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はしゃいで騒ぎまわった後の部屋は猪口や酔い潰れた体がごろごろしていている。
ぱかりと目を開けたところでその様を見ながら、自分も良い様に酔って寝てしまった事に気づいた。
目の前に将臣のものらしき脚がいて、そのすぐ下には乗っかられて苦しそうにする譲の太股がある。器用に重なって寝ている兄弟の姿を脚から上に向かって見ていくと、薄暗がりによく似た寝顔が見えた。

将臣がちょっとでも頭をずらせば傍らに置かれた譲の眼鏡が潰されそうだ。
少し将臣の脚をくすぐってやったら・・・などと、後の兄弟喧嘩の火種を思いついて悪戯心で手を伸ばそうとした。すると、誰かの腕が自分を抱き枕にしているらしく腕は動かない。
起こさないようにその腕を払おうとすると、逆により強く引き寄せてきた。むっとする腹の虫を抑えてせめても誰かを確認しようと身を捩ると、手が無意識にしてはあざとく動いて下半身を弄りだす。

手の慣れた感覚にすぐ誰かを察して、今度は遠慮なく振り払おうとすると、その手はあっさり縫いとめられてしまった。



「おい・・・っ」
「だれもおきやしません、て」



舌を回すのも億劫そうにゆらゆらした喋りで耳たぶに齧りつかれる。酒の熱を帯びた舌が熱い。ぞわぞわと背中に上ってくるものを踏み潰したい思いでいながら、縫いとめた手をぎゅうと握った。


「うたげは、おわってから、ほんばん・・・ですから」


声を抑えて下さいね、などと言っておきながら手は容赦するわけではない。酔い潰れているとはいえ、まさか皆が寝ている真中でやるのだろうか。さすがに焦りながら、でもどうにも抜け出す気がそこまで起きない。

一応のように足で脚を蹴りやっても、今度はしがらんで来るものだからなお動きが取れない。
口を弁慶の手が塞いで、着物の中の熱を直接弄られる。文字通りがんじがらめにされて、抜け出そうとする意思がそこまでなくても泣きたくなった。


「ぅ・・・っ、ふ・・・、っ」


ふやける程ねちこく耳たぶを食みながら、中心を弄る指が先端の過敏なところをぐちぐちと擦り上げる。
目をきつく瞑って、押し寄せてくるものに流されるように、けれど流されきらないように堪えて腰を揺らす。
自分の先走りで弁慶の手は濡れてるのだろうか、などと思ったら背筋を熱いとも冷たいとも言えない感覚が通り抜けて、自分の足先が畳を引っかいたのと同時にあっけなく達してしまった。
同時に口から外された手を引っつかんで爪を立てる。

「いたた、いたいですって・・・」
「・・・少しは場所を考えろ」
「ヒノエ、」
「あ?」


生返事のようなものをするかしないかのところで、体が宙に浮く。
いつも思うのだが、このいかにも華奢な体躯でどうして馬鹿力なのか分からない。
横抱きにされて上手く均衡を取れずに弁慶にしがみつくと、彼は気を好くしたらしく軽い足取りで足元の物を避けて部屋を出た。


外の夜気がひょう、と鼻っ面を叩いて通る。目をやった庭は一面の雪がチラチラと音を描くように月光を反射している。無音の世界に渡殿を歩く弁慶の足音だけが木霊して、妙にそれが嬉しいような気がした。


「下ろせよ、歩けるから」
「嫌ですよ。体がようやくすこうし柔らかくなったのに、勿体無いじゃないですか」
「なんだよ、それ」


可笑しくて笑うと覗き見た弁慶は至って真面目な顔をしていた。
柔らかいって、なんだよ。おれには分からない事を弁慶はよく言う。
さっきみたいな場所でおれを好きなように弄くり倒すのだっておれには良く分からない。
いつだったか将臣とそういう話をしていた時は、将臣はスリルとか嫌って言うのが良いとか言っていたけど、弁慶はどうもそういうのじゃない気がしてならない。
おれが抵抗しないのを確かめているような気がする。


「あんたさあ、絶対って信じてる?」


渡殿を過ぎたところの部屋におれを放り込んで布団を引っ張り出している弁慶の髪を引っ張る。
おれはこういう時弁慶が必ず率先して動くもんだから様子をぼうっと見ているだけだ。何もしなくてもこいつがしてくれる。まぐわってる時もおれが何もしなくてもこいつは勝手に気持ち良いようにしてくれる。耳からも体の中からも侵食されていく心地良さにおれは乗るだけだ。


弁慶は髪を引かれすぎて痛いですよ、なんて言いながら上掛けを一枚おれによこした。


「敷布団、無いみたいなんですよね」
「あ、そ」


尻の下に上掛けを引いたところで、弁慶は引っ張り出した上掛けを被りながらおれに覆いかぶさってくる。
弁慶はおれに口付けて、軽く中に舌を侵入させて出て行く。


「信じていますよ、」


唐突な言葉がさっきの返事だと気づいて、先を促す。


「絶対って、安易な言葉ですから」
「簡単なものは簡単に信用できて、簡単に翻せる、そういう事?」
「皮肉を解釈してくれなくて良いですよ。・・・君の言う絶対は、絶対的な何かという事ですか」
「まあ、そう」
「その絶対的な何か、を、信じるかどうか?」
「そう、」
「・・・・、馬鹿な子ですね」


