
<br />
「････さっきは、ごめん」<br />
「ああ･･･、なんだ、気にしてたのか」<br />
「ランディ、なかなか降りてこないから･･･」<br />
<br />
暗に、怒っていたから降りてこなかったのだろうと、そう指摘すると、ランディはおれの頭を撫でた。<br />
<br />
「ハハ･･･まあ、俺が悪かったんだ。気にすんな」<br />
<br />
それと、とランディは付け足す。<br />
<br />
「お嬢達はまだ上がってこねえよな？」<br />
「う、うん」<br />
<br />
胸がどく、と脈打つ。<br />
背筋をランディに撫でられたからだ。<br />
<br />
「お前、俺に悪いって思ってるんだろ？」<br />
「う、うん、まあ･･･おれだってその、したくないわけじゃなかったし･･･」<br />
「じゃあさ、お互いに気持ち良くなれる方法でシねえ？」<br />
<br />
普通にするのと何が違うんだろうか。<br />
ランディが身を起こそうとしたのでどこうとすると、おれは体をひょいと抱え上げられる。そして膝の上に座らされ耳元で囁かれた。<br />
<br />
「なっ･･･」<br />
「なっ？良い方法だろ、手間もかかんねえし」<br />
<br />
おれは頬が暑くなるの感じた。温度のせいではない。<br />
じゃあ、お詫びだと思って、お前から服脱がして。<br />
そう言ってランディはごろりと寝そべって防戦状態に入った。<br />
<br />
<br />
服を脱がそうとしても上手くいかない。<br />
それはランディの汗で服が張り付いているからだ。絞れるのじゃないかと思うほど、汗をかいている。<br />
服のすそから手を入れて隆起した筋肉に手を這わせ、服との境目を作る。<br />
張り付いていた服の間に隙間が出来て、ランディは少し風が入ったことに心地良さそうだった。<br />
<br />
「腕、上げて」<br />
<br />
素直に腕を上げたので、着ていたタンクトップを脱がす。<br />
女性陣にはそんな薄着で、とか散々な言われようだったが、おれはこの格好嫌いじゃないよ。<br />
厚い胸筋の上で這う汗の筋、それを舌で舐め取る。<br />
ランディは小さく声を上げておれの舌の動きに身を任せていた。<br />
汗ばむ腕を掴んで、ゆっくりランディをベッドに押し倒す。<br />
胸の中心部分から主に流れ出てくる汗をおれは吸い上げ続けた。<br />
重なり合う下半身に熱が集中する。<br />
薄いズボンの上から互いのものが勃ち上がっているのが分かった。<br />
おれはたまらずに自分の服を脱ぎ捨てる。汗をかいて湿ったTシャツは脱ぐのに少し時間がかかってもどかしかった。<br />
この間にランディのものが萎えてしまうのじゃないかと思ったからだ。<br />
けれどランディの汗は、止まらない。<br />
<br />
「何か、このまま全身の水分が抜けちゃいそうだね」<br />
<br />
おれは嬉しくて、すぐランディの下腹部に手を這わす。<br />
ランディは抵抗もせずに自分のベルトにバックルに手をかける。直に触って欲しい？おれもだよ。<br />
ベルトを外して、脱ぎづらいズボンを脱ぎ捨てる。<br />
ランディは寝転がっていたのでおれに脱がせと要求してきた。<br />
<br />
「はいはい」<br />
<br />
尻の下に手を差し込んでぐいっと引っ張る。<br />
ランディは少し尻を浮かして脱がしやすいようにしてくれる。<br />
それでも汗で湿ったズボンは脱がしづらい。<br />
膝まで下ろしたところでもう良いだろうとおれは投げた。<br />
<br />
「どうせエリィ達がいるから早く済ませないといけないし」<br />
<br />
ランディもそれにうなづいて、おれの前をぐりぐりと弄る。早く下着を脱げ、ということだろう。<br />
躊躇無く自分の下着に手をかけて、脱ぐ。<br />
何も身にまとっていないのに、空気は暑い。まるで暖房をがんがんかけた部屋で毛布にでもくるまれているみたいだ。<br />
下着を脱いでランディの上にまたがった状態になると、ランディはくすくす笑って来いよと言った。<br />
<br />
「上手く出来るかわからないよ？」<br />
「良いさ、最悪お前がイけばそれで良い」<br />
<br />
そんな、と思ったが、ランディの眼差しは優しい。汗に濡れた額から一筋落ちていく。首筋にそのまま伝っていく様子に俺は咽喉を鳴らした。<br />
おれはランディの顔の上に自分の下半身を持っていく。熱が熱い口内に頬張られていくのを感じながら、おれもランディのものを口に含んだ。<br />
<br />
「ん･･･」<br />
<br />
汗が充満した独特の香りが鼻を付く。欲情させるその匂いと口の中でびくびく脈打つそれに夢中になる。鈴口を吸い上げて深く咽喉の奥まで吸い込んだ。<br />
カリの付け根あたりを唇に引っ掛けながら扱くとランディがわずかに呻いた。<br />
おれのものもランディの口で扱かれて、腰周りに鈍い快感が過ぎる。<br />
<br />
「あっ・・・は・・・」<br />
<br />
水音が響く。唾液をたっぷり絡めて扱かれるとぬるついた感触が気持ちよくておれの口は疎かになる。<br />
だがランディは何も言わない。本当におれだけイかせるつもりかもしれない。<br />
そうはさせまいと再び口に含んでしばらく舐めていたが、段々口がしびれてきた。汗がだらだらと額から落ちてきてはランディの太ももを濡らす。<br />
おれは前髪をかきあげて、額を拭う。<br />
<br />
「おいおい、そんなに必死になるなよ」<br />
<br />
ランディの含み笑いが聞こえる。<br />
<br />
「だって、おればっかりはだめだろう？」<br />
「んなことないぜ？俺はロイドの精液が飲めればそれで十分」<br />
「&hellip;あんまり直接言わないでくれ&hellip;」<br />
「照れるなよ」<br />
<br />
ランディはそう言ってまた愛撫に戻る。<br />
愛撫、そう呼ぶのがふさわしいのか分からないほどランディの攻め方は巧みで、おれはいくらもしないうちに追い上げられる。<br />
自分から腰を押し付けて熱全体をランディの口の中に埋めてしまう。ランディはえづく様子も無く、扱くのをやめず、おれを頂点に導こうとする。<br />
おれはもう完全にランディのものを咥えるのを忘れて、ただ喘いでいた。<br />
ぢゅっと強く吸われて全身を震わせると、自分の汗が飛散する。<br />
<br />
「っあ・・・！あぁっん・・・ぅ」<br />
<br />
漏れる声を手で塞ぐと同時くらいにおれは達した。<br />
飛び出た精液は余すところ無くランディに飲み込まれた。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
「ランディ、ごめん・・・」<br />
「ん、何が？」<br />
「結局おれだけイッちゃった・・・」<br />
「気にすんな、良い眺めでサイコーだったぜ？」<br />
<br />
洗い立てのTシャツに袖を通しながらランディは事も無げにそういった。<br />
<br />
「それに、汗の匂いってたまんねーしな」<br />
「・・・うん、まあ、それは、確かに・・・」<br />
<br />
おれは顔を赤くしていたと思う。<br />
ランディはベッドに座っているおれに後ろからしがみついてきて、肩口に鼻を寄せた。<br />
<br />
「シャワー浴びたてもたまんねえけどな」<br />
<br />
胸をまさぐり始めた手を払うことも出来ず、おれはされるがまま、ランディの手に散々喘がされた。　<br />
<br />
<br />
<br />]]>
    </description>
    <category>君の香り</category>
    <link>https://cherryhoney.blog.shinobi.jp/%E5%90%9B%E3%81%AE%E9%A6%99%E3%82%8A/%E5%90%9B%E3%81%AE%E9%A6%99%E3%82%8A</link>
    <pubDate>Fri, 24 Jun 2011 10:07:52 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">cherryhoney.blog.shinobi.jp://entry/130</guid>
  </item>
    <item>
    <title>サクラ</title>
    <description>
    <![CDATA[<br />
春は出会いの季節だし、最初は軽い気持ちだったんだ。<br />
毎日見かけるし、ちょっと良いなって。<br />
でも喋ったら、もっと良かった。<br />
<br />
<br />
電車が騒音を立てて通り過ぎて行く。<br />
3番ホームの一番先頭に今日も向かう。<br />
目当ての人物の着ている濃紺に赤と緑のチェックのスカートが風で翻っていた。<br />
薄めの参考書を読みながら、時々バッグを肩にかけなおしている。<br />
俺はその子の後ろに並んで、頭１つ以上違う位置の参考書を覗いた。<br />
古典の動詞の活用？俺にはさっぱりだ。<br />
ああ、でもこれは知ってる。<br />
<br />
あらざらむ　この世のほかの　思ひ出に　いまひとたびの　逢ふこともがな。<br />
<br />
「和泉式部だっけ？」<br />
<br />
俺は後ろから思わず声を出した。<br />
しまった、と思う間もなく、その子が俺の方を向く。<br />
名前も何も知らないのに、いきなり参考書覗いたりして、俺思いっきり不審者。<br />
ナンパしようとは思ってたけど、こんな形になるなんて。<br />
その子を正面からまじまじと見たのは初めてだった。<br />
ふわふわのひよこみたいなショートヘアが風に揺れる。栗色の大きな瞳に俺がしっかりと映っている。<br />
彼女は表情に疑問符を浮かべて、それからふっくらした唇が動いた。<br />
何て言われるのかな。やべー、心の準備が。<br />
<br />
「そうですよ」<br />
<br />
彼女はにこっと笑う。<br />
あ、やっぱ可愛いな。<br />
<br />
「その制服、近くの高校ですね」<br />
<br />
俺の着崩したと言うか着倒してよれよれブレザーを指して言う。<br />
<br />
「あ、ああ」<br />
「古典、好きなんですか？」<br />
<br />
いや。どっちかって言えば好きな教科は寄り道と屋上。<br />
でもここはまあ、好きなことにしておこう。<br />
てか意外と積極的？嫌いじゃないけど、予想外。<br />
