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何だ、一体。どういう話だったんだ。
おれはただ目を白黒させる。
「まったく、さっきは泣きそうな顔をしていたくせに、」
ぽかんとしたまま望美のいたところを眺めていると、弁慶がお茶を寄こした。
熱いかと思って受け取ると、しっかりぬるくしてある。おれが猫舌なもんだから、温く作るのがクセになってるんだろうか。
「弁慶、望美、なんだって?」
「うーん・・・、告白、ですかねえ、」
「告白?」
「ええ、」
やっぱり、望美は言ったのだろうか。
心臓がばくばくした。
それを他所に、にこにこ笑いながら弁慶はお茶を啜る。
そろそろ日が落ちてきて、室内が薄く暗い。
弁慶は部屋の電気を点けると、また椅子に戻ってきて、今日の文化祭の怪我人記録なんかを眺めていた。
おれはさっきの出来事が気になって仕方ない。
弁慶は望美と何を話していたんだろう。
「あんた、望美に何かした?」
そう聞きながら、弁慶が望美に何もしていないと言う意識があった。
望美も、弁慶におれが不安に思っていたような事を言ったわけじゃないという確信があった。
だけれどはっきり聞きたい。
「何って、何です?」
「だから、変な事とか」
「何でそうなるんです」
望美は弁慶が好きだし、弁慶はおれが迫ったら何だかんだ頂くような男だったし、それ考えたら不安になるだろ。
そう問うと、弁慶は笑った。
「僕が望美さんを・・・それが心配だったんですか?」
「そうだよ、」
「じゃあ、どうしてここに来るの、止めなかったんです?」
「え、」
「心配なら、止めるでしょう?」
「だから気になって来ただろうが、」
「気になった?」
「あんたが変な事しないかって」
「ふうん、」
弁慶は自分用に熱く入れた緑茶を啜りながら、可笑しくて仕方ないような顔をする。
おれはそれが不愉快で仕方ない。おれだけが何も知らない事をこいつはきっと知っている。
弁慶はことんと飲み干した湯飲みを机に置いて、また口を開く。
「・・・じゃあ、扉の前で立ち往生していた理由は?」
「それは・・・、入り辛いだろ?」
「僕が変な事しても良かったんですか?」
「そうは言ってねえだろ」
「じゃあ、何故?」
「それは・・・、」
「君は部屋に入ってくるなり、僕達を見て安心しましたね。何でですか」
「・・・それ、は、」
弁慶はさらに何で?と問いかける。意地が悪い、と思った。
おれは分かっているけれど、ただ言いたくないんだ。
弁慶は普段こうやって無理に言わせるような事はしないくせに、なんだって今日に限って。
「・・・・分かんない、」
ようやく引き絞るように言ったのはそれだけ。
これで引き下がってくれないかと思うのに弁慶はまだこちらをじいっと見ている。
スカートをぎゅっと握り締める。叱られている気分だった。
おれが何も言わないでいると、弁慶は指を伸ばしてくる。
頬を撫でられただけで背筋がぞくぞくした。
「言い方、変えましょうか」
「あ、ちょ、ちょっと・・・」
弁慶は身を乗り出してシャツの上から胸に触れる。
深く口付けられてそのまま耳まで舌が行く。
ボタンを閉め切れていなかった事を思い出したが、既に遅い。
右手がシャツの中へ、下着の中へ滑り込む。直に触られるには少し早すぎる。
感覚がもう少し過敏になるまで待って欲しかった。
「こういう事、好きですか」
「嫌だったら、・・・しない」
「僕の事は?」
「・・・・好き、」
言った途端背中が熱くなった。息が上がる。
先端を摘まれて背が強張った。
その合間にも、弁慶は何度も何度も口づけてくる。
それが、おれだけに与えられている事実が嬉しい。
(ああ、そうだ・・・)
忘れていた。いや、知っていて知らない振りをしていた。
弁慶は、おれの事を抱いた後から、他の女と付き合ってない。
その前まで、付き合ってる女がいたし、女と遊びに行く事も、頻繁にあったのに。
おれだけ?
おれには、それが不安で仕方ないんだ。
おれだけで良いのかって。
おれの事捨てないのかって。
そんなに自分を魅力的だなんて思えるほど、おれは図太く出来ちゃいない。