そう言って前髪をかきあげる。
額に落ちてきた唇がいささか冷たい。
酒の熱は少し落ち着いてきたのだろうか。


「今の質問だと対象があって初めて信じるか信じないかと言う話になります。そんなに抽象的じゃあ、答えようも無い」


腹の中に理屈の重石が置かれてすっかり熱が冷える。
期待に沿わない答えを頂いて、おれはすっかり萎れてくる。そんなの我が侭だと知っていても理屈じゃない。
着物の中で糸を引いている先ほどの残滓を早く始末して寝付いてしまいたくなった。


「君は馬鹿な子じゃあない、ただ、質問の方向をそらす時がありますからね、」
「・・・、」
「そうむくれないで下さい」
「うるせえ」
「まあ、だから、君の質問の意図は違うんじゃないですか」
「それ以上言うな」
「はいはい、」


弁慶は時々こうやって理屈で攻めてくる。カワイイコトを聞きたいとか、素直でないと損をするとか、そういう言葉でもっておれがしてやられた例は少なくない。だから適当なところでこういう時は切ってしまう。
無性に腹立たしくなって髪を引っ張ってみたり額を軽く叩いたりしていると顔の両脇に腕を押し付けられた。


「ご機嫌を損なってしまいましたね、」
「あんたのせいだ」
「君のせいでしょう」
「分かってるよ・・・ああもう、もう・・・」


ぎゅうっと唇を噛み締めたところで、弁慶が唇を舐めてくる。
いい加減布団もあったまった、冷えた腹の中をどうにかして欲しくて腰を押し付ける。
こんな問答したかったわけじゃない。さっきの続きがしたいだけだ。
別にクソ真面目に答えて欲しいなんて誰も言ってない。
あんなの、閨の中の意味のない睦言だ。
弁慶はそれを分かっているのに、なんだって意地の悪いことばかりするのか分からなくなる。
どうせならそれを突き通してくれれば良いのに、こいつは結局途中でおれを甘やかすのだから。


「君の期待に沿うような事、言ってあげましょうか」


縫いとめていた手が少し這い上がって指の間に指を差し込んでくる。思わずそれを握ると、親指の腹が親指の爪を拭った。
舌が口内に侵入して好きなように歯列をなぞったり舌を絡めて吸い上げる。少し離れそうになるのを嫌がって強請るとより深く息を吸い上げていく。次第に、唾液が飲み込みきれずに口の端を伝い始める。芯に熱が灯ったらしく、段々ぼうっとなっていった。
下腹部に触れた手が勃ち上がった熱を絡めとって零れてくる雫を塗り伸ばす。


「恥ずかしい子ですね、口付けただけなのに」
「あ・・・、」
「さっきも皆の前で触られて、感じていたんでしょう」
「や、・・・っ」
「恥ずかしい事を言われるのが好きなんですよね」
「あっ、・・・んっ」


閨に入った時からまぐわいが始まっていると思っているおれと違って弁慶は愛撫が始まった時かららしくて、さっきまでの調子と全然違う事がおれを戸惑わせる。
耳元で何度も弁慶の言う「恥ずかしい事」を言われて簡単に蕾まで開かされる。押し入ってくる熱を飲み込もうと不規則に浅い呼吸をしながら、内部が開ききっていく感触に恍惚とした。

全部食ってしまうと、おれを労わるように弁慶はゆっくりと動く。
男のはずなのに、こうして丁寧に開かされて喘いでいる自分が、まるでおれが今まで抱いた女と同じような気がして気持ち悪い。
おれは女じゃない。そんなに大切に抱いてくれなくて良い。
あんたがあんまり大事にするとおれは自分を保てなくなる。

見栄を張って苦しいことを胸の中に溜め込んで、時々それにうなされたりする、男って言うどうにも肩の凝る生き物でいられなくなる。


「っ、べんけ・・・、っああ、やだ、やっ・・・───」


甘ったるい声を出すのも、自分じゃない。
こんなの嫌なのに、どうにも、気持ち良くて逆らえない。
弁慶に逆らえないようにこうしてなっていったのかもしれない、などと埒も無いことを片隅で思う。
そうして自分の意思とは無関係に涙や先走りやらをだらだら零しながら、おれは気づいたら吐精していた。

荒い息を整えながら、段々目の前が霞みだす。
だるくて仕様がなくて後始末もなあなあなまま、布団の中でさっき皆といた時のように後ろから抱きしめられる。
弁慶の声を子守唄代わりに聞いて、半分舟を漕ぎ出す。


「───・・・ヒノエ、」
「あー・・・?」
「閨は意味のない事ばかりですから、聞いてくれます?」


頷きながら、どうにも眠い。
こういう時を見計らって、たぶん、それなりにこいつにとって大切なことを言うんだろうなあと、心が溜め息を吐いた。


「絶対、君はどうあっても僕に応えるって信じてるんですよ、」


答えを返そうとして、うとうととしたまま、返せそうも無い。言葉が見当たらないだけかもしれなくて、動かない頭でこれ以上探すのをやめる。
返事の代わりに手を強く握りしめると、弁慶が後ろで少しだけほっとしたように笑う。

それが、可笑しくて、嬉しくて仕様がなかった。

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