<br />
「まあ、好きかも」<br />
「ふふ、私もです。よくここに並んでますよね」<br />
<br />
あれ、知ってたんだ。<br />
ストーカーっぽいとか思われてねえかな。<br />
それにしても俺の事覚えてるなんて。<br />
俺が不思議そうな顔をしていると<br />
<br />
「その髪、目立つから。背も高いし･･･」<br />
<br />
ああ、そうか。と合点がいく。<br />
<br />
「生まれつきでね」<br />
「留学生ですか？」<br />
「いんや、親は外国人だけど」<br />
「あ、同じです」<br />
「へえ、」<br />
<br />
俺は嬉しくなって自然顔が綻ぶ。<br />
が、見ず知らずみたいな俺と普通に会話してるなんて（しかも駅のホームで出会ったやつと）、丸きりこの子は警戒心が無い。ちょっと心配だぜ？<br />
でも俺にとっては願ったりかな。<br />
このまま色々聞きたい。<br />
<br />
「年、いくつ？」<br />
「17･･･高３です」<br />
「ああ、俺も。タメ口で良いぜ」<br />
「そう？じゃあ、････ええと」<br />
「ランドルフ、ランドルフ・オルランド。皆にはランディって呼ばれてる」<br />
「ランディね」<br />
<br />
また、笑った。<br />
すげえ、この1ヶ月この子の後ろに並んでただけだぜ？<br />
それが急転、名前まで覚えられるなんて。<br />
俺は夢なんじゃないかと思った。<br />
<br />
「私はロイド・バニングス、よろしくね」<br />
<br />
名前を聞いて、またちょっと舞い上がる。<br />
でも女の子にしちゃ珍しい。<br />
<br />
「ロイド･･･珍しいな」<br />
「ふふ、親が男の子が欲しかったらしくて、女の子らしくないよね」<br />
<br />
ロイドは困ったように笑って言った。<br />
俺は慌てて手を振ってそれを否定する。<br />
そんだけ可愛いんだ、良いじゃねえか。<br />
適当にそのまま会話を続けていると、電車が到着する。ロイドはまだ話しを続けるつもりらしい。降りる駅は一緒だ。このまま話せるなんて嬉しい。<br />
ラッシュの電車に揉まれて、中に押し込まれる。<br />
俺はロイドをかばうように肩に手を回して入り口と反対の扉に向かった。<br />
人ですしづめ状態の電車で自然と密着する。<br />
ロイドは俺の胸の辺りに顔があって、長い睫毛やリップを塗って潤った唇が視界に入る。ちょっとドキリとした。おまけに部屋の香りなのか何か良い香りがする。控えめだが柔らかそうな膨らみがベストの下で息づいていた。<br />
俺は思わぬ至近距離に少し咽喉を鳴らした。<br />
ロイドは上目遣いに俺を見る。<br />
<br />
「ありがとう」<br />
<br />
笑顔でそう言われる。<br />
お礼を言われるような事はしていない。むしろヨコシマだぜ？<br />
<br />
「何が？」<br />
「私、背が小さいから、いつも息苦しいの。でもランディが間空けてくれてるから」<br />
<br />
俺はドアに手を突いて、ドアを背にしたロイドをかばうように立っている。<br />
あまり密着するのも難だしそれなりに隙間は空けているが、それでも俺がかがめばキスくらい出来てしまう距離だ。<br />
会って1ヶ月、話して数分。軽い女の子には見えないし、それで礼を言うような子は見た事がない。<br />
<br />
「俺が言うのも難だけど、お前さん警戒心、持った方が良いぜ？」<br />
「え？」<br />
「俺にナンパされたとか、思わねーの？」<br />
「え？え？ナンパだったの？てっきり古典が好きなのかなって」<br />
「あー･･･」<br />
<br />
俺は軽く眩暈を覚える。目頭を押さえて俯いた。<br />
こりゃ重度の天然だ。<br />
一体どんな親に育てられたらこんな風になるんだか。<br />
俺の家なんか親父もお袋も暴力的だからケツバットどころの騒ぎじゃないしつけられ方で育って、ずいぶんひねくれたと思う。<br />
<br />
「1ヶ月くらいずっと見てて、ナンパしようかなって思ってた」<br />
「････え、その、された事無いから･･･分からなくて、ごめんなさい」<br />
<br />
そのごめんなさいは何に対してなんだ。俺のナンパはお断りなのか、ナンパって気づかなかった事に対してなのか。恐らく後者だろうけど。<br />
それ以前にナンパされたことが無いって言うのが無いだろうと思う。<br />
<br />
「街中で見ず知らずの男に声かけられて遊んだ事は？」<br />
「あ、それなら何度か。でもみんなカラオケが好きだったり、女の子にお洋服買うのが好きなだけって言ってて･･･」<br />
<br />
この子あぶねえええ。個室に連れ込まれてるし！<br />
<br />
「それ、世の中ではナンパって言うんだぜ？」<br />
「あ、そ、そうなの？」<br />
<br />
俺は嘆息する。<br />
電車はあと一駅で目的地に着く。<br />
決めた。<br />
<br />
「学校終わるの何時？」<br />
「えっと、今日は6時くらいには帰れるかな」<br />
「じゃあ学校まで迎えに行く。どうせ近所だし。校門で待ってるから」<br />
<br />
ロイドはまたえ？え？なんで？と繰り返す。<br />
<br />
「お前、あぶなっかしいから、これから毎日俺が一緒に帰る」<br />
<br />
俺自身が危ないと言う意識も無さそうなロイドにそう告げると、ロイドは笑った。<br />
<br />
「良く分からないけど、学校外に友達が出来るなんて嬉しいよ」<br />
<br />
ほらみろ。危機感ゼロだ。<br />
俺が溜め息をつくと電車がギキィッと音を立てて止まった。<br />
俺はロイドの手を取った。<br />
人が雪崩れて降りていくので、その流れに乗るようにして降車する。<br />
降りたところで、手を離して後ろを振り向くとロイドが胸を抱えている。<br />
<br />
「どうした？」<br />
「あ、ううん、何でも･･･」<br />
「無いって顔じゃねえだろ」<br />
<br />
人の流れが階段やエスカレーターに向かっていって、俺達だけぽつんと残される。<br />
俺はロイドを椅子に座らせて、自分も横に並んで座った。<br />
ロイドは言いにくそうに口をもごもごさせてから顔を俯かせてぽそっと言った。<br />
<br />
「･･･、･･･胸触られて」<br />
<br />
何だと。<br />
<br />
「どいつだ？」<br />
「あ、良いの、よく、あるから」<br />
<br />
ロイドは微苦笑を浮かべて、俺に手を振る。<br />
良くないだろ。しかも良くあるだと？俺は腹から煮えたぎりそうなものを感じた。<br />
<br />
「･･･、明日から毎日俺がちゃんと守る」<br />
<br />
ロイドはまた顔に疑問符を浮かべて、え？と言う。<br />
ロイドの疑問も当たり前だよな。俺、何言ってるんだろう。<br />
<br />
「な、何で、会ったばっかりなのにそんなに優しくするの」<br />
<br />
でもそう問われるとは思ってなかった。<br />
何でだろうな。恋ってやつ？下心だよ。ロイドにもっと近づきたい。<br />
これって、好きって事なんだろうな。それも少し厄介なくらい。<br />
最初はちょっと良いなって思って、ちょっと触れ合えたらなって。<br />
でも、話してみたら駄目だった。<br />
本気になるのに時間なんか関係ない。<br />
俺はロイドに向かって、少し笑った。<br />
<br />
「守りたいから」<br />
<br />
この天然具合から察するに、好きなんて言っても分かってもらえない気がする。私も好きって言われて終わりそうだし。<br />
だからほんの少しずつから始めてみたい。そんな風に思うのは初めてだ。<br />
接し方も口説き方も普通の戦法じゃ通じそうに無い相手も初めてだ。<br />
<br />
「あ、で、でも、そんな、毎日、なんて」<br />
「迷惑か？」<br />
「そうじゃないけど･･･」<br />
「じゃあ何だ？」<br />
<br />
ロイドはぶんぶん頭を振って、顔を上げた。<br />
表情は凄く柔らかい。風がふわりと吹いて、俺とロイドの髪を撫で付ける。桜の花びらがどこからかやってきて少し舞った。<br />
<br />
「嬉しくて。どうしたら良いのかなって」<br />
<br />
頬が少し赤い。色白だから余計に目立つ。<br />
照れてるのかな。<br />
<br />
「どうもしなくて良いさ、俺が好きでやるんだ」<br />
<br />
俺はロイドの頭に手を置いて、くしゃっと撫でた。気持ち良さそうに目を眇める。頭撫でられるの、好きなのか。<br />
他にも、こいつが喜ぶことって色々あるんだろうな。知りたい。<br />
俺は無意識に手を差し出して、ロイドはその手を取った。<br />
<br />
「行こうぜ」<br />
「うん」<br />
<br />
快活なその声と手を繋ぐ。<br />
君との始まりの日。<br />
<br />
ふと目線をホームの脇にやると、桜並木が満開になっていた。<br />
<br />]]>
    </description>
    <category>サクラ</category>
    <link>https://cherryhoney.blog.shinobi.jp/%E3%82%B5%E3%82%AF%E3%83%A9/%E3%82%B5%E3%82%AF%E3%83%A9</link>
    <pubDate>Tue, 14 Jun 2011 01:06:46 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">cherryhoney.blog.shinobi.jp://entry/129</guid>
  </item>
    <item>
    <title>あなたへの道</title>
    <description>
    <![CDATA[<br />
あの時から振り返ってどうだろう。<br />
今、ここにある幸福は本物だ。<br />
それをランディはお前自身が歩んだ成果だと言ってくれた。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
『おれ、外国で暮らすよ』<br />
<br />
そう言ったのは、何故だったんだろう。<br />
兄の存在を否定しようと思ったわけでもない、セシル姉の家が居心地悪かったわけでもない。<br />
ただ、ここに、クロスベルにいると、兄の存在に囚われて抜け出せない気がした。<br />
