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一番好きなのは、こういう嵐の夜の二人きり。
耳を支配する轟々と鳴り響く雷鳴と、風雨の荒れ狂う音。それに紛れて極近くで相手の息遣いと体温が、外の音以上におれを支配していると言う確かさ。
たとえ抱かれなくても腕の中にあるだけで満足しそうになる。
こいつが逃げない事が分かるから。
「檻みたいだ・・・」
背中の方に腕を回しておれを後ろから抱く弁慶の身体をまさぐった。
頭の方からその長い髪を引き出して自分の方に持ってくる。
「檻・・・?」
弁慶はおれを引き寄せる。手伝うように身体をずらしてぴたりとくっ付く。首筋に唇が寄ってきた。
「雨の・・・、檻」
「良いですね」
「そうか?」
「君を放さずにいられそうだ」
髪を引っ張った。
弁慶は痛いですよ、なんて言いながら腕の力を強くする。
この嘘吐きが何を言うんだろうか。
閉じ込められていないと、あんたは留まれない。
おれじゃあんたを引き止めたくても引き止められないのに、あんたは外の世界の理由でここにいたりいなかったりする。
放さずにいる?違うだろう。放れられるようになったら行っちまうくせに。理不尽だ。
「どうしたんです・・・小さい子みたいですよ」
弁慶の指先が目元を拭う。
泣いてるなんて知らない。こんなもの知らない。おれのせいじゃない。あんたのせいだ。
「あんたのせいだ・・・」
握り締めた腕が温かい。
この熱が放れるのが怖い。
一人で寝る夜が嫌い。
嵐の夜に、あんたがいない事が嫌だ。
「ヒノエは嵐が怖いんですね、」
「そうだよ。ガキだから」
「大丈夫・・・、僕がいます、」
嵐じゃない。それのせいじゃない。
あんたがいない嵐の夜が嫌いなんだ。
あんたがいるから嵐の夜が途端に好きになるんだ。
「嘘・・・、嵐なんか怖くない・・・」
「違うんですか」
「違う・・・」
「でもこんなに震えてる」
弁慶の手が腕を摩る。
あんたがいなくなる事が怖い。
傍にいてほしいって強請れない事が悲しい。
多分言ったら、あんたははぐらかすって分かってるから。
「大丈夫、」
傍にいて。
ずっと、もっと。
「どうしたんです?」
強請るように腕を掴む。振り返って口付けを強請る。
「もっかい・・・、」
してほしい。
もっと、もっと奥まで入り込んで、おれの全部をその手に収めてほしい。
「大丈夫、ここにいますよ、」
弁慶は少し笑っておれの体をまさぐり始めた。
おれは、きっと明日にはいなくなる事を分かりながら、今を強請るしか出来ない事が悲しくて嬉しくて、泣き喘いでいた。
嵐の、夜に。