兄の言葉、兄の命の残り火、全てがおれを過去に繋ぎとめる。<br />
セシル姉は散々おれを引き止めた。<br />
まだ15のおれを心配したのは当然だろうが、この人の悲しみも深い。<br />
兄の亡くなった悲しみの舐めあいをおれがしてしまう気がした。<br />
セシル姉が時折、どうしようもなくおれに兄を重ねてみる目を知らないわけじゃなかったし、憧れている女性にそれをされるのは辛かった。<br />
だから、何もかもをリセットしようとした。<br />
外国に初めて足を踏み入れた時、少しホッとしていた。<br />
見知らぬ景色、見知らぬ人々、何より兄の存在の希薄な事。<br />
<br />
けれど出会った中に、兄を知る人がいた。<br />
その人は彼が恐ろしく前向きで、どんな壁でも軽々と乗り越える心のエンジンがあったと言う。<br />
最初は兄を知る事が恐くて躊躇ったが、その人と交流を持つうち、兄が目指していた道を知るところになった。<br />
兄は、あまねく人々の幸福を願っていたと。<br />
そのためなら、自分が出来る事は何でもやり通すのだと。<br />
自分自身のことで手一杯だったおれにとっては頭を殴られるような衝撃だった。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
今日もクロスベルは快晴。部屋に降り注ぐ光線がまぶしい。<br />
エリィは洗濯日和だと屋上で洗濯物を干しているし、ティオは朝の紅茶の支度をしているはずだ。<br />
ランディはと言うと、自室の椅子で読書をしているおれの背中から首に腕を回して離れない。<br />
その体勢疲れないかと聞いても構わないから、と言う。<br />
さっきから半刻はこの体勢のままだ。<br />
どうしたのか、今日はいつもより甘えてくる。<br />
甘えてるなんて言ったらすぐにこの腕はおれから離れていくのでそれは言わないけれど。<br />
おれは本を閉じた。<br />
主人公が丁度難事件の一端を解決したところだ。キリも良い。<br />
ランディの腕を取って手に鼻を寄せる。<br />
まだ付けたての香水の香りがした。<br />
その香りに安心しながら、目を瞑る。<br />
ランディと恋人になって、この香りを嗅ぐのが当たり前みたいになるくらいには近しい存在になっていた。<br />
ふとランディはおれのエニグマを手に取り、ストラップを揺らした。<br />
<br />
「なあ･･･何でお前捜査官になろうとしたのか、って、聞いて良いか？」<br />
<br />
兄の遺品を眺めながらランディはそう言う。<br />
<br />
「それって、兄貴絡みの話が聞きたいの？」<br />
<br />
ランディは後ろで苦笑する。<br />
<br />
「相変わらずカンが良いな」<br />
<br />
おれは良いよ、隠す事でもないし、と言った。<br />
やたらに今日甘えてきたのは、兄の事が絡んでいるのだろうか。<br />
おれはランディの腕をやんわり解いて、椅子から立ち上がる。ベッドに座り直そうと促すとランディは後ろから付いて来る。ランディはベッドに座ると靴を脱いで立てひざをついた。<br />
<br />
「ガイさんが亡くなった後、お前どうして外国に？」<br />
「んー･･･そうだな、兄貴の残像に囚われそうだったから、かな」<br />
「そっか、悲しい事に囚われちまうしな」<br />
「まあ、そうだな。それもあった」<br />
<br />
悲しい事に囚われる。まさにその通りかもしれない。<br />
現実と向かい合うには幼すぎて、おれは道を少し曲がった。立ち止まった。<br />
何をしたいのか分からず、とにかく兄の死を受け入れようと必死だった。<br />
異国は孤独を満たすには十分過ぎた。<br />
精神的に誰もいない孤独の中で、ただ床を見る日も多かった。<br />
<br />
「どうやって、立ち直ったんだ」<br />
「そうだな･･･、時間と、あと出会った人、かな。<br />
兄貴を知ってる人がいて、その人に色々兄貴の話を聞いてるうちに兄貴がおれの目標みたいになった」<br />
<br />
ランディはふっと笑ってうなづく。そうか、と短く言う。<br />
<br />
「じゃあ、ガイさんの背中を追っかけるようになったのはその頃か」<br />
「まあ捜査官になろうと思ったのはまた違うきっかけもあったし、大分悩んだけどね」<br />
「違うきっかけ？」<br />
「兄貴のことを知ってた人がさ、････その人が言ってたんだ。<br />
兄貴にとって『人の幸福が俺の幸せだ』って。頭を殴られた気がした」<br />
<br />
長い孤独の中で得たその一言は兄の遺言だったと思えた。<br />
そうして警察学校に入ろうと決意した時、ようやく一歩道が見えた気がした。<br />
兄に近づくという意味で。兄の遺志を継ぐという意味で。<br />
<br />
けれど今はそうではない。<br />
この支援課で掛け替えのない仲間と、恋人を得て、見えたものがあった。<br />
どこまでもおれはおれでしかない。<br />
憧れはその人のコピーになることではない。<br />
あくまで人生の手本であって、そこには自分の味が加味されていく。<br />
そして自分の道は自分自身が足掻いて切り開いてこそ見えてくる。<br />
正解なんてある意味存在しないのだ。時代背景にマッチするベストな選択という枠組みと言う奴が意外と自分の思考を支配しているものだから、それを超えて考えなければ、道は見えてこない。<br />
<br />
ランディは思案顔になってから、少し顔を崩した。<br />
<br />
「そりゃまた、すげえこと言うなあ。敵う気がしねえよー」<br />
<br />
ランディは笑いながら体をベッドに投げ出す。<br />
<br />
「はは、何、ランディは兄貴にコンプレックスでもあるのか？」<br />
「無いとは言えねーよな。同じ警官としてもそうだけど、ガイさんと似てるとか言われちゃってるし？」<br />
<br />
ランディはウィンクを見せて軽い口調で言う。<br />
けれどそこには確かにちょっとした劣等感のようなものが感じられた。<br />
<br />
「ランディはランディのままで良いと思うんだ」<br />
「は？」<br />
「あ、何か見当違いのこと言った？」<br />
「いや、唐突だったから････でも、そうだな」<br />
<br />
ランディは目を伏せて少し笑んだ。<br />
<br />
「俺に守れるのかって思うんだ。お前を。ガイさんみたいに。<br />
････でも、お前がそう言うのなら俺は俺なりにお前を守りたい」<br />
<br />
おれはうなづく。<br />
守り合うんだ。背中を預けて。色々なものから。<br />
ランディはおれの腕を引き寄せておれを胸に抱く。<br />
たぶん、ランディには葛藤がある。<br />
凄い男だったおれの兄と自分とを比較している節がある。<br />
おれと付き合うようになってからそれは顕著だった。おれもそれに気づいていたから、いつかはさっきのような言葉を言わなければとは思っていた。<br />
<br />
「･･･ランディ」<br />
<br />
おれはランディの上に覆いかぶさる。<br />
軽く口にキスして、自分で照れてしまった。<br />
頬が熱くなっているのは自分でも分かったが、ランディから目線ははずさない。<br />
<br />
「おれ達が幸せなのも･･･ランディが幸せなのも、兄貴の望みなんだ」<br />
<br />
ランディが兄の影に気負う必要なんかない。<br />
おれはそう言いたかった。<br />
それを察してか、ランディはまたうなづいた。<br />
<br />
「兄貴は兄貴、ランディはランディだよ」<br />
「そうだな･･･」<br />
<br />
その時、階下からおれ達を呼ぶ声が聞こえた。<br />
屋上からもぱたぱたと降りてくる音が聞こえる。エリィが洗濯物を干し終えたのだろう。<br />
<br />
「そろそろ行かなきゃな」<br />
「だな･･･」<br />
<br />
そう言いつつお互い動かない。<br />
おれはランディに覆いかぶさったまま、ランディはおれを見上げながら、目線を交じわす。<br />
この時間の終わりが惜しい。<br />
ランディの腕が背中に回ってきたので、おれはそのまま素直に抱かれた。<br />
互いを互いのままで良いと思ったこの気持ちのまま、今日を今を過ごしたい。<br />
部屋の戸をノックする音がした。<br />
<br />
「ロイドさん、ランディさん、お茶が入りましたが」<br />
<br />
ティオの声が聞こえる。<br />
おれ達は顔を見合わせて、うなづく。<br />
ティオが反応の無い部屋に入ってきてすぐ足を止めた。<br />
<br />
「あ･･･」<br />
<br />
おれ達は寝たふりをした。<br />
ティオはきっとそれに気づいているはずだ。<br />
男二人が抱き合ってるなんて見苦しいと怒られるかと思っていたのだが、耳はティオが出て行く音とランディの心音だけを拾っている。<br />
この心地よいまどろみに似た空気を感じたのだろうか。<br />
廊下でティオと同じようにおれ達を呼びに来たらしいエリィとの会話が聞こえた。<br />
<br />
「ランディとロイドは？」<br />
「一緒にうたた寝しています･･････とても気持ち良さそうなので、起こすのが忍びないので起こしませんでした」<br />
「まったく、仕様がないわね。仲が良いんだから」<br />
<br />
エリィの呆れたような、母親のような口調におれ達は忍び笑いをした。<br />
<br />
「まあ二人は放って置いて、私達は先に朝食に行きましょうか」<br />
「そうですね。今日はとろとろ卵のサンドです」<br />
<br />
エリィは嬉しいのかくすくすと笑っていた。もしかしたらティオの頭でも撫でているかもしれない。<br />
おれ達の仲が良いと言うのなら、エリィとティオもなかなかのものだと思うのだが。<br />
階下に下りて行く音を聞きながら、おれ達は顔を上げた。<br />
<br />
「行っちまったな」<br />
「ああ･･･」<br />
「とろとろ卵のサンド、食いっぱぐれたな」<br />
<br />
途端、ランディの腹の虫が鳴る。おれは笑った。<br />
今から階下に行こうかと尋ねると、ランディは首を振る。おれを強く抱きしめて耳元で呟いた。<br />
<br />
「ガイさんが守ろうとしてたもんの一部はロイド、お前なんだよな」<br />
「･･･うん、」<br />
「俺が守る」<br />
<br />
何を思ったのか、今日はガイさんの墓参りに行かせてくれ、そう言ってランディは笑った。<br />
墓前で彼は何か誓うのだろうか。<br />
人の幸福を願った兄の想いを受けて、何を願うのだろう。<br />
<br />
「一番大切なものを取りこぼしたくねえからな」<br />
<br />
おれの頬を撫でて、慈しむような目を向けてくる。<br />
<br />
「───･･･俺は、身近な一人を守りたいんだ」<br />
<br />
それがランディの望み。<br />
おれはくすくす笑ってしまった。<br />
<br />
「───おれもだよ」<br />
<br />
兄に報告に行かなければ。<br />
あなたがもし亡くならなければ、この人がもし命を救う事を考えなければ、歯車が少しでも違えば、ランディに出会うことなどなかったと。<br />
悲しみの後に必然を知る。<br />
兄の死を兄の残像を乗り越えた今が、全て幸福に繋がる道だった。<br />
目を瞑ると記憶の中で兄が笑った気がした。<br />
<br />
<br />]]>
    </description>
    <category>あなたへの道</category>
    <link>https://cherryhoney.blog.shinobi.jp/%E3%81%82%E3%81%AA%E3%81%9F%E3%81%B8%E3%81%AE%E9%81%93/%E3%81%82%E3%81%AA%E3%81%9F%E3%81%B8%E3%81%AE%E9%81%93</link>
    <pubDate>Wed, 08 Jun 2011 14:51:04 GMT</pubDate>
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  </item>
    <item>
    <title>アレキサンドライト</title>
    <description>
    <![CDATA[<br />
<br />
<br />
「こりゃまあ何て言うか、よく残ってたな」<br />
<br />
ランディは腐った木を踏み抜かないように、慎重に進む。<br />
部屋はワンルームとも言いがたいほど小さく、天井は屈んでいないと頭が引っ掛かる。辛うじて残っていた天井のトタンもほとんど穴だらけになって、屋根の向こうは空の青さが眩しかった。<br />
ランディは持ってきたブルーシートを床に広げて、そこに導力ランプを置く。<br />
屋根から差し込んでくる光で大分明るいから、ランプはいらなかったかもしれない。<br />
おれは隣り合わせで座る。小窓が目に入った。<br />
小鳥が一羽やってきてまた飛んでいった。<br />
<br />
「しかしお前も唐突だな、秘密基地に行きたいとか」<br />
「この間ふっと思い出してさ」<br />
<br />
おれはふふっと笑いながら、ランディの横にある崩れかかった棚を指差す。それを指差されてランディは横を向く。錆びた空き缶やぼろぼろの釣り道具が並ぶなか、鈍く光る石が置かれていた。<br />
大きさはビー玉程度、いびつな形をしている。<br />
ランディは棚から石を取り上げて、おれに寄越す。<br />
<br />
「セピスじゃないよな？」<br />
「うん、セピスだったらここは今頃魔獣に壊されてる」<br />
「ふーん、何て言うんだ、それ」<br />
「アレキサンドライトって言うんだ」<br />
「あ、あれき・・・？」<br />
「はは、ちょっと舌噛みそうだよね。価値はないけど鉱石の一種でセピスと一緒に出てくることがあるんだ」<br />
<br />
おれは傾いている机の上にそれを置く。<br />
ランプの明かりに照らされてそれは赤く光っていた。<br />
<br />
「ランディ、ランプの明かり消してくれる？」<br />
<br />
言われて消すと自然光に照らされて、石は見る間に変容する。<br />
鮮やかな碧。ランディの瞳の色のような碧色。<br />
<br />
「これが見せたくてさ」<br />
「へー、すげえな」<br />
「ランディみたいだろ」<br />
「俺？」<br />
「火のように熱くなったり、湖みたいに深くて優しかったり」<br />
<br />
おれはヴァレリア湖の写真を眺めていてここを思い出した、と言う。<br />
しかしランディは恥ずかしい、そんな評価をされていたのかと思うと背中が痒くなったと言う。<br />
おれなりに良い評価のつもりだったんだけど。<br />
<br />
「それで･･･俺のベッドの中の姿でも思い出したのか？」<br />
「そういう事じゃなくてさ」<br />
<br />
おれが照れるかと思っていたのか、普通に笑ってやるとランディは肩透かしを食らう。<br />
火のように熱く抱いた後に、湖のように優しく抱きしめてるだろと言われ、まあそれもそうなんだけど･･･と言う。<br />
さすがにそれは照れた。おれは鼻を掻く。<br />
<br />
「環境によって色を変えられるって、おれには出来ないからさ」<br />
「くらげみたいな生き方って言われてる気もするけどな」<br />
「ふわふわしてるって意味じゃないよ。ちゃんと基礎はあるけど、シーンによって切り替えが出来るって意味でさ」<br />
<br />
とにかく、この石はランディにもらってほしいんだ、と言った。<br />
それに面食らったのかランディは変な顔をする。おれが何の気なしに渡すと、これは元々、違う人間のために存在していたのじゃないかと言われた。<br />
そう言われて、かつてここにも顔を覗かせていた人物がよぎる。<br />
<br />
「ガイさんのためのものじゃないのか？これ」<br />
<br />
おれはその問いの返答に少し躊躇って、胡坐を崩す。足を抱えて座りなおすと、膝の上で腕を組んだ。<br />
その躊躇いはランディに兄の面影を重ねているようで悪いと言う気兼ねからだ。<br />
目線を斜め下に下ろして、過去を振り返る。<br />
<br />
「兄貴が持ってきてくれたんだ、それ。なんかお守り代わりとか言って」<br />
「じゃあ俺がもらうわけにはいかねえだろ」<br />
「いや･･･ランディに持ってて欲しいんだ」<br />
「･･･そう言うなら、まあ構わねえけど、何でまた」<br />
「兄貴に、おれの大事な人を守ってもらいたいから･･･かな」<br />
<br />
ランディは豆鉄砲を食らったような顔をする。<br />
おれの方は普通に喋っているだけなのだが、どうもランディにとっては本来の意味と別の意味も含まれているように感じたようだった。<br />
大事な人ね、とランディは言い、急激に笑いが溢れた。<br />
<br />
「クク･･･どうしようもねえな、お前」<br />
「？何が」<br />
「いいや、何でも。この兄貴たらしはガイさんがいた時からか？」<br />
「兄貴は･･･確かに俺に甘かった気がするけど･･･」<br />
「しかしそんな石があったら下手に自分の部屋でエッチも出来ねえな」<br />
<br />
なんでさ、とおれが不思議に思って尋ねる。<br />
当たり前だろう、こんなものがあったら見張られている気がすると言う。<br />
俺の可愛い弟に手を出しやがって、そんな風に夢にでも出てきそうだとも。<br />
<br />
「じゃあ、受け取ってくれない？」<br />
「いんや、受け取っておく」<br />
<br />
おれはそれを聞いてホッとする。<br />
<br />
「ガイさんの想いがここにあるんだな」<br />
「うん･･･」<br />
<br />
兄貴の想いがここに残っていると思うと、不思議な感覚があった。<br />
弟想いの、敏腕の捜査官。その彼が仕事の合間を縫ってこれをおれに届けに来たと言う事。それは多分、いつも一緒にいられる証としての想いだったのだろう。<br />
肌身離さずこの手の中に兄の思いを抱くのが正しいのかとも思ったが、今は大切な人に抱かれている。<br />
だからこのおれを抱いてくれている人を守ってくれますようにと、祈りを込めたかった。<br />
<br />
<br />]]>
    </description>
    <category>アレキサンドライト</category>
    <link>https://cherryhoney.blog.shinobi.jp/%E3%82%A2%E3%83%AC%E3%82%AD%E3%82%B5%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%88/%E3%82%A2%E3%83%AC%E3%82%AD%E3%82%B5%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%88</link>
    <pubDate>Tue, 07 Jun 2011 01:17:52 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">cherryhoney.blog.shinobi.jp://entry/127</guid>
  </item>
    <item>
    <title>鳥かごの中</title>
    <description>
    <![CDATA[<br />
雨が、ひたすらにおれ達を打った。<br />
<br />
こんなことは初めてだった。<br />
打ち付ける肉の音、滴る体液、時折漏れてくるランディの喘ぎとひっきりなしに漏れる自分の喘ぎが交じり合ってそこだけ温度が高い気がする。<br />
冷えていくのに体の芯は熱を内包しておかしくなりそうだった。<br />
<br />
<br />
<br />
その日の支援要請を終えて帰路に着こうというところで、雨が降り出した。<br />
天気予報では一日晴れと言う事だったのに梅雨の時期の予報は当てにならない。<br />
アルモリカ古道の脇の木の下で雨をしのぎながらランディと空を見上げる。<br />
雨はいっかな止む気配がない。<br />
斜めに打ち付けてくる雨が体を濡らし、体温を奪っていく。<br />
梅雨とは言え寒くなってくる。<br />
息を漏らすとほのかに白くなったそれに溜め息が出た。<br />
隣に立っているランディは、何を思ったのかおれの前に立って体ごとこちらを向いた。<br />
<br />
「寒いだろ」<br />
「このくらいなら、別に」<br />
「強がるなよ、唇青くなってるぜ」<br />
<br />
そういうランディは血色の良い顔をしている。<br />
このくらい何でもないかのようだ。<br />
<br />
「そういう風に気を使うのは女の子の前だけにすれば良いだろ」<br />
<br />
自分でも随分棘のある言い方だったと思う。<br />
何でだったのだろう。<br />
たぶん、ランディが誰に対してもこうだから、と思ってしまったからかもしれない。<br />
おれだけが特別こういう扱いを受けているわけではないのだ、と言うのが気に入らなくてそういう言葉が出た。<br />
<br />
「何だよ、冷てぇな。冷えるのは体だけで十分だろ」<br />
「あ、その、ごめん･･･」<br />
「ま、男相手にこんな気遣いいらねえか」<br />
<br />
ランディはおれにも矜持があるとでも思ったのか、軽い口調でそう言うとおれの隣にまた戻る。<br />
嘘だ。本当は嬉しかった。そう言うタイミングも失ってただ黙るしかなかった。<br />
彼がいなくなった事で風と雨がもろに顔や体に吹き付けてきた。<br />
顔の水分を拭うが、それも間に合わないほど雨は叩きつけてくる。<br />
髪は雨でぐしょぐしょになって、ぺたりと頬に張り付いている。<br />
ランディを横目で見やるとそれは彼も同じようで、水滴の滴る髪をかき上げている。<br />
いつもきちんとセットされている髪が崩れて頬や首筋に張り付いていた。<br />
知らず知らずその首筋に目を奪われる。白い咽喉元を見ながら咽喉が鳴った。<br />
自分からつけた跡がわずかに覗いていたからだ。<br />
おれは慌てて目をそらす。<br />
こんな状況で何を考えているのだろう。<br />
元々、所有印なんて自分から付ける方ではなかったのに、この間睦んだ時に何故か付けてしまった。<br />
ランディはなんだよ、珍しいななんてそれを嬉しそうに受け取っていたが。<br />
そう言えばその時も叩きつけるような雨だった。<br />
違いがあるとすればその時は屋内で、今は屋外と言う事だけだ。<br />
<br />
「ロイド」<br />
<br />
急に名前を呼ばれて、反応できなかった。<br />
<br />
「な、なに？」<br />
<br />
慌てて返事をすると、ランディはおれを労わるように見ていた。<br />
ランディは大概している時おれを労わるように見る。<br />
視線がそれと同じで、ぶるっと身を震わせる。<br />
所有印を付けた事を思い出してしまう。そんな目で見ないで欲しい。<br />
<br />
「大丈夫か？」<br />
<br />
頬に濡れた手が触れる。<br />
顔の水分を拭うように何度も撫でられて、それだけで身が余計に震える。<br />
あの雨の日の情事を思い出してしまう。<br />
ランディを独占しようとしたあの一瞬を思い出してしまう。<br />
違う、あれはいつもの自分じゃなかった。<br />
<br />
「あ、の･･･」<br />
<br />
おれの狼狽など知らない風で、ランディはおれの腕を掴んだ。手首を親指の腹で撫でる。<br />
<br />
「かじかんでるぞ」<br />
<br />
確かにおれは腕が震えていた。寒さと、ランディに今触れられる緊張だった。<br />
ろくな返事が出来ず、ろれつも回らなくなっていると思われたのか、ランディはおれの体を自分のジャケットの中に無理やり引き込んでしまう。<br />
そして木の根元に座り込んで、ランディは雨に背を向け、おれとぴったり抱き合う。<br />
布越しの体温は徐々におれの冷えた体を温める。<br />
遮られた風雨はランディの背中に容赦なく降り注ぐ。<br />
ランディの胸に顔を当てた。ランディの心音が耳にうるさい。いや、これは自分の鼓動か。<br />
この鼓動が伝わっているかもしれないと思うと気恥ずかしくて、顔を上げると目線が自然とランディの首筋にいく。<br />
かあっと頭に血が上った気がした。<br />
なんだってこんな場面であの日が思い出されるんだろう。<br />
おれは無意識にランディの背中に腕を回していた。<br />
独占欲で満たされたあの日を思い出して。<br />
ジャケットの内側から忍ばせた腕を払うでもなく、ランディは余計におれの事を抱きしめてくる。<br />
<br />
「何でかな、」<br />
<br />
ランディはふと呟く。<br />
<br />
「雨の中のお前ってさらわれそうで、見てられなかった」<br />
<br />
俺の中に閉じ込めておきたくなる。<br />
<br />
ランディはおれの肩口に顔を埋めて囁く。<br />
そう言われて、余計に顔に熱が上る。<br />
耳元の低音に身を竦めた。<br />
<br />
「ランディのそれって独占欲なのか？」<br />
「さあ？」<br />
<br />
疑問を浮かべているようで、真実は知っている。そんな感じだった。<br />
濡れた髪や唇に口付けが降ってくる。<br />
ランディの唇も雨で濡れて唇が触れ合うたび微かな水音がする。<br />
うっとりしながらそれに身を任せていると、ランディは何か迷った顔をしておれに聞いてくる。<br />
<br />
「これ、お前初めて付けたよな」<br />
<br />
首筋を露にして、ランディは跡を見せる。<br />
見ていたことに気づかれていただろうか。<br />
<br />
「何か、あった？」<br />
「･･･分からないんだ」<br />
「なにが？」<br />
<br />
ランディはあくまで優しく聞いてくる。<br />
<br />
「独占欲が自分でも信じられないくらい湧き上がってくる」<br />
「はは、嬉しいねえ」<br />
「違う、その、そんな自分が嫌なんだ･･･でもランディは誰にでも優しいし･･･だから」<br />
「そんなことねえぞ」<br />
<br />
言葉を続ける前に間髪入れずに否定されて、鼻をきゅっとつままれる。<br />
<br />
「女の子に優しいのは男としての礼儀だし、それ以上じゃねえよ。お前と恋人になってから女の子との間に一線は引いてるし」<br />
「でも遊びに行くのはやめないだろ」<br />
<br />
ああ、こんな自分、嫌だ。<br />
<br />
「遊びに行く姿を見るたびに、おれの知らないランディがいるのが嫌になる」<br />
「じゃあ、今度から一緒に行くか？そんで俺の恋人ですって紹介しようか？」<br />
「い、いやそれは･･･」<br />
「そこで躊躇する程度なら、お前の気持ちも大した事無いのな」<br />
「なっ･･･！」<br />
<br />
そんなこと言われるとは思っていなかった。<br />
おれは自分でも珍しく感情的になる。<br />
<br />
「だって普通の関係じゃないだろ！」<br />
「普通って何だよ、そんな枠組みの中でしかお前は俺のこと見てないのか」<br />
「そうじゃないけど･･･」<br />
「そうだろ」<br />
<br />
普通の関係じゃないと言われてランディは怒っている。<br />
そんな簡単に人に紹介できる間柄ならこんなにも悩まないのに、ランディは何だってそんなに超然としていられるのか、おれにとってはそっちの方が不思議だ。<br />
突然、ランディは俺の服のジッパーに手を伸ばした。<br />
<br />
「どうせ人も来ねえだろ、思い知れよ」<br />
「ランディ･･･？」<br />
<br />
ランディはおれを立たせて林の奥に向かって背を押した。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
林の中に無理に連れて行かれて適当な木に体を押しやられた。<br />
<br />
「いや･･･こんなところで･･･っ」<br />
<br />
服の裾を捲り上げられ、先日つけられた跡も乾かないうちに跡を残される。<br />
雨が肌を打ち、寒いのに中心は熱を持つ。<br />
服の上から熱をまさぐられ攻められる。<br />
濡れた唇の狭間から淫猥な水音が響く。<br />
いつもより少し乱暴なそれに酷く感じる。<br />
ランディの独占欲にまみれながら、悦んでいる。<br />
こんな自分は自分じゃない。<br />
<br />
「愛し合うときに場所も何も関係ねえだろ、特にお前みたいな淫乱には」<br />
「酷い事、言うね･･･」<br />
「思い知れって言ったろ。お前は俺の独占欲を欲しがって発情してんだよ」<br />
<br />
ランディはおれに合わせるようにジャケットとベストを脱ぎ捨てる。<br />
雨に打たれてシャツはすぐに透けて、筋肉の隆起が見える。<br />
しなやかで、分厚いそれに抱かれるのだと思うと身震いする。<br />
たまらず、おれはランディの体を求めた。<br />
震えながら胸に手を伸ばす。<br />
ランディは満足気にその手を取った。<br />
<br />
「俺は好きだぜ、そうやって発情してるお前見るの」<br />
<br />
この間俺に跡を付けたときも、発情した目をしてたな、と言う。<br />
<br />
「んっ･･･や･･･」<br />
<br />
胸の突起を指で摘まれて背がしなる。<br />
背筋を撫で上げられ目を眇めながら声が漏れた。<br />
ランディは雨に濡れた髪をかき上げておれのズボンのベルトをはずす。<br />
下着ごとずらして熱を取り出して有様をしげしげ眺める。<br />
<br />
「いつもより感じてるんじゃねえの」<br />
<br />
おれのものはひくひくと震えて、先走りをこぼしていた。<br />
嬉しいんだ。どうしようもなく。<br />
こうして場所を選ばずに抱かれる事に興奮してしまう。<br />
誰かにはしないであろう事をされる事に体が悦ぶ。<br />
ランディはおれのものを口に含むと、口中で扱き始める。<br />
裏筋をたどり、先端との境目を強く扱かれ吸い上げられた。<br />
<br />
「あっ･･･そこ･･･はっ」<br />
「ここが良いんだろ？」<br />
「ふ･･･ぅ」<br />
<br />
ランディの口の中でおれのものはびくびくと脈打つ。<br />
それを楽しむように巧みに動かされる舌の感触に意識が集中してどんどん背筋から変な感触が沸きあがってくる。<br />
寒いはずなのに脇や膝の裏が汗をかき始める。<br />
ランディは箸休めでもするように、時折先端の柔らかい部分にぬたぬたと舌を這わせていた。<br />
それに焦れて腰を揺らすと尻を叩かれる。<br />
我慢しろ、そう言われていた。<br />
それでももう立っているのが限界だ。太ももからふくらはぎにかけてがくがくと震えている。<br />
崩れ落ちそうになるのを何とかランディの肩に手を置いてやり過ごしている。<br />
<br />
「はぁ･･･お願い･･･もう」<br />
「おねだり出来たら、出してやる」<br />
「････っ」<br />
<br />
もう十分ねだっていると思うのに。<br />
おれが逡巡している間にも、ランディの口はのんびりと熱を吸い上げる。<br />
感じる部分を避けて、でも時々そこを掠めて、イかないぎりぎりのラインを攻めてくる。<br />
おれは自分でも知らないうちに唾液がこぼれ始めているのに気づいた。<br />
苦しい。<br />
<br />
「い、イかせて･･･」<br />
「了解」<br />
<br />
ランディは思いのほかあっさりと了承するとおれを木の幹に向けて尻を突き出せ、と言った。<br />
<br />
「な、」<br />
「イかせて欲しいんだろ？」<br />
「ち、違、そうじゃなくて」<br />
「何だよ、こういう意味じゃねえの？」<br />
<br />
ランディはにやにや笑いながら、おれのズボンをさらに下げる。<br />
尻があらわになって、風が冷たく感じた。<br />
<br />
「言っておくけどお前だけ気持ち良くしようとか思ってねえから」<br />
<br />
一緒に善くなるのがセックスだろ？くすくす耳元で囁かれた。<br />
ランディは尻の感触を確かめるようにそこを撫でて、太ももの付け根辺りをさする。<br />
そして腰に腕を絡めてぐいっと引っ張られた。<br />
おれは木の幹に手を当てて、体勢を維持する。<br />
立ったまま尻だけを突き出すような格好を取らされて、おれは思わず抗議の声を上げた。<br />
<br />
「やだ、こんな格好･･･っ」<br />
<br />
おれはそう主張するが、ランディは構わずにおれの熱を握りこんで軽く扱く。<br />
そうしておれの後ろに指をあてがった。唾液で濡らされた指が雨に打たれて濡れた蕾を滑る。<br />
雨脚は先程よりずっと強くなっていて、もう互いにぐしょぐしょだった。<br />
雨で冷えた指が、一本ナカに入り込んでくる。<br />
温度差に身がびくりと震えた。<br />
<br />
「あ･･･っああっ･･･」<br />
<br />
おれは目を瞑る。しかし目を瞑るとそこにばかり意識が集中して、ランディの指が殊更ゆっくり入ってくる感触に涙が出てくる。<br />
ランディの指は中でイイところを探しながら、蠢く。<br />
入り口を広げるような動きに感じる。<br />
一本だけでは切なくて早くもう一本をねだるように腰を揺らすと、あっさり二本目が入ってくる。<br />
二本の指が中でばらばらの動きをする。ぬちぬちと雨の音と入り混じりながら聞こえてくる卑猥な音。それを歯を食いしばってこらえる。<br />
<br />
「我慢するなよ、声出せ」<br />
「だ･･･って、人が通るかも･･･」<br />
「こんな雨の中でヤってる奴がいるなんて誰も思わねえよ」<br />
「あっ･･･あっ･･･」<br />
<br />
ぐっと内奥を突かれる。<br />
ランディの長い指はちょうど先端がおれのイイところに触れる。<br />
これも体の相性の良さなのだろうと思うと嬉しくなる。<br />
そうしておれが悦んで体を明け渡しつつあると、ランディの熱がぐっとあてがわれる。<br />
反射的に衝撃に備えようとしたが、それは入り口で軽い抜き差しを繰り返すだけで、中に入ってこようとしない。<br />
<br />
「な、なんで･･･」<br />
「おねだり」<br />
「ま、また･･･？」<br />
「俺の事欲しいんだろ、そう言ってみろよ」<br />
「･･･入れて、よ」<br />
「どこに」<br />
<br />
そこまで言わせる気か。<br />
おれは少し腹が立ったので、もういいよ、と言ってランディのものを後ろ手で掴んだ。<br />
そして自らナカに導いていく。<br />
ランディは少し驚いているようだったがおれの動きに任せる。<br />
<br />
「ん、んんっ」<br />
<br />
自分で挿入すると言う事はあまりした事がない。<br />
だから、最初は滑って上手く行かない。<br />
先端が入っては抜けてを繰り返す。何度かそれを繰り返しているとランディの手がおれの足をもう少し開かせると、太ももを撫で上げながら入り口にたどり着く。入り口を親指でぐっと広げられた。<br />
これで挿入しやすくなっただろ、と言われたが、ランディのものは何度も空回る。<br />
おれの腕は早く欲しくなって震えていった。<br />
そのせいで余計に入らない。<br />
<br />
「ん･･･ふっ･･･もう、も･･･入れてよ･･･お願いだから･･･」<br />
<br />
自分でも呆れるくらい懇願していた。<br />
でも冷静さなんかどこかに売り飛ばした。<br />
早く貫いて欲しいとしか思えない。<br />
おれは入り口を開いていたランディの手を払って、自らそこを広げる。<br />
<br />
「ここ、ここに･･･入れてぇ」<br />
<br />
ランディにはどう映っているんだろう。<br />
自分で広げて、ねだって。きっと酷く淫乱な光景に映っているのじゃないだろうか。<br />
そう思うと体の高ぶりが増した。<br />
ランディは後ろでくすくす笑っている。<br />
<br />
「上出来だ」<br />
<br />
そう言うと、おれの腰を抱えてゆっくり内部に入り込んでくる。<br />
雨に打たれながら中心がどんどん熱を帯びていく。<br />
腰の辺りに鈍い快感が走りぬける。<br />
<br />
「おねだりっていいもんだな、特にお前みたいな奴が言うと」<br />
「はぁっ、あっ！」<br />
<br />
求めていたものがナカに入ってきたことで、おれの口からは甲高く嬌声が上がる。<br />
雨の音にもかき消されないほどそれは林の中に響いた。<br />
ランディは誰か違う人にもねだられた事があるような口ぶりだった。<br />
それに内心ざわつく。<br />
おれだけ見ててくれないか。<br />
おれの前ではせめてそういう素振りは見せないでいてくれないか？<br />
腰を揺すぶられながら、首だけ後ろを向く。<br />
するとランディはおれを凄く労わるように顔を覗き込んでくる。<br />
おれの不安を覗き込むように。<br />
それが心を突き刺す。<br />
俺の心の痛みを上塗りするように、ランディのものが内壁を抉った。<br />
<br />
「ああぅ･･･っ、っ、おれだけじゃない、のなら、そう言ってくれ･･･」<br />
「何の事だ？」<br />
<br />
ランディは動きを止めると、おれを見る。<br />
<br />
「おれ以外にこういう事するのか？」<br />
「するわけねえだろ」<br />
「特にお前みたいな奴が言うと･･･って言ったじゃないか･･･それって他の誰かも知ってるって事だろ？」<br />
<br />
ランディは迂闊な事を言ったと思ったのか、あー･･･と声を漏らす。<br />
<br />
「昔の事だ、」<br />
「でも昔そういう事があったんだろ、比較されてるみたいで、嫌だ」<br />
「すまん･･･」<br />
「誠意がない」<br />
「悪かった」<br />
「謝罪してるつもり？」<br />
「はあ、どうすれば良いんだよ」<br />
<br />
それはおれにも分からない。<br />
ランディがおれだけを見てくれれば良いのに。という独占欲は、きっと際限がない。一瞬はあったとしても、いつまでも満たされる事はないだろう。<br />
おれの迷いを見透かしてランディは急におれの前を握りこんだ。<br />
<br />
「とにかく、これ、どうにかしたいだろ？」<br />
「････っ」<br />
<br />
その低音を耳元で喋るのはずるい。<br />
<br />
「話は後で」<br />
<br />
耳に軽く口付けてランディはまた動き出す。<br />
互いの吐息や喘ぎが雨に濡らされて溶け消えていく。<br />
内部で暴ずる感触に身震いしながらおれは木に白い体液を飛ばした。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
「まったく、こんなにずぶ濡れになって･･･」<br />
<br />
エリィが呆れ顔でおれ達の服を引っぺがす。<br />
支援課の入り口でびしょびしょの上着達はティオがツァイトと一緒になってランドリーに持っていった。<br />
上半身裸にさせられて、渡されたタオルで頭を拭く。<br />
さすがに冷えすぎたのか、腹に手を当てると手が恐ろしく冷たかった。<br />
全身濡れ鼠になったもので、もう良いか、とアルモリカ古道から走って帰ってきたのだが女性陣からの反応は冷ややかだった。<br />
課長に至ってはランディに鼻を寄せて、ふん、と言った後に「お盛んだな」と呟いていた。<br />
何の匂いがしたのか知らないが課長にはどうやら何もかもばれているらしい。<br />
<br />
「さ、ズボンも脱いじゃって」<br />
「えっと、さすがにそれは･･･、遠慮しとくよ」<br />
「じゃあとっととシャワーを浴びに行きなさいな。ランディは後で良いわよね」<br />
「ああ、こいつのが冷え切ってるからな」<br />
<br />
体の露出が激しかったからと暗に言う。<br />
おれは見えないようにランディの背中をつねった。<br />
<br />
シャワーを浴びながらさっきのランディとの話の続きを考えた。<br />
古道から帰ってくる時は走って急いでいたからそんな事聞く余裕もなかった。<br />
独占欲にまみれて、ランディを怒らせたり呆れさせたりしただろう。<br />
情けなくなって俯いて壁に手をつく。熱いシャワーが体を温めるのに任せていると、突然扉が開いた。<br />
<br />
「誰？」<br />
<br />
おれしか入っていないのに、誰が来るかなんて分かりきっている。<br />
<br />
「お前シャワーなげーんだもん。冷えたから一緒で良いだろもう」<br />
<br />
そう投げやりに言って入ってくると、おれを脇にどかして頭からシャワーを浴びた。<br />
おれが呆然としていると、シャンプーを手に取り無造作に洗い始める。バーベナの香りがシャワー室の中に広がった。<br />
それを洗い流して、ランディはおれを見る。<br />
<br />
「なんだ、変な顔して」<br />
「あ、いや･･･さっきは、何かごめん」<br />
「何に対して謝ってるんだ？」<br />
「おれ、別にランディの行動を制限しようとかそういうつもりじゃなくて･･･」<br />
「でもお前だけ見てて欲しいんだろ」<br />
<br />
そうとは言っていないのに、見透かされている。<br />
<br />
「うん･･･」<br />
<br />
シャワーがざあざあ流れていく。<br />
水がもったいないな、と頭のどこかで思った。<br />
ランディの顔をまともに見れず、俯いたままでいると顎を取られた。<br />
真っ直ぐおれを見つめてくる碧い瞳は、深い水底のようだ。吸い込まれそうになる。<br />
シャワーの湯がランディとおれの体を打つ。<br />
さっきとは違って体がどんどんぬくまっていく。<br />
ランディの頬を伝う一筋の雫を目で追うと豊かに隆起した肌を滑り落ちて、下半身の茂みの辺りでどこかへ失せた。<br />
水滴は留まらずおれ達の肌を滑り続ける。<br />
おれを壁に押し付けたランディの濡れた唇が触れてくるまでそんなにかからなかった。背中が冷たいのを気にしてかランディはおれの背中に手を回して壁との間に隙間を作る。<br />
<br />
「古道でも言ったけどな、そういうお前、俺は好きだぜ。発情してるみたいでな」<br />
「･･･、その表現どうにかならないのか･･･」<br />
「間違ってはねえだろ」<br />
<br />
それに対して否定の言葉が出なかった。<br />
古道の林の中でランディを求めたおれは確かに発情していたように思う。<br />
<br />
「･･･まあ･･･、古道では言えなかったけど、おれはランディに対してそう感じてる」<br />
「そうって？」<br />
「発情してるよ」<br />
<br />
おれは顎を取られているので顔をそらせなかったが、何とか視線だけは別の方向に逃す。<br />
<br />
「それが独占欲の大元なわけだ。お前の場合。呆れるくらい抱いたら収まりがつくかね」<br />
「知らないよ･･･、そんなの」<br />
<br />
おれが顔を赤くして、ランディの手を顎から払うとランディはにやにや笑った。<br />
<br />
「クク、まあそれは冗談にしても。良いんだぜ、好きなように俺のこと求めれば。いくらでも応えてやる」<br />
「おれは･･･ランディの行動とかそういうの、制限したくないんだ･･･」<br />
「それはお前さんの理由であって俺の理由じゃない」<br />
「でも･･･」<br />
「ここまで言ってもわからねえのか？」<br />
「何が･･･？」<br />
「俺もお前と同じ、ずっと発情してる。お前の行動を制限できるならずっと腕の中に閉じ込めておきたい」<br />
<br />
ランディはそう言っておれの耳をべろっと舐めた。<br />
<br />
「ひゃ･･･っ」<br />
<br />
高い声を上げて、思わずランディの顔を押しやった。<br />
ランディはその手を掴んでくすくす笑う。<br />
<br />
「嬉しかったぜ、独占欲の塊みたいな俺と、真逆っぽいお前が同じ方を向いてるなんてな」<br />
<br />
おれはその言葉を聞いて何だか腰が抜けてしまう。<br />
安心したのか、呆然としたのか、はたまたこのまま二人で深みにはまっていくのではないかと言う恐怖なのか、その全てなのか。<br />
ずるずるとその場に崩れる。ランディはおれに合わせてしゃがみこんで、深く口付けてきた。<br />
濡れた髪、濡れる肌、熱くなる舌。<br />
おれは水分を多量に含んだ髪が垂れる首に腕を回す。<br />
痺れるほど口付けて口を離すと、ランディがおれを抱く。<br />
<br />
「独占欲なんて際限の無いものに振り回されるのも、お前となら悪くないんじゃないかって、思うな」<br />
<br />
それはおれも同じだと、頭の片隅で反論の声を上げる理性を無視してうなづいた。<br />
ランディの声が段々耳元に近づいてくる。<br />
シャワーの音より確かに耳を打つ。<br />
<br />
『愛してる』<br />
<br />
束縛の色の濃いその言葉がおれの胸を安堵させた。<br />
<br />
おれも愛してる。<br />
何より、重く、深く。<br />
<br />]]>
    </description>
    <category>鳥かごの中</category>
    <link>https://cherryhoney.blog.shinobi.jp/%E9%B3%A5%E3%81%8B%E3%81%94%E3%81%AE%E4%B8%AD/%E9%B3%A5%E3%81%8B%E3%81%94%E3%81%AE%E4%B8%AD</link>
    <pubDate>Mon, 30 May 2011 06:01:51 GMT</pubDate>
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  </item>
    <item>
    <title>明日はあるのか</title>
    <description>
    <![CDATA[<br />
<br />
お前がその気なら俺はいつでも、そうは言ったがあくまであの時は真実をぼかした冗談のつもりだった。<br />
それが今どうだろう。<br />
俺の冗談を真実と見抜いたこいつは俺に好きだと言ってきた。<br />
押し倒されても抵抗しない俺の動きを肯定と取って、抱いた。<br />
それがもう3度続いている。<br />
<br />
<br />
<br />
イく瞬間、快感は激しい耳鳴りをもたらす。<br />
快楽が波のようにどおっと押し寄せて、むせび泣きは徐々に増し、ロイドの背中に立てた爪が食い込んでいく。<br />
俺は自分でも信じられないことに嬉し涙を流しながらイッた。<br />
ロイドに抱かれる時、嬉しいと思うのは今回が初めてではない。<br />
最初は言葉にならない感情だった。抱かれるたび感情が膨らんで行くので、それを何かとして表現しなくては心に整理が付かなくなった。<br />
だが、俺が泣くなんておかしいだろ？そう思って笑って問うと<br />
本人には嬉しいなんて言ってないが、こいつは無意識に言った。<br />
<br />
「だって嬉しいんじゃないのか？」<br />
<br />
ランディはイくとき泣きながら少し笑って俺の事を見るだろう？<br />
好きだって言われているみたいで、嬉しい。<br />
ロイドはそう言った。<br />
その観察力は、さすが捜査官。<br />
<br />
ロイドはイッた後も俺の中に入ったままいつもの冷静さを欠いて、らしくもなく熱くなっている。<br />
俺の頭を掻き抱いて熱のこもった声で好きだ、と繰り返して言う。<br />
その様子が可愛いと思う。愛しいと思う。<br />
ありえない感情だった。<br />
戦場ではただ火照る熱をもてあまして貫かれる痛みにさえ悦びを見出して、けれど心は冷え切っていたのだから。<br />
ロイドはやがて俺からずるりと出て行くと、体は大丈夫？と問いながら満足気な顔を見せて頬にキスした。<br />
何で口じゃねえんだよ。<br />
ロイドの頭を捉まえて唇を舐った。<br />
察したのか、深く口付けてくる。<br />
くちくち音を立てて舌が絡む。<br />
ロイドの舌使いは当然ながら上手くない。<br />
俺が唾液を送り込んでも上手く飲みきれずにこぼすし、歯がぶつかることもしょっちゅうだ。<br />
だがそんな初々しいのがたまらない、と思う。<br />
抱かれているのは俺のはずだが、まるで抱いているような錯覚を起こす。<br />
年かさの売春婦にでもなったような気分だ。<br />
ロイドは常に一生懸命に俺に愛撫を施す。その動きの一つ一つは拙いが慈悲に満ちている。<br />
俺がいた世界の中でこんな眩い存在を俺は知らない。<br />
人を抱くことに思いやりを持たれたり、戦の後に火照る以外の体の熱なんか。<br />
<br />
俺は煙たがられるのを承知で煙草に火をつけて、紫煙を吐き出す。<br />
<br />
「今日もお盛んだったな」<br />
<br />
抜かずに3度もやるんだから若いよなー。<br />
俺も構わずそれに付き合うだけの体力は当然あるわけだが。<br />
笑ってロイドの頭をくしゃくしゃにすると、ロイドは心地良さそうにそれを受け入れる。<br />
<br />
「ランディって感じやすいから、無茶させてないか心配なんだけど」<br />
<br />
獣じみた嬌声を上げる俺を知ってから、抱いた後によく言われる台詞。<br />
俺の過去を振り返れば、上等な抱かれ方してると思うけどな。<br />
<br />
「してる時のランディって、その、色っぽいからおれも夢中になっちゃうし」<br />
<br />
ロイドは顔を赤くしてそう言う。可愛いねえ。<br />
ああ、そういや猟兵時代にもそんなこと言われたな。<br />
こいつには言わないけど。<br />
猟兵時代は色んな奴の相手をした。<br />
俺に最初熱の収め方を教えてくれた男がいた。<br />
そいつが死んでからと言うもの、俺は今日はこいつ、明日はこいつと相手を変えた。我ながらただれた生活だったと思うが、幼い頃に刷り込まれた抱かれる感覚は戦の昂ぶった熱を抑えるには打ってつけで、抱かれることに違和感などなかった。<br />
ロイドは寝煙草をする俺の煙草を取って、危ないからと自分の口に咥えた。<br />
吸い込むとむせるだとかでふかすだけだが、俺といることですっかり悪影響されている。<br />
<br />
「ランディは、その、おれが初めてじゃないんだよな」<br />
<br />
ロイドは煙草を灰皿に押し付けて尋ねてくる。<br />
その言葉にチリ、と胸が焼ける。確かにただれてたよ。<br />
無邪気な言葉が胸を刺した。<br />
新しく点けた煙草の煙を苛立ちまぎれに顔にかけるとロイドはえほえほむせながら何するんだと言う。<br />
<br />
「くだらねーこと聞くな」<br />
「え、ごめん･･･」<br />
「今はお前だけだ」<br />
「これからは？」<br />
<br />
これから？<br />
考えたこともない。<br />
抱かれると言う行為自体刹那的なものだと思っていた。<br />
ずっと、これから先こいつに抱かれる？<br />
こいつはずっと俺といることを望むんだろうか。<br />
変なやつ。<br />
<br />
「･･･さあな」<br />
<br />
笑わずに言うと、ロイドはしゅんと子犬のようにうなだれる。<br />
俺はそうなる事を確信していた。可愛い姿だ。<br />
<br />
「まあ、しばらくはお前といるさ。その間に俺をモノにしろよ」<br />
<br />
煙草を吸いながら目を伏せた。<br />
駆け引きというやつを知らないロイド。<br />
嘘と騙しあいと戦場の中にいた俺。<br />
正直俺には不釣合いな真っ当さを持っているのだから、火遊びにしておけば良いのに、と思う。<br />
こいつは俺にとって真っ直ぐすぎる。<br />
遊び相手には出来ない。<br />
かと言ってずっと傍にいてやれる自信もない。<br />
<br />
「ランディはおれのこと好きじゃないのか？」<br />
「それは俺よりお前さんのほうがよく知ってるんじゃねえの」<br />
「それって、好きって事？」<br />
<br />
肝心な言葉は簡単に口には出来ない。<br />
愛しいし可愛いと思う。<br />
ただ、好きなのかどうか自分の心に決着は付かない。<br />
だいいち傍にいてやれる自信もないのにぬか喜びさせたくはなかった。<br />
でも<br />
<br />
「お前の頑張り次第でお兄さんもメロメロになるかもな」<br />
<br />
真実に嘘はつけない。<br />
俺は、ほんの一瞬、どこまでも続く道の可能性を考えてしまった。<br />
<br />
この眩い存在なら、俺の過去を全て照らし出して埋葬してくれるのではないか、何もかも塗り替えてくれるのではないだろうかと思ってしまった。<br />
<br />
ベッドの端に座っていたロイドが立ち上がりかけたのを見て思わず抱きしめる。<br />
ロイドはしっかりと俺を抱き返してどうしたんだ？と問う。<br />
傍にいて欲しい。<br />
こいつに依存してしまいそうになる心を押さえつけ、その問いには答えなかった。<br />]]>
    </description>
    <category>明日はあるのか</category>
    <link>https://cherryhoney.blog.shinobi.jp/%E6%98%8E%E6%97%A5%E3%81%AF%E3%81%82%E3%82%8B%E3%81%AE%E3%81%8B/%E6%98%8E%E6%97%A5%E3%81%AF%E3%81%82%E3%82%8B%E3%81%AE%E3%81%8B</link>
    <pubDate>Wed, 25 May 2011 23:37:20 GMT</pubDate>
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  </item>
    <item>
    <title>毎日君に恋してる３</title>
    <description>
    <![CDATA[「で･･･？聞かせてもらおうか」<br />
<br />
ランディは、冷静な声だが怒っているみたいだった。<br />
当たり前だよな。<br />
おれの勝手な思い込みであんなことして。<br />
ランディのでかい手がおれの肌をまさぐる。<br />
丁寧に跡がないかどうかなんかを検分しているらしい。<br />
上だけだったと主張しても聞いてもらえず、身包みはがされて全身くまなく見られる。<br />
首筋に付けられた跡は速攻で見つかったので、すぐさま上塗りされた。<br />
<br />
「それよりランディ、よくおれの居場所分かったな」<br />
「ん、まあカンだ」<br />
<br />
どうも西通りを歩いているおれを見つけて慌てておれを追ってきたらしい。<br />
歓楽街にいるなんて良く分かったものだ。おれの行きそうな場所でもないのに。<br />
周辺で人に話を聞いたところおれらしい人物が緑色の髪の少年と一緒にミレニアムに入ったと聞いたらしい。<br />
そこで連れがワジだと察して青くなったとか。<br />
警察手帳を見せて乗り込んできたと言うのだから職権乱用も甚だしい。<br />
<br />
おれは中央広場から裏通りを抜けてワジに出会った話をする。<br />
そこでそのままミレニアムに入ったのだと言った。<br />
そうするとランディは重要なのはそこじゃねえだろ、と言う。<br />
まあ確かに重要なのは、何で事ここに至ったのかだろう。<br />
<br />
「一応言っておくけど、ランディも悪いんだからな」<br />
<br />
責任転嫁かな、と思ったけれど言ってしまう。<br />
そもそも不安にさせなければこんなことにだって。<br />
いや、違うかな。<br />
それは屁理屈だな。<br />
ランディはそれを聞いておれの顔を見る。<br />
肌をまさぐるのをやめて、おれの横に寝そべった。<br />
<br />
「ってゆーと、何だ？」<br />
「やっぱり訂正。ランディは悪くないかも･･･」<br />
「かもって何だよ、はっきりしねえな。事の顛末聞かせろ」<br />
「そもそもを話すと恥ずかしいんだよ」<br />
「良いから、聞かせろ」<br />
<br />
有無を言わせない碧い目がおれを刺す。<br />
もごもご口の中で言葉を出すか出すまいか迷っていると、ランディは焦れたようにおれの首筋に噛み付いてきた。<br />
<br />
「いっ･･･」<br />
「早く言え、でないと襲うぞ」<br />
<br />
下腹部の茂みに手を伸ばされて、慌ててそれを止める。<br />
息を吸い込んだ。<br />
<br />
「･･･ランディ、おれの事好きって言ったことある？」<br />
「あるだろ、何度も」<br />
「ベッド以外で聞いてない」<br />
「え」<br />
<br />
ランディはしまったと言うような顔をする。<br />
<br />
「それに、今日、間違っても男と付き合うなんてないって」<br />
「あー･･･。なに、お前が沈んでた原因ってそれ？」<br />
<br />
ランディはちょっと困ったような顔で頬を掻いた。<br />
なんて事ない理由と言われたような気がして、おれはむっとする。<br />
<br />
「十分、大事」<br />
「意外と･･･、お前不安になりやすいんだな」<br />
<br />
ランディ曰く、もう付き合って日も経つし、俺の気持ちやら何やらは分かってるだろうと思ってたとのこと。<br />
自分でも伝えた気でいたし、と言う。<br />
<br />
「まあ、そりゃ何て言うか犯人のない事件みたいなもんだな」<br />
「誰も悪くないってこと？」<br />
「そう。逆に皆悪いとも言えるけどな。でも言い出したらきりがねえし」<br />
「そう･･･」<br />
<br />
そう言われると、もう何も責められなくなる。<br />
ランディはワジとのことも責めるつもりはないらしいし。<br />
<br />
「だけど、･･･俺が悪かった」<br />
「え？」<br />
「好きだぜ」<br />
「あ、･･･え」<br />
「あと、今日言った言葉はお嬢達への目くらましだ」<br />
「そう･･･」<br />
<br />
唐突な告白にろくに返事も出来なかった。ただ顔を赤くする。<br />
ワジに抱かれそうになっていた時の剣幕を見ればランディの気持ちなんてすぐ分かった。<br />
おれを追いかけてわざわざ来てくれた事も。<br />
それだというのに、おれはやってはいけない事をしてしまった。<br />
<br />
「おれ、最低なんだ」<br />
「ん、何がだ」<br />
「ワジに抱かれたら、ランディはどんな反応するかなって、思ってた」<br />
「まあ･･･ご覧の通りだったけど、な」<br />
<br />
確かにランディの勢いは凄かった。<br />
裏通りのチンピラと言っても過言ではない。<br />
でもそれならなんで。<br />
<br />
「おれのこと、責めないの」<br />
「責められたいのか」<br />
<br />
どうなんだろう。責められたら少し気が楽になるというのはあるかもしれない。<br />
それに責められればおれだって言いたい事が言える。自分だけが罪悪感にさいなまれずに済む気がする。<br />
おれを好きだという割にはあまりにあっさりとし過ぎている気がするし。<br />
<br />
「正直はらわたが煮えくり返ってる。ワジを殴って良いんなら、そうしてたろうし、お前のことだってそんなに信頼無かったかなって失望したってのもある」<br />
「そうだろ･･･なら何でそんなに冷静なんだよ･･･」<br />
「俺がお前を責めないのは、その方がお前にとって痛いだろうと思うからだ。大体、起こっちまったもんは仕方ねえし、仮にワジにあのままされてたからって俺の気持ちは変わらないだろうし。ワジの方が良いって言われたってそのまま身を引けるほどお前に執着してないわけでもない」<br />
<br />
ランディはおれの頬を包んで、口付ける。<br />
舌を絡めると、ああそうだこの感触が欲しかったと思う。<br />
つうと伸びて行く銀糸を眺めていると、ぎゅうっと抱きしめられた。<br />
それに、と耳元でランディが囁く。<br />
<br />
「一方通行でも良いんだ、俺はお前が好きなんだ」<br />
<br />
おれはそれを聞いて、おれと同じなんだ、と思う。<br />
好きな人の前では必死で、みっともなくもなって、でもそれが酷く愛しい。<br />
<br />
「不思議だな、恋愛って一方通行なものかな」<br />
「一方通行が同じ方向を向くと恋人になるんだろ」<br />
「そう、か」<br />
「で、お前さんの答えは？」<br />
<br />
そんなの、決まっている。<br />
<br />
「好きだよ。ランディの気持ちが素直に聞けなくて怖くなるくらい」<br />
「今度からは素直にぶつかってきてくれよ、頼むから」<br />
<br />
あんな事二度とごめんだ、とランディは言った。<br />
<br />
「分かったよ、ごめんね」<br />
「分かればよろしい」<br />
<br />
ふふ、とおれが笑うと、ランディは何かストッパーが外れたみたいにおれの体に手を伸ばしてくる。<br />
<br />
「時間も無い事だし、そろそろ、な？」<br />
「するの･･･？今日は夜出かけるんじゃなかった？」<br />
「おれがふらふらしてるのなんて、しょっちゅうだ。気にされねえよ」<br />
「そう･･･？」<br />
<br />
ランディはそう言っておれの胸に口付けてくる。<br />
求めていた感触に身を委ねて、暮れなずむ空の色に目をやって、おれはゆっくり目を閉じた。<br />
<br />
<br />
<br />
毎日君に恋してる。<br />
だからこれからは、馬鹿みたいに毎日愛し合おう。<br />
<br />]]>
    </description>
    <category>毎日君に恋してる</category>
    <link>https://cherryhoney.blog.shinobi.jp/%E6%AF%8E%E6%97%A5%E5%90%9B%E3%81%AB%E6%81%8B%E3%81%97%E3%81%A6%E3%82%8B/%E6%AF%8E%E6%97%A5%E5%90%9B%E3%81%AB%E6%81%8B%E3%81%97%E3%81%A6%E3%82%8B%EF%BC%93</link>
    <pubDate>Tue, 24 May 2011 05:18:36 GMT</pubDate>
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    </channel>
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